龍の生まれた国
龍の生まれた国に到着しました。
龍生府偏スタートです。
龍生府。
古い言い伝えによれば、始祖龍なるラードンによって想像され、そこに人と龍が共生した国。
人々の生活の安寧を守るように龍が国を守り、龍の自由を祈るように人々が空を守ったという。
その子孫たちが脈々とその伝説を後世に伝え、やがて大国になった。
その子孫の龍が、アルメリア皇国の中で聖龍族。
別名ドラグーンを名乗る様になったのだ。
「辺りかしこ、龍に関することが多いね
流石は龍生府」
街の隅々に龍に関する置物が置かれ、崇め奉る地域なのだと瑠香は関心する。
空には翼竜が翼を悠々と広げ、自由に空を舞うのをティナやウルムは目を輝かせて見つめていた。
だが時より風に乗って運ばれる香ばしいお肉の香りにニコルはお腹をぐぅぅと鳴らしていた。
「みんな遠足じゃないんだからね?
お仕事だからね?
何でそんな嫌そうな顔で俺のこと見るのよ」
この旅が始まって最初の頃はビジネスパートナーという位置付けだったはずが、いつのまにか父親的な立場になっていた事に忍は一抹の拭えそうで拭えない不安に駆り立てられていた。
もう父親ですって名乗ろうかとも考えている。
ここにいる4兄弟みたいになっている4人がむすっとした顔で忍を見た瞬間、どうしたものかと頭を掻いてしょっぱい顔をするしかなかった。
「瑠香ねぇ!
あそこいこうよー!」
「ニコル走っちゃダメだよー!」
「俺っちもあそこ行きたい!
ティナも早くいこうぜ〜」
「もうみんな待ってよー」
謎に置いてけぼりをくらい忍はトボトボと歩き始めていた。
大正生まれの忍には、今をときめく我が子たちの放つノリと勢いに気圧されて時代の波に逆らえないのだと知ってしまった。
だがそんな楽しい空間に入り込もうとする輩を察知したのもまた事実だ。
「無粋な連中だな
各なる上は俺の手でバラすか」
夕方を過ぎても街で聞き込みを続け、特に収穫という収穫はなかった。
街のいざこざを助けてもらい、隣の国へと言ったと聞いたがそれ以外の情報は全くと言っていいほどなかった。
時よりこの国の住人から蔑まれているような目で見られているのに気が付いてはいたが、無視して情報を足で稼いでいた。
「うーん何にもわからなかったね」
「そうだね…ニコル、足プルプルしてるけど大丈夫?」
「そういうティナこそプルプルしてるよ?」
「警察というか刑事さんってすごいな…よくこんなことするわ」
「「警察…刑事…何それ?」」
この国には警察機構がない代わりに司法省なるものが存在する。
それが警察と検察を兼ねると出国前に中央府の図書館で事前に勉強していた瑠香。
物珍しい言葉に2人が反応し、軽く司法を持って捜査を行い違反者の逮捕と秩序の維持を行う組織。
刑事はその司法を持って捜査あるいは捜索する人間とだけ伝える。
面白いねという2人だが、忍はまた少ししょっぱい顔をした。
「忍はけいさつが嫌いなの?」
「昔、お世話になったんだよ
殴り合いの喧嘩を警察としたんだ…あれは向こうが悪い」
「千葉⚪︎警とやり合ってて草」
「ちば?
瑠香と忍が住んでるところ?」
「「そうだよ」」
「息ぴったりだな
俺っちも見習わないとな」
残酷なことに街は夕闇に誘われて、行燈がつき始める。
今日はここでやめようかという考えに至り、腹を空かせて当たり障りのない大衆食堂へと5人は足を進める。
大衆食堂とはいっても一回に食堂があり、2階には宿泊施設が併設している。
チェックインもそこそこに、荷物を部屋に置き5人は食堂へと歩みを進める。
「お腹すいたね…」
「ほんとだよー
何食べる?」
「ティナとニコル…足のプルプル酷くない?」
「俺っちが曰く、それは瑠香と忍が悪い」
「それ俺関係あるの?」
などと冗談を言い合う。
5人の会話を聞いていた他の客たちは、繰り広げられる馬鹿話をイヤでも聞こえてきてしまいたまらずふき始めた。
ティナとニコルが休憩中に居眠りをして、にゃぴーと寝息を立てていたこと。
忍がフレーバーティーを飲みすぎて何度も、道すがら茂みで用を足したこと。
誰がやったかわからないすかしっぺの犯人探し。
全てが楽しくて仕方がない。
「あんたらだな?
というよりか、あんたか
女囲って楽しんでるっていうやつ?」
談笑する5人を嘲笑うかのように大男が立ち上がっていた。
ふと忍が気がついた。
朝から見られているじっとりとした感触の正体に。
こいつらの事かと悟った時には己の中の何かが前に出てきそうになっていたことも。
龍の生まれた国。
龍と人が共存する世界です。
そんな場所に到着してはしゃいだ4人組。
監督役の忍ですら元気印4人組には叶わなかったみたいですね。
忍 「保護者募集中です」
忍が感じていた自然の正体が登場しました。
次回もお願いします




