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ビー玉の中の青空  作者: 風叢 華月
【1章】色のない世界
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二人の行く道

 二人の歩みに合わせ、灰に侵された草花がその柔肌をそっと撫でた。

「ねえ、どこに向かっているの?」

 シロは自分の手を引き、迷いなく進んでいくクロに問いかけた。

「んー。ヒミツかなー」

 クロはシロの顔を見るとニヤリと悪戯っぽく笑った。

「クロのいじわる。教えてよ」

 シロは頬を少し膨らませて抗議の視線を送った。

「そんなに睨まないでよー。でもそうだな、そんなに知りたいなら当ててみなよ」

 クロは少し考えこむ様子を見せたが、すぐに元のような悪戯っぽい表情を浮かべ、シロに問題を出した。

「え⁉ どうだろ?」

 クロから突然問題を出されたシロは驚いた顔をした後、難しい顔をして考え込んだ。

「わからないよ」

 しばらく考えこんでいたが、シロは首を振ってギブアップの意を示した。

「それは残念だね。でももうすぐ着くよー。答えはすぐそこだよ」

 クロはちっとも残念そうな顔をせず、小さな口元を悪戯っぽくニヤッとゆがませた。

 しばらく進むと、墨で描かれたような黒い森の足元に、灰にまみれた小屋が建っていた。

「ほら。あれよ。あの小屋が私たちの目的地よ」

 クロは人差し指をすっと伸ばし、シロに向かって笑いかけた。そのまま、クロはシロの腕をグッと引き、小屋に向かって駆け出した。


「……この小屋は何なの?」

 小屋の中を見回し、シロはクロに問いかけた。

「ここは私の家よ」

 クロはシロに向かって胸を張った。クロのワンピースが、自慢げな表情を浮かべるクロに呼応して、ひらひらと揺れた。

「へぇ……。クロってこんなところに住んでるんだ」

 シロは壁に掛けられたランタンに近づいた。ランタンに触れると、ひんやりとした金属の冷たさが、シロの指から温度を奪った。

「この辺りは夜になると真っ暗になるからね。明かりが確保できるものがないと何も見えないよ」

 クロはシロの肩に両手をかけて話しかけた。

「そんなに暗くなるの?」

 シロの問いかけに、クロはゆっくりと、深くうなずいた。

「一寸先は闇なんて言葉があるけど、ここでは文字通り目の前は黒よ。明かりもなしにこの世界の夜を明かすのはとても危険なの」

 クロはシロに向けて真剣な表情を浮かべた。

「だから夜は絶対にここから出ちゃだめよ。外に出るとしても必ず私と一緒に行動するのよ。約束して」

 シロはクロの真っすぐなまなざしと張りつめた雰囲気にあてられ、思わず頷いた。

「ありがとう。約束だからね」

 クロはそう言うとその顔に柔らかな笑みを浮かべた。重かった空気は和らぎ、シロはいつの間にか詰まっていた息をフッと吐きだした。

「……クロってあんな顔もするんだね」

 シロの言葉にクロは目を丸くした。

「……そんなに変な顔してた?」

 クロは眉を傾け、シロの表情を窺うように恐る恐るシロに問いかけた。

「いや、変じゃなかったよ。すごく真剣な顔をしてて少し驚いただけ」

 シロは右手を口元に運び、苦笑を浮かべた。

「そっか。驚かせちゃってごめんね」

 クロはシロと同じような苦笑とともに、申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「いやいや。私のことを心配してくれたんでしょ?ありがとう」

 出会って間もない自分の事を気に掛けてくれるクロに、心が暖かくなるのを感じた。


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