父性
お久しぶりです!
前回は龍生府に到着し、書き込みをして収穫がなく大衆食堂でだべっていたところです。
いきなり不安事項発生です。
「あんたらだな?
というよりか、あんたか
女囲って楽しんでるっていうやつ?」
談笑する5人を嘲笑うかのように大男が立ち上がっていた。
ふと忍が気がついた。
朝から見られているじっとりとした感触の正体に。
こいつらの事かと悟った時には己の中の何かが前に出てきそうになっていたことも。
「見たところ…魔法学生の中の秀才のティナ・ウィナー
それと詠唱士で狼族のニコル・ヴォルフガングか?
へぇあんたも中々にいい女囲ってやがるねぇ」
「何が言いたいんですか?」
絶え間なく現れる忌避感に瑠香は眉を顰め、己の中の怒りに似た何かを押さえつけるのに必死になっていた。
値踏みされていることに気がついてしまったのだ。
2人組の男たちのことを知っているのか、大衆食堂にいたウェイターや客は一斉に目線を合わさぬように知らん顔をし始める。
それをわかっているのだろう。
男たちは何の許可もなくティナな瑠香のいる席に座り肩を組もうとじっと顔を見つめ、ティナと瑠香に挟まれたニコルがブルブルと震え始めた。
「何簡単な話よ旦那
こいつらのうちの1人を俺らにくれよ
まぁこの山向こうにある鉱山に用事があるんだけどよ
男2人だとむさ苦しいんだ
言いたいことわかるよな?」
「何を言っているんですか?
私たちは」
「確か…ザイゼンルカだっけ、あんた?
男っぽい女も悪くないんだよなぁ
3人まとめて俺らにくれてもいいしよ」
堂々と身売りをしますと言いたげな男達にティナが魔法で隠していた杖を取り出そうとしたが、下手にことを荒立てると周りに迷惑がかかると踏んで杖を出せずにいた。
助けを呼びに行こうとしたウルムですら、ウェイター達が店の奥に引っ込んで様子を見ていることに当てにならないと悟ったのだ。
「へへ…で、旦那さんよぉ
俺らにくれても…旦那ぁ?」
「そ…て…ど…すのろ」
「あ?
今なんだって言ったんだよ?
仲良くやろうぜ…ひぃ!」
男の1人が席を立ち肩に手を置いた瞬間だった。
気がついた時には全てが遅かったと後悔したのは。
忍の目に映る光は消え、白目が黒く濁りグレーに近い目の色は一気に濃い青色に変わり忍の足元から、黒い稲妻のようなものが発現していたのだ。
「俺はもう死んだ人間だし、どうなっても構わないがな
ここにいるティナやニコル
瑠香にウルムは、俺にとっては我が子のようなものだ
その可愛い我が子に汚い手をかけてくれるな
その手を退けろ…このうすのろども
いたたたた!?」
この場にいる人間全員が、怒らせてはならない荒ぶる何かに恐怖した瞬間、次に起きたことは荒ぶる存在が泣き顔を見せていた瞬間だった。
瑠香が席を立ち、立ち上がって今にも男達を攻撃しようとしていた忍のズボンの右ポケット辺りを股間を締め付けるように引っ張ったかと思えば、額をビンタしていたのだ。
味方からの攻撃に全員が固まってしまった。
「いやぁすみませんね
日本人は酔っ払うと色んな人格がこんにちはしてしまうんです
まぁ、喧嘩両成敗ということでお引き取り願いませんか?
それと私たちを値踏みしたことに関しては許しませんよ?
司法局の人がもう時期来るので、あとは何が言いたいかわかりますね?」
司法局と聞いて何かを察知した男達は、くそっとだけ残しそそくさと店を出ていく。
追いかけようとする忍に対してやめておけと静止する瑠香。
だが怒りが収まらないのか、忍は殺気を立てて爆発しそうになる。
「忍さん、気持ちはわかるけど抑えて
もうあいつらいなくなったんだよ」
「だけどなぁ!」
「優しいもんね、忍さん
だから私たちの代わりに怒ってくれたんでしょ?
でも私もそうだけど忍さんが本気を出せば人を殺めてしまう
だめだよ、そんなの!
命は大事に…わかるでしょ?」
「ぐぬ…まぁそうだけど」
不意に力が抜けて、忍の体にまとわり付く黒い雷のようなものはプスっと音を立てた消え去った。
やってしまったと後悔する忍の背中をぎゅっと抱きつくかのようにティナとニコルが顔を埋め、ウルムはやれやれと言いたげに忍の頭の上に登る。
「「ありがとう…パパ
私たち怖かった」」
「忍が怒らなかったらあいつら危なかったからよ
ありがとうな」
「俺にはこれくらいしかできないから」
夜が更け、店の明かりが消え5人も自室に戻り就寝する。
また朝がくればもう一度捜索をしようと意気込んで眠り込む。
そう思って部屋に別れる前に、おやすみというのだった。
父性…です。
瑠香達を値踏みしていた下衆な男2人から忍が本気で怒ったのです。
仲間意識というよりも、父親としての何かが忍の中で芽生えていたのです。
なぜここまで怒ったのかは、もう少ししたら語られます。
でずがティナなニコルは怒った姿を見て少し違和感を覚えたはずです。
次回も楽しみに




