対決?
お久しぶりです
前回までのあらすじ
無事に出国しました。
龍生府まで残り20キロに迫った。
旅に慣れているであろうティナの顔は疲労が溜まり足元がヘロヘロになっている。
健脚自慢を誇っていたニコルも旅に慣れているはずが、絶望して切った顔をしている。
ふわふわと風を掴んで飛んでいたウルムば泣きそうになりながら地面を歩き、漂うのを繰り返す。
「なんでそんなに瑠香はケロッとしてるの?」
「忍も重たい武器を担いでるいるのに元気すぎじゃない?」
「俺っちも今までいろんな旅に出たけど…
2人ともおかしいんだよ!」
「どーぅなってんだよ第一空挺団!」
「それは第一挺進聨隊も変わらないっしょや!」
「「「2人がおかしいんだ!」」」
犯人はこの2人。
常人の域を軽く逸脱した瑠香と、逸脱した上でより化け物に磨きがかかった忍がペースを乱したのだ。
とりあえず休憩を挟むことにした瞬間、瑠香はトイレットペーパー片手に茂みへと身を隠す。
要はおトイレしてるんですよ。
「またトイレ…人間じゃないね」
「もう慣れたよ」
ニコルもティナも最初は、野に放つことを驚いていたがもうそれも感じなくなってしまった。
ウルムは皆にお茶を配る準備を始めてたが、忍もいつの間にか手伝い、瑠香以外でお茶の準備を始める。
と思っていたが4人が気がついた時には、瑠香も手伝いをしているのだ。
「みんなありがとな
じゃあ休憩でもするか」
フレーバーティーをコップに注ぎ、配り始めていた時だ。
瑠香が仕切りにもと来た道の方を睨み据え、銃を手に取り始めたのは。
ニコルが仕切りに耳をパタパタと動かし唸り声を上げ、ティナも警戒するように杖を手に取る。
忍だけは冷静にお茶を飲もうとするが、刀を体に預けるように持ち臨戦体制。
ウルムも鍋に熱々のお湯を張り、戦闘準備は完了している。
「あんたらだな!
魔神様に喧嘩売って、生きていたのは!
しかも魔法使いと獣人に妖精…パーティつくってんの!?
お荷物パーティってか!」
声をする方を見れば如何にも冒険者一行と言える5人組がいた。
啖呵を切ってきたのは冒険者風の男。
盾をつけた坊主頭の騎士もどきは、やれやれと言いたげに首を横に振る。
その後ろに隠れるように、ティナと同じような杖をもつ若い魔法使いと、ニコルのような軽装備の女性2人が嘲笑っていた。
「魔神様も目がないなぁ
こんな寄せ集めに良いことあんの?
だっせぇ!」
「フィル、こんな奴らほっといて先に行こうよ
弱そうな連中
アレンもいいでしょ!!」
「そうそう、私たちは白騎士団に入団するエリートなんだもの!」
「お前たち良さないか」
口々に言い合う姿にティナやニコルは苛立ちを覚えたが、瑠香は一度も動こうとせず傍観を貫き、忍ですらお茶のおかわりをする始末だ。
そんな姿にフィルと呼ばれた男が苛立ち始めた。
「お前ら寄せ集めのくせに何カッコつけてんだよ!
だっせぇ!
そんなに弱いのがバレたくねぇなら対決しようぜ!
どっちが上かわからせてやるよ!」
「上等よ…私たちは負けないわ!
ニコル…いつもの合わせ技で行こう!
瑠香たちもぼーっと」
「その手に隠し持っている短剣をどうするつもり?」
魔法使いや甲冑男は首を傾げてフィルなる男を見返していたが、フィルはブルっと震えて両手を頭の上に掲げ地面に
折りたたみ式のナイフを落とした。
なんでバレたんだと言う顔をしている。
「瑠香、実戦とは言え加減しろ
じゃないと瑠香なら本気で殺しかねんからな
俺はこの甲冑野郎を相手する。
魔法使い2人はティナとニコルに頼んだほうがいい
こいつら全員きな臭せぇ」
その場にいた全員が、瑠香や忍の放つ異様な気配に怖気付く。
これ以上近づけば本気で消されかねないと、皆一様に固まってしまった。
「もう埒が開かないわ!
シャリー行くよ!
大地を燃やす竜の息吹よ…吹き晒せ!
炎龍業炎!!」
「もちろんよ、私に任せてよクララ!
風の女神の加護をこの炎に与えられん!
詠唱術…春節息吹!」
轟々と燃え盛る炎に援護するかのように強い風が一気に吹き抜けた!
その魔法のように大地はやけ熱を帯びた風が皮膚を焼き尽くそうと襲いかかる!
「おっかねぇな
火炎放射器的な感じかな?」
「よそ見すんなよ…このクソアマ!
そんなにあいつらが気になんのかよ!
俺の剣捌き見ていきやがれ!
ラピッドスラッシュ!」
「別に気にはなってないけど」
縦横無尽に剣先が瑠香の目の前を飛び交うが、飄々とかわしフィルの手の届きずらいところで可憐におちょくり始める。
やがてその剣を振るう速度も空振りで終わる。
最後に一矢報いようとしたが気がつけば地面に叩きつけられフィルの手にあったはずの剣は、瑠香の手にあり刃は己の首のギリギリの位置で突き立てられていた。
「身に合わないからこうなるんだよ
忍さんは終わったー?」
「うん、まあまあ強かったよ?
ティナとニコルもいい塩梅じゃない?」
「だと思う」
甲冑野郎ことアレンは降参を宣言するように地面にひれ伏し、手を頭の後ろに組んでガタガタと震えていた。
見れば甲冑を組み合わせる紐がズタズタに切り裂かれ、関節付近からは軽く血が滲んでいた。
おまけに腰から抜いた剣は原型を止める事なく粉々に砕け散っていた。
嘘だ
そうフィルが呟くが、ティナやニコルの方を見て愕然とする。
囂々と燃え盛る炎はティナの頭上で竜のようになりトグロを巻き、ニコルの詠唱で龍は大きく勇ましくなって行く。
勝負アリだ。
「おとといきゃがれ、このすっとこどっとこい
次はないと思え」
忍の静かなる怒声に冒険者たちは我を忘れたかのように悲鳴を上げて一目散に散り散りになる。
アホくさっと言いながら杖を2度ほど地面について、炎を消した。
せっかくの休憩を邪魔されたが5人は仕切り直し、軽く休んだ後、最初の街へと再び歩き始めた。
「龍生府か
そこで見つかるといいんだけどね」
などと言っていたがこの後起きる事に5人は途方に暮れるのだ。
結構な距離を歩いてきました。
40キロの道のりの内、半分を超える距離を早朝から昼までぶっ通しで歩いてヘロヘロになったのですよ。
普通の人は!
そんなの瑠香や忍にとっては屁でもないんです。
私も昔、25キロくらい歩きましたが股関節きしみました。
そんな状態で軽く戦闘してるのですから。
冒険者風の人間の集まりは、軽く人間やめた2人と格上の魔法使いに詠唱士に喧嘩を仕掛けてやられてます。
次回もお願いします




