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ビー玉の中の青空  作者: 風叢 華月
【1章】色のない世界
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夜闇を照らすもの

 あれから数時間。二人はベッドに腰を掛け、この世界についての様々な会話をしていた。

 裏手に生えている木の種類や、生息する動物、景色など様々な話を聞くたびに、シロはころころと表情を変えた。そんなシロに釣られて、クロも笑みを浮かべていた。

 楽しい時間というのはやはり早く過ぎてしまうものである。

 気がついたころには、辺りは黒みがかった灰に包まれていた。

「ちょっとおしゃべりに集中しすぎちゃったな。そろそろ明かりをつけなくちゃ」

 クロは、ランタンの近くに置かれた机に近づくと、そこに置かれた小さな箱を手に取った。

「なに? それ?」

「これはただのマッチだよ。……ほら!」

 クロは、中から一本棒切れを取り出すと、小箱の側面に擦り付けた。すると灰だった周囲は白く照らされた。

「火が付いたでしょ。でもこの箱だとなんだかわかりにくいよね」

 クロは苦笑しながら、黒と灰の二色だけに染められたマッチ箱をシロに手渡した。

「ちょっと待ってねー。……はい、これで良し」

 クロは開いた片手で器用にランタンを操作し、できた隙間からマッチでそっと火をつけた。ランタンに火が灯ると一部屋が白く塗り返された。

「ありがとう。でもちょっとだけ不思議な感じがする」

 シロの囁きにクロが興味深そうな顔を浮かべる。

「別に大したことじゃないんだけど、この世界に来る前は火をつけると周りが黄色っぽいような、赤っぽいような色になるのが当たり前だった。でもこの火は周囲を白くしているのが不思議だなって思ったの」

 シロの言葉にクロは辺りを見回した。

「確かに漫画で火を囲んでいるシーンみたいね。今まで考えたこともなかったわ」

 クロは口元に手を遣り、フッと微笑んだ。


「さてと、火さえついてしまえばこの部屋は安全だからね。見てみなよ」

 クロは窓の外へと指先を向けた。シロは窓辺へ近づき、外をへと目を向けた。

「……どうなってるの? なにも見えない。視界の全部が黒くて何もわかんない」

 シロは驚いたような、困惑したような表情を浮かべた。

「いった通りホントに真っ黒になったでしょ。星一つ無いし、月もない。それに、この夜闇には恐ろしい生き物まで潜んでるんだから一人で出歩くのは本当に控えてね」

 シロは、この光景を実際に目にしたことで、クロとの『約束』の重要性をありありと感じた。

「それじゃあ、そろそろ寝ようか。早速明日、シロに見せたいものがあるからね。早起きしなきゃ」

「わかった。明日は楽しみにしてるね」

 シロは明日に備え、就寝しようとした。しかし、そこで動きを止め、キョロキョロと辺りを見回した。

「どうしたの?」

 クロの質問に、シロは眉をハの字にした。

「私どこで寝たら良い?」

 「……考えてなかった。まあでも、シロはお客さんなんだからベッド使いなよ。私はそこの椅子で寝るから」

 クロは机の近くに置かれた椅子を指さした。

「え? いや申し訳ないよ。それなら、私が椅子で寝るよ」

「大丈夫だよ。私、椅子に座ったまま寝落ちしてることも多いし」

 シロが机に目を向けると、そこには何やら読みかけらしき本が置かれていた。

 しばらくの間、お互いに遠慮し合って進展のない話し合いを続けていた。

「ならこうしよう。一緒にベッドで寝よう。このベッドそれなりに大きいから多分二人でも大丈夫なはず」

 クロはシロの前に仁王立ちし、ビシッと指さした。

「でも」

「でもじゃありません。家主権限で決定です」

 クロの顔には『これ以上話すことは無い』と言わんばかりの決意が宿っていた。

「決まったら早く寝ちゃおう。おりゃ」

 クロはそういうが否や、シロに抱き着きベッドに引き込んだ。突然押し倒されたシロは「わっ」と声を上げながら倒れこんだ。二人の身体はフカフカとしたベッドに軽く弾んだ。

「このお布団あったかいね。それにとっても柔らかい」

「えっへん。これは自慢のベッドなんだよね」

 クロの表情は『自慢』の文字を体現したかのようだった。

「それじゃあ寝よう。おやすみ」

「おやすみなさい」

 柔らかいベッドに包まれると、かなりの距離を歩いた疲れが出たのか、あっという間に眠りの奥深くに落ちて行った。

今更ですが、ここまで読んでいただきありがとうございます。

ここまでは書き貯めていたのですが、ここからはまだ描けていません。

そのため、構想が浮かばず期間が少し空いてしまう可能性がございます。

できるだけ早く投稿していこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

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