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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
第四章 〜《神代革命》〜
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第79話 【神未満ノ存在】

 2033年2月16日深夜。

 火災報知器の警報音が鳴り響く...。

 まだ、煙は下まで到達していない。

 そんな学校の廊下を、僕...常立一重と彼...宇摩阿比留は走り抜ける。

 その時、僕のすぐ後ろの天井が崩落する。

 僕はすぐにそちらを振り返り、


 「富地...⁉︎乃々華...⁉︎」


 と言いながら駆け寄ろうとする。

 しかし、阿比留はそれを止めて、


 「一重‼︎今、俺たちが助けに行って犠牲になったら、元も子もない!とりあえず、外に出て助けを呼ぼう。」


 と言う。

 僕は仕方なく、彼の言う通りに行動する。

 当時小学1年生だった僕は、そうすることしかできなかった...。

 校舎を出て後ろを見るとそこには、大きな火の塊があった。


 「あぁっ...2人が......」


 「まだ中に子供が2人いる‼︎助けてくれ‼︎」


 僕らは近くにいた消防士に、そう必死に伝える。

 消防士たちはそれを聞き、すぐに動き出してくれた......でも、火を完全に消して2人を救出できたのはそれから8時間後のことだった...。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2033年2月27日。

 僕は、阿比留に公園に呼び出される。

 僕が公園に到着するや否や、彼は言った...


 「今回起こった本当のことは、2人だけの秘密にしよう」


 ...と。

 僕はまた、それに賛成してしまう。

 結局、当時の僕には大人のような判断力はなかったのだ...。

 僕はただ、流されるままに物事を眺めていた...。

 そういえば......あの時の...秘密を作った時の阿比留って、どんな顔してたっけ...?

 思い出せない......というより、思い出したくないのかもしれない...。

 きっと、記憶から消したがっている......あの校舎での出来事も、公園での会話も、阿比留の存在も...



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2042年6月10日22:26。

 僕は、アイツの存在を忘れたかった...。


 「阿......比留...。」


 僕は掠れた声でそう言う。


 「なんだ、一重?声が出てないぞ......回復してやろう.........回復(リカバリー)。」


 アイツはそう偉そうに言いながら僕の身体を回復させる。

 すると、アイツの後ろに立っている統徒が、


 「おい、阿比留......どういうつもりだ?」


 と呆れ気味に質問する。

 するとアイツは、


 「俺と一重の邪魔はするな......始めにそう言ったはずだ...。」


 と間を空けずに言い返す。


 「...わかった。では、君の思う存分に戦うがいい...」


 「「何⁉︎」」


 統徒が仕方なく阿比留の行動を許すと、モノ(mono)(di)が反応する。

 僕とアイツが戦うことは、向こうにとっては想定外だったのか...?

 そもそも、僕とアイツが対面すること自体が...。


 「ただし、常立一重を殺さないこと...。まだ、彼には話したいことがあるからね...。」


 「へぇ...じゃあ、瀕死程度で済ませてやるよ.........さあ、行くぜ‼︎」


 次の瞬間、アイツの身につけている白いローブが大きく広がり、針のように変形してこちらに飛んでくる。

 これは──


 「フリゾン⁉︎」


 僕は迫ってくる白い針を避けようとする...が、間に合わない‼︎

 なら......虚実融合(バーチャル)で一旦虚界(きょかい)に避難だ!

 僕は足元にゲートを作り、落ちるように虚界に入る。

 そして、またすぐに実界(じっかい)の...阿比留の背後へ行く。

 すぐ戻った理由は、アイツにこの魔術を悟られないようにするためだ。

 アイツに虚面世界(きょめんせかい)について知られて、入って来られたら勝ち目はなくなる。

 虚界と実界の行き来の時間をなるべく短縮することで、あたかも僕が瞬間移動したかのように見せる。

 これで背後は取れた‼︎

 次は...


 「オレのターン‼︎」


 僕はあえて大きな声で、そう叫ぶ。

 すると当然、アイツはこちらに意識を向ける。

 僕は左手ではフリゾンソードを握り、右手は高く掲げる。

 フリゾンソードがアイツの首に当たる直前に、僕は右手の指を鳴らす。

 だが、首を切られそうなアイツにその音は聞こえない...。

 アイツは、自身の白い剣で僕のフリゾンソードを防ごうとしている。

 だが、その背後に迫るのは...フリゾン(だま)だ。

 横浜駅での香角先生との戦闘......そこで用いたものを全体的により強化したものを今回は完全な不意打ち状態でアイツの背後に撃ち込む‼︎

 ...が次の瞬間、アイツの背後に白く厚い壁が現れて全てのフリゾン弾が防がれてしまう...。

 僕は動揺する...が、


 「何だ⁉︎」


 アイツは...阿比留は僕よりも動揺し、意識を僕から壁の方に移す...。

 来た‼︎

 ()るなら今しかない‼︎

 僕はアイツの首に触れそうになっていた、フリゾンソードを一度離して、両手で持ち直す。

 そして体を全体的に後ろに引き、奴の心臓目掛けて...


 「突く!!!!」


 その時、僕の目の前に数え切れないほどの白い針が出てくる...。

 これは...あの壁から生まれたものか...?

 いや...それよりも......


 「クソッ...避けられない......‼︎」


 僕は全力で体を逸らすが、避けられなさそうだ...。

 ここは、被弾覚悟で行くしか...。

 プシャッ...と音がして、視界の半分以上が赤く染まる。

 僕はすぐに自分の身体を触るが、傷は特にない...。

 ということは、この赤は...阿比留の血だ。

 僕の目の前には、両腕を肩から切断された阿比留がいた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2042年6月10日22:32。


 「やっぱり、阿比留は常立一重のことになるといつもこうだ...。」


 統徒は、阿比留の背後で右手を伸ばしながらそう呟く。

 両腕を切断された阿比留は、その場で倒れ込み、意識を失っている。

 そんな阿比留を統徒は横に蹴り飛ばし、


 「じゃあ、続きをしようか常立一重...いや、クニノトコタチ......。」


 と言う。

 僕は足の力が抜け、その場でしゃがみ込んでしまう...。

 このままでは...殺される‼︎


 「待て‼︎その前に......最後に、質問をしてもいいか?」


 「......質問は、なんだい?」


 「なんで...僕の神術が、アイツに...阿比留に通用しなかった?」


 「...?...逆に、なんで通用すると思ったんだ...?」


 「...??......だ...だって、神術は......神以下の存在を殺せる術なんだろう...?」


 僕がそう言うと、統徒は顎に手を当てながら、「ほう...」と呟く。


 「なるほど...ちなみに君、それをどこで知った?」


 「どこでって...例の赤い装束の...クニノトコタチからだ......。」


 「へえ...不思議なこともあるもんだ。結論から言うと、神術は()()()()()()()()()()()()()()()術だ。彼は...阿比留は別天津神の宇摩志阿斯訶備比古遅(ウマシアシカビヒコヂ)(のかみ)の力を有しているため、君の神術が通用しなかったわけだ。」


 「...つまり、クニノトコタチが嘘をついた......ということか?」


 「それは私にも分からない...。ただ単に、認識を誤っていた...という可能性もあるからな...。」


 「そうか...」


 「でも、驚いたよ......君の成長速度には...。まさか、たったの1ヶ月で神術を会得して、僕の手下を殺してしまうなんて...。」


 「...デカのことか?」


 「ああ、そうだ。あれは私の中ではお気に入りだった...。それに、ノナまで...。」


 「寂しいのか?」


 「いいや、別に。まだ私の優秀な手下はたくさんいる。それに、まだ魔物もいる...。」


 「...お前の言う、その手下ってのは......いったい何人いるんだ?」


 「約10人...だね。皆、魔力暴走によって、限界を超えた力を持っている...。」


 魔力暴走......その言葉が奴の口から出てきて、僕は沖縄で出会った魔人のことを思い出す。

 思い返せば、あそこに魔人がいなかったら今の状況はもっとマシだったのかもしれない...。


 「一応聞いておくが、沖縄にいた魔人......あれも、お前のか?」


 「ああ...あの魔人は、私が魔力暴走を起こさせたんだ。」


 「...魔力暴走を起こさせた?魔力暴走は、故意に起こさせられるものなのか...?」


 「できるさ...。でも、あの魔人は失敗作だ。あれは、私の手下の魔力暴走を確実なものにするための実験体みたいなものだ。」


 奴はそう言い終えると、何か名案を思いついたように笑みを浮かべる。


 「そうだな...常立一重。冥土への土産として君に、見せてあげよう......()()の作り方を...。」


 「...何?」


 「私が、どのようにして10人の手下の魔力暴走を起こしたのか...」


 奴はそう言うと、右手を高く掲げる。

 すると、奴の右手の上に魔力の塊が現れる。

 だが......この魔力、何かがおかしい...。

 この魔力、まるで......暴れているようだ。


 「気づいたか...常立一重‼︎この魔力の美しさ...そして、醜さに‼︎」


 奴は僕の不思議そうな顔を見て、そう言う。

 魔力の性能と見た目の相違...。

 そういう意味で、あの魔力は美しく、それと同時に醜い...。


 「さあ、常立一重‼︎君に見せてあげよう......魔力暴走の起こし方を‼︎」


 そう言うと奴は、右手で自身の右の胸を殴る。

 すると、統徒に操られている豊野の身体から夥しい量の魔力が放たれ、また豊野の体に戻る。

 僕は、見逃さなかった。

 奴の......いや、豊野の流した涙を...。

 迷いはしなかった。

 僕は(ふところ)に隠しておいた試験管を取り出し、中身のゼリー状の魔力を一気に飲み込む。


 「豊野に...」


 僕は立ち上がる。


 「二千花に......」


 奴を...統徒を睨み、フリゾンソードを作る。


 「手を.........」


 姿勢を低くし、意識する。

 奴を...殺す。

 そして...


 「だすなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


 僕は自身の背後に、無限に等しい数の黒魔球(シュバルツ)を作り出し、奴に向けて一斉に放つ。

 それと同時に、フリゾンソードを持った僕自身も、奴に向かって突進する。

 測れないほど短い時間の後、僕は統徒の目前に到達する...。

 僕のフリゾンソードと黒魔球はもう、奴の体に触れそうだ......。

 そして、それらが触れた瞬間、僕の意識は飛ぶ...。

 いや、意識が飛んだのかは正確にはわからない...。

 実際、僕の感覚ではあの瞬間から今に至るまでの時間はなかった。

 (ゼロ)......そう、無だった。

 僕は今、さっきまでと同じようにその場で座り込んでいる。

 奴との距離も、建物の状態も、元に戻っている...。

 ただ一つ、戻っていないのは......懐にあった試験管だ。

 僕は、完全に反撃のチャンスを失った。

 今の僕にはもう、何もできない...。


 「さて...そろそろお別れだ。」


 「...」


 僕は黙り込む。

 体全体の感覚がなくなってゆく...。

 奴は...統徒は、僕を見下ろしながら両手を前に出す。

 そして、唱えるように何かを口に出し始める。


 「この時...この瞬間を持って、我々の目的は達せられる‼︎常立一重の殺害......それによって、再び始まる...神代(かみよ)の時代‼︎これは...名付けるならそう!」


 そして、奴は辺りに響く声で叫ぶ...


 「神代革命(かみよかくめい)!!!!!!!!!!」


 ...と。

 奴は続ける。


 「そして、この革命より神々は真の意味で再び()まれる‼︎よって、現西暦(セイレキ)2042年を再誕神暦(サイタンシンレキ)0001年とする!!!!!」


 奴はまるで、世界中の全ての存在に声を聞かせるように話す。

 次の瞬間、僕の身体が浮き上がる。

 僕はすぐに周囲を見る...と、僕の四肢は鎖のようなものに繋がれていた...。

 僕はもう、動けない。

 ...動こうとも思わない。

 これは.........さだめ。


 「さようなら、常立一重。楽しかったよ...君のいた世界も......。」


 奴はそう言い、続けて


 「(ウィンド)━╋━(→エクステンド)


 と唱える。

 僕の全てが、()くなる。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 再誕神暦0001年6月10日22:48。

 常立一重は死んだ。



 ――――――――――



 再誕神暦0001年6月11日6:09。


 「クソッ...こうなると分かっていたら、最初からこうしていたのに......。」


 俺...伊岐七斗は横浜中華街跡地の中を走りながら、そう吐き捨てるように言う。

 伊美七津木は念の為、例の城に残しておいた。

 彼女には、俺が3時間以内に帰還しなかったら来い...と伝えている。


 「これは.........なん...だ?」


 俺は現地...善隣門に着き、思わずそう呟く。

 そこには、5人の人間の死体があった。

 死体の奴らは皆、服を着ておらず、ハエがたかっている...。

 そして、周囲には漆黒の水たまり...。

 ここで一体、何があったのか...。

 俺は周囲を見回し、見つける。

 壁に刻まれた文字を...。


 「常立一重は死んだ......だと?」


 俺は、何も考えられなくなる...。

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