レイラの答え
新年一発目に更新しました。
息子に対してレイラが出した答えがわかります
「もうやめなさいイシス…私達負けたのよ
あなたの事が大切とばかりに思っていましたが、それは私の勝手な傲慢だったわ」
「なん…で…あんた…ま…で」
「「「「「…ぇ…ぇ…え!?!?」」」」」
イシスの体が地面にめり込むほどの轟音を立てて地面が凹み轟音に驚いた忍と瑠香がティナ・ニコル・ウルムの体を覆うように地面に伏せさせて攻撃を受けたとばかりに応戦しようとしていたのだ。
だが抵抗するイシスに対して空間が歪むほどの強力な圧力をかけてレイラが動きを封じていたのだ。
「肝っ玉かぁ」
「瑠香、皆まで言うな
俺たち消される」
「うん」
「「「お…重いよ…2人とも」」」
「「あっ…ごめん」」
レイラが指差す先には、地面から抜け出そうともがくイシスがいるが空間が揺れ動くほどの圧力をかけられているのか這い出さずにいる。
5人が立ち上がって訝しげにレイラを見たが、ティナはレイラがかけている魔法を見破っていた。
拘束魔法の一つである過重審判だ。
この魔法は魔法をかけた相手がなんらかの罪を告白し、謝罪しなければ解除されない。
扱えるのは司法局に使える魔法使いかその国の領主ぐらいだ。
「皆さん驚かせてごめんなさい
私が甘いばかりにこの子は…」
「いえ…別に我々はそこまで」
「いいえ良いのです、忍さんでいいかしらね?
元はと言えば私が悪いのですよ
この子は昔体の弱い子でした
ことあるごとに熱が出て、その度に付きっきりになって
それに好奇心旺盛で、怪我も良くしていたのです
そんな我が子が愛おしいと思って私は、全ての怪我や病気から守ろうと魔法を2人の間でかけました」
「それって主従魔法ですか?」
「半分正解で半分間違いですよ
この契約を見破るなんて流石ね、ティナ・ウィナーさん」
「それほどでも〜」
某人気アニメのキャラクターを彷彿とさせる言動に瑠香は一種のなんとも言えない感覚に苛まれ、真顔のような薄らわいを見せる。
あぁん?と言いたげに顎をしゃくれさせるティナを放ってニコルはレイラの話に集中する。
要約すればこうだ。
生まれたばかりのイシスは体が弱く、しょっちゅう熱を出し成長すればするほどに好奇心と共に怪我をする回数も増えていく。
そんな我が子を守ろうとする母性が、主従契約を何も知らないイシスにかけてしまった。
だが主従契約ではなく、本来の体型は守護契約。
その守護契約がいつの間にか、主従契約にすり替わっていたのだと言う。
「最初…俺が、どれだけ怪我してもすぐに傷が消えたんだ
だけどおふくろが傷ついているのをみて気がついたんだよ
俺の代わりに傷を受けていることに」
「それで親心を利用して主従契約とやらにすり替えたと?」
「…」
「どうなんだ?」
「ご…ごめんなさい」
「何が?」
「もう2度と主従契約を使って、親を悲しませたりしません
本当にごめんなさい」
本心かわからないがイシスの項垂れる様子や声色。
本心から謝っているのだとその場にいた誰もが思ったのだ。
さてどうするのかと思ってレイラを見ようとしたが、三姉妹とウルムが固まり闘技場にいるすべての観客が食い入るようにレイラを見ていた。
否、闘技場の天井高く飛び上がるレイラを見ていたのだ。
瑠香に至ってはなぜか、自衛隊における最高位の敬礼である『捧げ銃』の状態でレイラを見上げていた。
「へぇ?
なぁにこれぇ?」
『すべての臣民に言う
我、レイラ・ドラグーンの名の下にイシス・ドラグーンを龍生騎士団の訓練生として入隊させ再度教育を実施
そしてすべての権限を我が夫にして新たなる大公…ワイズ・ドラグーンに権威を全て移譲し、我の政治に関する権力を全て無効とします』
忍は察してしまった。
自分がやってきた言動行動が、もしかしてやってしまったんじゃないかと言うことを。
VIP席にいる小物扱いになりつつあるワイズ・ドラグーンは王ではなかったと言うこと。
そう、闘技場の天井高く飛び上がるレイラこそが龍生府の王であったと言うことを。
『我、大公レイラ・ドラグーンはこれより臣民と共に
いいえ…この国の1人の民にして生きて行きます
元々龍は自由と共に生きるものですから』
「「「「「うえーー!!!!!!」」」」」
ざわつく臣民以上にざわついてしまった5人。
空いた口が塞がらないとはこのことで、そのまま倒れ込むように5人は失神してしまった。
失神したことに気がついたワイズが医療班を呼んで、看護にあたらせレイラやイシスがやっちまったと後悔したのを5人は知らない。
「母さん何やってるの!
みんな失神しちゃったよ、悪い龍王様っていわれるよぉ!」
「あー…っすぅ
何かそう言う情報はありましたっけ?
はい…そう言うことです」
「なんだかざわつくんだけどお母さん」
「「イシスは黙っていなさい」」
「ごめんなさい」
5人が目を覚ましたのは、決闘喜劇が終わって夜になってからだった。
街は明かりが灯ってみな新たなる王の誕生と、レイラの勇退を偲んでいた。
失神した5人の安否を見に、メイドのココは用意されていた客室に足を運んだ。
「皆様、ご機嫌はいかが…ひぇぇ!!」
「「「「「大変申し訳ございませんでしたァァァ!!!」」」」」
精一杯の土下座に恐怖してしまい腰を抜かすココ。
そんなこと意味など蹴散らかすように地面に額をこれでもかと擦り付ける5人。
と言うより、ウルム・ティナ・ニコルは日本が誇る土下座をどうして覚えたのかわからない。
日本人2人が教えたのだろうが、アルメリア人。
ひいては聖龍族の1人であるココが知る由もない。
「ご機嫌は…ヒョォォ!!!?」
なかなかココが帰ってこないことに心配した新たなる王。
ワイズと臣民になったレイラもココに引けを取らない程に腰を抜かし、立てなくなってしまった。
何やってるんだと言いたげなイシスもその場に座り込んでしまいどうしようもなかった。
そう本当に。
レイラの答えは息子の自立を促すために龍生府立の騎士団へと強制入団とすべての権限を放棄し、夫であるワイズにすべての権限を移譲させました。
おそらく臣民に、イシスに対しての甘さを切り捨てさせるため、国政に関与しない事を大公として最後の審判を己に下したのでしょう。
まさか国王クラスだと知らなかった5人組。
卒倒しますわな。
スライディング土下座も完璧ですね
次回も楽しみに




