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ビー玉の中の青空  作者: 風叢 華月
【1章】色のない世界
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白と道程

今回は少し少なめになっています。

「へー、いろんなものがあるんだね。葉っぱとか木の表面とか、モノクロでわかりにくいけど、一つ一つ模様なんかが違ってて面白いよ」

 クロの家を訪れた際に通った場所と、同じところを二人は歩いていた。一度通ったことのある道だったが、前回は解答を考えていたせいで気がつかなかったものが、至る所に散らばっていた。シロの目には、それらすべてが新鮮に映った。

「そうでしょー。いろんな種類があるから、観察してるときなんかは『気づいたら時間が経ってた』なんてことも結構あるよ」

 クロは、自身の経験を顧みると、バツの悪そうな表情を浮かべた。

 しばらくの間、シロは歩きながら辺りをキョロキョロと見まわして、物珍しそうな表情を浮かべていた。そんなシロと、先導するクロの間には、草花の揺れる音や二人の足音が響いていた。

 自然音に包まれる中、シロは「あっ」と大きな声を上げた。突然の音に、クロは肩をピクリと震わせ「どうしたの」と問いかけた。

「ごめん驚かせて。でもちょっとあれ見てよ」

 シロが指さした方向には大きな樹木が鎮座していた。

「あの木がどうしたの?」

「あそこの枝に白いハトがいる」

 改めてシロの指す先を確認すると、そこには純白の翼を広げ、毛づくろいをするハトの姿があった。

「ほんとだ。白いハトなんて初めて見た」

「クロも? 私もあんなハト初めて見たよ。本とか絵とかには白いハトは結構出てくるのに、実際には見たことなかったからここで見られてちょっと感激しちゃった」

 感心したような表情を見せるクロの隣で、シロは興奮して拳を握り、顔を上気させていた。二人はじっとハトを見つめていたが、しばらくすると、ハトは白く輝く翼をはためかせ、灰にまみれた空へと飛び立っていった。

「あ、行っちゃった」

 シロは少し残念そうな声色でつぶやいた。

「まあ鳥だし仕方ないね。さて、私たちもそろそろ行こうか」

 シロは頷きながら、クロの差し出した手を強く握った。

「ここからは昨日とは違う道だよ。さっきよりも少し開けてるから観察できそうなものも少なくなってくると思うよ」

 クロの先導のもと進んでいくと、黒い岩が増え、クロの言うように、観察するものは少なくなっていった。

構わずさらに進むと、潮の匂いが鼻先をくすぐるようになった。

「ねークロ、私たちが向かってるのって海なの?」

 シロの問いに、クロは満面の笑みを浮かべた。

「おっ、正解だよー。今日向かってるのは海だよ。シロはまだこの世界の海は見たことないでしょ?」

 クロの言う通り、シロはまだこの世界の海、まして、自分の涙以外の水を見たことが無かった。

「その顔だとやっぱりまだみたいだね。もうちょっとで見えるはずだよ」

 クロはシロの手を強く握ると、潮風の吹く方向へ駆け出した。

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