表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/56

意思ある者は我に続け

瑠香と忍は全くイシスを怖がってないの回です!





「イシスさんに悪いけど…あんたのこと1ミリ怖くもねぇ

あたいが怖いって思ったの…警視庁の白バイの姉御」


「白ばい警官…しかも婦警さんに負けてんのか

あのクソ坊主!」



「「という事で、各個に攻撃わかれます!」」





イシスとレイラの吐く焔と光線は眼下まで迫っていた。

2人のいた場所は真っ赤に地面が照らされるまで燃やし尽くされ、遺体すら残らないのではと観客達は口々に言葉にする。

だがティナ達はなぜだか勝つことを確信した。

数回の攻撃の際にティナが見えていたのは、2人を繋ぐ契約の糸が切れかけている事。

今までのアルメリアの人々が知る戦闘方法とは2人はかけ離れている。




「ねぇニコル、2人の戦闘方法見て思わない?

私達が今まで旅したパーティとは違う事に」


「私たちは魔法は魔法士(マジリスタ)

剣持ちは騎士(ナイト)が、ガードは重騎士(タンク)

詠唱は特化した詠唱士(アリアテスタ)が個別で戦闘する

合体攻撃なんてまずはやらない」


「精霊の俺っちは無論、戦闘なんて全くしない」


「「「でもあの2人は己の体力と持てる火力と武器に、確実な弱点を痛いぐらいに攻める

正攻法なんて通用しない鬼!」」」





 熱線で地面が熱く熱気が全てを包み込んでいく。

そう思っていた時期がありました。

 イシスの吐く炎に途切れ、倒されたと思い慌てて立ち上がった時には、目の前に蒼い光に包まれた蒼い瞳に目の前が眩んで見えた。

 と思った瞬間には腹部に岩のように重く、雷のように鋭い拳が肋骨をへし折らんばかりにめりめりと入り込んでいく。

 イシスのつける甲冑が音を立てて壊れていくのに、レイラは驚き熱光線を止めたが、己の足元に地面が揺らめくほどにどろりと溶けた液体と黒い雷を纏う紺碧の瞳を持つ男がゆらりと立つ。




「い…イシス!

あなた方は何を!?」


「レイラ様、此度の無礼を何卒お許しくださいな

あっしと瑠香はあなたとイシス様の間にかけられた魔法を排除させてもらいやす

これよりいざ尋常に勝負でございやす!」





ニンニンっと忍は忍者ポーズをとったと思った瞬間だった。

黒い雷を纏う忍は消え、レイラの目の前を…鼻筋目掛けて青い雷をなびかせて瑠香が飛び込んでくる。

咄嗟に咆哮を上げるべきかと惑うが、瑠香はぎゅっと抱きつきそのまま動かなくなる。



「あの…瑠香さん?

どうされたのですか?」


「しまった着地地点…間違えた

もう一回やって良い?

お母さん…じゃなかったレイラ様」


「今なんと言いました?」




自分の失言を指摘され、慌てふ溜めく瑠香。

やってしまったと後悔したがもう取り返しのつかないことだと思って正直に話すしか他ないと腹を括る。




「…着地地点間違えた」


「その後です」


「もう一回やって良い?」


「その後…」


「お母さん」


「まぁ…まぁ…あらまぁ!!!

お母さんって素敵な言葉はいつぶりかしら!

貴女は私の娘よ、そうに違いないわ!」





その場の空気がシーンと静まり返ったと思えば、龍の姿は水蒸気が発生し消えたと思えば、聡明な女性が瑠香をぎゅっと抱きしめて何度も背中を撫でる。

抱きしめられて嬉しいのか瑠香もレイラにぎゅっと抱きしめ返す。

そんな姿を見てか、それとも瑠香がレイラに甘えている姿に苛立ちを覚えているイシスだが、次の瞬間には横腹に重たい衝撃を受け5メートルほど吹き飛んだ。

が直ぐに体制を立て直し、腰に下げていた剣を抜き忍を睨みつける。






「がっ…は…ぁ!」


「立て…このクソ坊主

てめぇは母親を使役しただけじゃねぇ

ひ孫娘のことを馬鹿にしやがった

俺がいた軍隊ではなぁ、1に復唱・2に復唱…できなきゃ殴られる

いや、殴るなんてテメェには甘めぇなぁ

…昔見た巡査みてぇな顔に見えてイライラする

切磋琢磨だバカクソ野郎」


「ふざけんなよこの野郎

わが剣にこめられし古の龍の牙よ

我が力に応え、敵を投げ払え!

龍剣牙咆(ドラグニスブイレア)ァァァァァ!!!」





繰り出される斬撃。

燃える炎の一閃。

ほんの少し掠っただけで、傷口からジリジリと燃え出す感覚を覚える。

一回で2方向からの剣筋に、避けていくが壁が迫っていくのを背中で感じていた。

早いだけではなく重たく熱のある攻撃を受ける度に、観客たちが一斉にイシスに歓声を上げる。

勝利への確信とばかりに歓声が上がっていくが、忍は何も感じてなどいない。

恐れていないのだ。




「どうだよ…

お前の傷口、燃えてきていたいだろ?

もう嫌だよなぁ?

降参しろよ!!」



「悪くない動きだな

だがそんな大振りでは俺は殺せんぞ?

タバコに火をつけるくらいには良い火加減だがなぁ」



「えっ?」




イシスは途端に固まってしまった。

忍の首目掛けて突き立てた剣先は空中を神速とばかりに2度突きしていたが、目の前に忍はいない。

代わりに忍は突きの体制で固まるイシスの左肩に背を預けるように持たれて一服を味わう。

ふるふると震えるイシスだが、そんなこともつゆ知らず紫炎を燻らせ目を瞑る。




「すー…ふぅー…ツンとくるめんそーるだっけか?

ない方が俺は好きだな

あれ、どうやって誠は克服したんだ?

今度聞いてみよう…孫息子は仕事してるかな?」






「なんで…避けて…んだよ?」



「お前の剣戟は炎を纏わせてきる

普通の人間なら肉が焼けて、激痛必死だが俺には効かん

何度も喰らって感覚が鈍麻してな

俺の右耳と右頬が抉れてるだろ?

鉄砲の弾が当たってできたんだ

腹にも数発くらって…穴空いたしなぁ

そうだ…」




両肩にタスキ掛けにかけられていた弾倉を地面に落とし、軍指定の降下服なる服を脱ぎ、肌着を抜いでイシスに向き直る。

闘技場内にいた人間は愕然とする。

穴が無理に塞がった腹部の傷に、胸元の刃物で斬られた十字傷、砲弾が体を掠めてできたであろう赤黒く変色した上半身全体に広がる弾痕。

全てを引き受けて尚も生きようとした男だ。



「あっ…あっぅ…あ」



「テメェは兵引き連れて、国を統治するんだろ?

兵隊は生きるか死ぬか…自分の親に嫁と子供に永遠に会えねぇ日がやってくるかもしれねぇんだわ

なのにテメェはなんだ、母親に魔法をかけてスネ齧って…

挙句やられそうになったら庇って…やられたらふざけるなっか?」




怒りが頂点に達したのだろう。

忍は腰に差していた軍刀を鞘から抜き、肩をポンポンと叩いたかと思うと闘技場内を見渡す。

ほとんど全てがイシスに対する暴言の非難。

レイラに対する瑠香への行動。

数え切れないくらいに四方八方から浴びられる観客からの罵声が聞こえていた。

苦笑いを浮かべて、ニコルやティナとウルムを見つけて耳を塞いでとジェスチャーをする。

3人が耳を塞ぎ、闘技場の1番奥の方。

VIP席で心配そうに見つめるワイズに深く礼をしてイシスに向き直る。



「なんだよ…なんなんだよ

ふざけんなよ…ふざけん」





ふざけているのはテメェだ…イシスドラグーン!!



あまりの突然の怒声に全てがシンと静まり返る。

肩で息を切らしジリジリと間合いを詰めて斬り殺しにかかるのではないかと刀をグッと握り込む。



「うちの曾孫娘(るか)はなぁ

1人孤独で空挺レンジャー、しかも女性初のFF隊員なんだよ

親父も兄貴もみんな空挺の血筋…だが親の脛齧り…七光と言ってきた連中を黙らせてここまできた

なんならもうすぐ特戦になるかもだ?

己の意思だけでここまでのし上がってきたんだよ」


「は…はぁ?」


「戦闘なったら真っ先に切り込み隊長しにいく…

怖いはずなのに、どんな時も災害の時も物怖じしねぇ

テメェと違って熱くて固い意志がある

男の俺でも出来ねぇことやってんだ」


「だからなんだよ?」


「意思ある者は我に続け…そんな背中で語れる曾孫娘に鍛えられてこい

クソガキ!」






雷撃演舞…(たつ)斬り!





袈裟斬りで構えられた刀に黒く重い雷が纏われ、瞬間的に殺されると思ったイシスが駆け出していく。

だがその逃げも叶わず、忍の放つ凶刃はイシスの甲冑の全てを破壊し粉々に砕けさせた。

それでも逃げるイシスだが、何かにぶつかり尻餅をつく。

恐る恐る見上げれば、正気のない青い瞳で末睨む瑠香が立っていた。



「ひっ!」





「立てよ…イシス

あんた自分の親をなんだと思ってんの?

そのあめった頭と考え…叩き直してやるよ

今から良しというまで返事は全てレンジャーのみとする

精々…奥歯食いしばれや?」





「なんだ…やめろ…来るなよ!

クソ女がぁ!」


「あ?

聞こえなかったか…返事は全てレンジャーだ」


「れ…レンジャー?」


「声が小せぇ…死にてぇかぁ

腹から声出してみろやぁ!」


「レンジャー!」





忍おじいちゃんブチ切れ案件です。

それもそのはず、忍は長く軍に務め死にゆく友や部下に上司に…ほとんど全てを看取り、最後は戦死してしまい家族には会えずに終わってしまったのです。

煮え斬らない上官に振り回されたこともあって、指揮統率力のないイシスが嫌だったのです。



瑠香も厳しい世界で身を投じるが故に感じることもあり、親の七光りと言われるなように色々とあったみたいです。

尚更見ていて腹が立ったのでしょう。


次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ