決闘喜劇(バトルフロンティア)
イシスの魔法により闘技場へ前進させられたみたいです。
空間が捻じ曲がり、気がつけば地面と激突するのではないかと錯覚する。
見渡せばそこは闘技場のような場所…ようなではなく闘技場そのものだ。
「言ったろ…最後に笑うのは俺だと」
「義烈の本気を見せてやる
舐めてくれるなよ…小僧」
突発的に喧嘩を売られたと察知していた忍に対し、瑠香の頭にあったのは訓練生時代に受けた言葉だけだった。
『いいか!
主傘と副傘が開かなければお前たちはその時点で死は免れない!
今からの訓練は落下傘が開かなかった場合…
それでも尚美しく散っていく為の」
「何を言っている
確かに高度は低いし、頼みの落下傘はない!
だが死ぬなんてことはないんだ
猫又に任せてくれ
いくぞ…雷撃演舞」
「ちょっとまっt」
義烈ァァァァァァァァァ!!!
瑠香は悟った。
この人の本気の特異体質攻撃の威力が強いや激しいだけでは済まされないことを。
瑠香は悟った。
私にもこの血が流れているせいで色々な意味で弊害が起きていたことを。
瑠香は悟ったと言うよりも、もっと他のやり方があったのではないかと。
忍の放つ雷撃演舞・義烈は己の中に蓄電しておいた電気エネルギーを一気に対象に叩き込む文字通りの雷た。
轟音が静まり返り、響いてくる子は二つの羽音。
鳥が奏でるような優しいものではない。
「…ククク!
わざと地面にぶつけてやろうって思ったのに、勢いを殺して着地したのか?
魔法も何も使えないと思ってたんだがなぁ?」
空間が捻じ曲がった先で観客席に飛ばされたティナとニコルは、ただ土煙舞う闘技場を絶望的な表情で見つめることしかできなかった。
人型の男と巨大な龍が鋼鉄をも砕く翼をはためかせて、闘技場の直上で土煙が消え去るのを待っている。
「さて次はどうするつもりだ
2人組さんは…なっなんだぁ!」
イシスの顔を掠めてるように左頬の横を掠めて血風が舞う。
いてぇと顔を拭った瞬間に、今度は巨大な竜の顔を横切るように何かが掠めた。
土煙の向こう側、閉鎖された闘技場の直上で困惑する竜たちが声を上げた途端、ぐらりと体が大きく揺れ動いた。
「敵機は直上だ…落とせ…撃ち落とせぇ!!」
「対空戦闘、ぅてぇぇえ!!」
今まで見たことのない戦闘方法にイシスは戸惑い、逃げ回るように闘技場内を回るも確実に何かは自分たちの羽を狙って打ち続けられていた。
「なんで…なんで武器が使える!?
持ってこさせないように、拘束魔法をかけたあるって言うのになぁ!?
魔法使い…魔法使いが何かやったのか…なぁ!?」
「最終弾、射撃用意…てぇ!!」
「てぇ!」
イシスが見た闘技場の地面には、深緑や黄色に茶色とマダラ模様の自国の防衛用キャノン砲よりも砲身の長い砲がずらりと並んでいた。
砲身はバラバラに並べられていたが、いつでも迎撃できるようにと全て空中を指している。
自分達が狙われていると悟ったのが運の尽きだ。
爆風と共に体が千切れんばかりの破片が体を襲い、上下左右の感覚がなくなっていく。
「手応えありだな…ん?」
「いや…私たちの方が手詰まりになったっしょや」
「あのくそ坊主め
龍に庇ってもらったのか、いけすかねぇなぁ」
龍がイシスを守るように体で多いガードしていた。
ちぃと舌打ちをする忍だが、何か違和感のようなものを感じ右手で口元を覆いながら物思いに老け込む。
イシスを庇った龍自身は爆風の影響で、身体中はボロボロになっている。
むしろボロボロになってしまったのだ。
ボロボロになるのは決しておかしなことではない。
だが程度が酷すぎる。
そんな矛盾する考えが呆然と頭の中を駆け巡っていた。
「ティナから言われた情報と違う
龍の鱗はこの世界で1番硬いと言うミスリル鉱石よりも頑丈だと
だからどんな剣戟も通さなかった
でもあの龍は…ボロボロっしょ?」
「まさか…あの坊主は」
闘技場を観察するティナとニコル。
心配する2人の頭をよしよしと撫でるウルム。
闘技場内で戦闘を繰り広げる2人の日本人を見て、安心していたがティナの顔色が優れないことに気がついた。
「どうしたんだよぉ?
2人なら無事だぞ?」
「もっと…私の魔力を瑠香に渡しておけばよかった
私の魔法…創造魔法なら瑠香達が使う武器を生成できたのに…」
「でも城の中に入る前に魔力を分けてたじゃねぇか
あれじゃ足りねぇってのか?」
「わからない…けどすごく嫌な予感がするの
どうしようニコル、私…怖いよ
ニコル…ねぇ、どうしたのさ?」
ブルブルと震え続けるニコルに、嫌な予感を感じ始めたティナ。
目線の先を追ってティナとウルムは、ニコルの震える正体を探る。
闘技場の真上、瑠香達が倒さなくてはならない相手を見つめて3人は違和感に気がつく。
瑠香や忍も違和感に気がついていたが、正体を探るに必死になっている様子だ。
闘技場内には大勢の観客が、イシス達を応援しようと声を上げていた。
俄然周りには女性客も多く、この国でイシスの影響力が大きとしかウルムは分からなかった。
「ねぇ
私の考えが合ってるか分からないけどわかったかも」
「何がわかったんでぇ、ニコル?
俺っちには観客がすごいことしかわからないぜ?」
「ねぇニコル…あなたが言いたいこと私もわかったかも」
「イシスさんとあの龍の契約って…」
「そうだよ、自分の親にする契約じゃない
龍じゃないよ…あの人は」
レイラ・ドラグーンさん
そしてその2人の結んでいる契約は、契約魔法の中の格下の中の最低の契約と言われる主従契約だよね!
「なんだってんだそれ?
そんな契約、聞いたことねぇぞ!」
「ウルムはわからないと思う
魔法士や詠唱士にとって主従契約は…」
「ニコル…わかんねぇよ
どもってしまうのも、何が嫌なのかも教えてくれよ」
重い口を開きニコルとティナはウルムに主従契約の事を伝えようとする。
なかなかその先が言えずにいるニコルと、言い切れない重りに何度も頭を振るティナ。
煮え切らない何かに嫌なものを感じて、目を細めて苦い表情を浮かべるしかできず、口をすぼませてしまった。
「「主従契約の別名は…奴隷契約だよ」」
「え?」
「この契約を結べば、契約主は受領者の能力をいくらでも使うことができる
強い受領者を配下に置けば、その分の能力が契約主に渡る
でもね…でもね」
「契約主の受けた戦闘中の傷とか全て、受領者が引き受けてしまうのよ」
「ってことはイシスが契約主として、レイラさんは…まずいぞ
2人に伝えねぇと、取り返しのつかねぇ事になる!」
真実を知ってしまった3人は奔走する。
だがその思いが通じることは、この現状ではあり得ないのだ。
観客という声援が3人の声をかき消してしまう。
届かない思いに2人は気がつく術などなかった。
瑠香と忍は大ピンチです!
いきなり魔法で転移されたらだと思えば、いきなり交戦を余儀なくされています。
不本意な決闘ですが、落下していく体を守る術がないと悟った瞬間に雷撃演舞が炸裂しました。
威力は…まぁ闘技場全体が壊れる可能性が大なくらいです。
その上で高射砲を用いて戦闘してますからね
あたおかです
契約を交わしていたみたいですが、最低の契約らしいです
次回もお楽しみに…




