第78話 【万滅斬】
2042年6月10日19:48。
目の前にいる女性。
白い装束を見に纏い、顔は「参」と書かれた布で隠されている...。
僕...河谷灯也と先輩2人は、それを見てすぐに攻撃の行動へと移る。
僕はフリゾンソードを、2人は魔法陣を、それぞれ準備。
そして、相手が動き出す前に...とどめを刺しにいく‼︎
「先輩‼︎疾風を‼︎」
「「了解!」」
僕は先輩たちに指示を出し、目の前の女に向かって走る。
半分くらいまで走ると、背後から風の気配を感じる。
僕はそれと同時に自身の背後で疾風を発動する。
魔法陣による強力な魔術......それに、風属性に特化した僕の風属性魔術を合わせることで生まれる加速......
「W疾風!!!」
僕と女の距離が一気に短くなる。
今にも、僕のフリゾンソードが彼女に触れそうだ...。
しかし突然、彼女は消える。
そして、どこからともなく声が聞こえてくる。
女性の声だ...。
「そういう、普通に囚われない戦い方......私は好きよ...。//人王-Toya//さん...。」
「何⁉︎」
次の瞬間、僕の背後に巨大なブロックが現れる。
これは...空中に浮いていた...。
あのブロックもあの女の魔術によるものだったのか...?
そんなことを考えていると、巨大なブロックは僕の方へゆっくりと傾いていく。
マズイ...潰される...‼︎
僕は何も考えずに、フリゾンソードをフリゾンスピアに変形させる。
そして、ある風属性魔術と共にブロックを突く!
「乱気流槍‼︎」
僕が感覚で放った突き攻撃は見事、ブロックの破壊に成功した。
僕が落ち着いてため息をつくと、背後からナイフを持つ手が伸びて僕の首に回される...。
いつの間に...⁉︎
この女...まさに神出鬼没だ...。
「「灯也‼︎」」
「やっぱり私、あなたの戦い方が好きだわ...。あなた......どこでそんな戦い方を知ったの?もしかして...//廃神-Hitoe//から?」
間違いない......こいつは、僕と廃神様のゲーム内での姿を知っている...。
こいつは...ただ者じゃない‼︎
「そう易々と...」
「...?」
「そう、易々と...廃神様の名を出すなあああぁぁぁぁぁ‼︎」
その時、僕は彼女を風属性魔術によって操る。
命令は...「気絶しろ」...だ。
しかし、彼女は気絶するどころか、ふらつきもしない...。
「そんなあなたにも...可愛いところがあるのね...。でも少し、お仕置きが必要のようね...。」
彼女はそう、余裕そうに言いながらナイフを持っていない方の手を高く掲げる。
「私の名前はdi......神産巣日神よ。使用魔術は、空間を司る魔術...空操。また、どこかで会えたら...本気でやり合いましょ♪...じゃあ......さようなら」
彼女はそこまで言うと、掲げた方の手の指をならす。
それと同時に、僕らはある方向に向かって高速移動し始める。
そして数秒後、僕らは何かに衝突する。
――――――――――
2042年6月10日19:48。
背後からの衝突音...。
僕はすぐに後ろを振り向き、驚愕する。
「嘘だろ......みんな...」
そこには、あらゆる部位から出血し、白目を剥いた5人の人間の身体があった...。
宇地原先輩...須田先輩...香角先生...活田先生......そして、灯也だ...。
僕はすぐに5人に近づいてしゃがみ、蘇生を試みる......が、
「なんだ...これは......。なんだよこれは...‼︎なんで蘇生できないんだよ‼︎」
蘇生ができない...。
蘇生の魔術を使おうとしても、体の中でつっかえる感じがして、止まってしまう...。
「クソッ‼︎...蘇生‼︎ 蘇生... 蘇生... 蘇生... 蘇生‼︎なんでできないんだよ‼︎」
その時、後ろの方で何かが着地する音が聞こえる...。
僕は後ろを振り向き、2人をその目に捉える...。
統徒の両隣...そこにいる2人の存在を...。
どちらも白い装束を身に纏い、片方は「弐」と書かれた布で、もう片方は「参」と書かれた布で、それぞれ顔を覆い隠している...。
服装だけ見れば、あの赤い装束の男...クニノトコタチとほぼ同じだ...。
...ただ、雰囲気がまるで違う...。
2人からは、布越しでもわかる、僕を見下すような視線を感じる...。
まるで、獲物を眺める狼のような目...。
僕に負けるという可能性はその思考に含まれていないようだ...。
僕が2人を睨んでいると、「弐」の方が喋り出す。
「私は、高御産巣日神のモノだ。」
「タカミムスビ...お前も神なのか?」
「ああ、そうだ。...でも神世七代の君とは違い、僕は別天津神だ。」
「そして、私も同じく別天津神。神産巣日神のジ...よ。」
今度は「参」の方がそう言う。
声から考えると、「弐」の方は男、「参」の方は女だな...。
モノとジ......ということは、デカやオクタの仲間か...。
でも、目の前の2人から感じる強さは、今まで戦ってきた奴らとは比べ物にならないほどに......。
「さて、あと1人足りていないが......まあ、問題ない。始めよう、常立一重...。さあ、神術を使うのだ‼︎」
「...」
僕は深く、考え込む...。
神術を使う......しかないのか...?
正直、これがよい選択とは思えない...。
神術は、神以下の存在を殺せる術......これが本当なら、神であるモノとジを殺すことができるだろう。
それはいい......ただ、問題は統徒だ。
奴が、神以下の存在だという確証は得られていない...。
...ってか、神以下じゃないって...神を超越した存在......?本当にそんな存在があるのか...?
まあ、そんなのどうだっていい......いつでも、最悪の可能性を考えておかなければならないのだ...。
僕はゆっくりと立ち上がり、統徒を睨む。
僕のフリゾンローブが風になびく...。
「統徒...お前にひとつ、聞きたいことがある。」
「なんだい?...常立一重。」
「沖縄での白い光の柱......あれはお前がやったものか...?」
僕は奴を睨み続けながら、そう強く問う。
そして、奴は答える。
「まあ、そんなところかな...。あれは、私がやったものだ......。できれば、あれで君を仕留められたら良かったんだけどね...。」
「そうか............では、」
「...?」
「これでお前に対して神術を使う十分な理由が生まれたな...。町の民に...そして、我が仲間に危害を加えた罪...。その重さを、その身に、深く刻み込め!」
ここで必ず奴を...統徒を、殺す。
そうしなければ、あの東京の町が...仲間が...そしてなにより、豊野が......。
だから、ここで、僕の神術の最大を.........
「見せてやる!!!!!!!」
僕はそう強く叫ぶと、大量の魔力を何の手も加えずに、放出する。
すると、横浜中華街跡地を包み込んでいた結界が破裂する...。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2042年6月10日22:24。
結界が破裂する...。
つまり...ここからは虚実融合も、蘇生も、使える...ということだ。
僕が放出した魔力は結界を破壊すると、さらに広範囲に広がっていった...。
「これが、クニノトコタチの神術......。生身の人間が扱って良いようなものでは到底...」
「ええ...。もはやこれは、魔術の一歩先を行くもの...。魔力を持つ人間から見ても、これはチートレベルの術よ...。」
僕の魔力を見て、モノとジはそれぞれそう呟く。
「使えるものは有効に使わせてもらおう...。」
僕はそう言いながら、虚実融合で虚面世界...略して虚界から、ある一本の剣を引き出す。
僕の大切な友人が、僕のために作ってくれた、最高の魔道具...。
今こそ、これを使う時だ。
名付けるなら...
「疎魔の術剣‼︎」
僕は疎魔の術剣を右手に構えながら、左手ではフリゾンソードを作って握る。
疎魔の術剣とフリゾンソードによる二刀流......それこそが僕の考えた、神術の最大。
僕は、右手に持つ疎魔の術剣を真上に向かって投げる。
それと同時に、自身の身体を周囲の魔力に溶け込ませる...。
僕は魔力に...魔力は僕に...成る。
奴らから見れば、僕が消えたように見えるだろう...。
次の瞬間、僕はさっき投げた疎魔の術剣の到達地点のすぐそばに現れる。
僕は魔力化によって、一切動くことなく、そこまで移動した。
僕は上に上がってきた疎魔の術剣を右手で持つ。
左手のフリゾンソードを...右手の疎魔の術剣を...それぞれ、しっかりと握り直す。
そして両手を高く掲げて、フリゾンボディスーツの質量操作を解き、重力に身を任せる。
双つの剣によって繰り出される術、これこそが...
『神術:万滅双斬』
僕はそう叫びながら、統徒の...豊野の身体の首をめがけて両手に持つ剣を振り下ろす。
...だが、その時響いたのは、剣が骨を巻き込んで肉を引き裂く音ではなく、高い金属音だった...。
僕の目の前には、「肆」と書かれた白い仮面・真っ白なローブ・白い剣を装備した少年がいた。
少年は、僕の神術を片手で握った一本の白い剣で防ぐ。
そして、片手の力だけで僕を弾き飛ばす。
「何──ッ⁉︎」
僕は、後ろの建物に凄まじい勢いで衝突する。
壁に少しだけめり込んだ僕はすぐに壁から離れて、地面に向けて落下する。
信じられなかった...。
最強だと...負けることなどないと...そう思っていた神術が簡単に防がれてしまった......ということが信じられなかった...。
誰かが近づいてくる足音がする...。
あの白いローブの少年か...?
僕は両手にだけ回復魔術を使用し、手の力だけでなんとか、うつ伏せになった身体を持ち上げる。
白いローブの少年は僕の目の前にたどり着くと、僕を見下ろしながら喋る...
「久しぶりだな......一重。」
...と。
僕はその声に聞き覚えがあった...。
隠す気のないだるさを含み、何に対しても価値を見出していないようなその声に...。
少年が、仮面をはずす......すると、彼の顔が露わになる。
「宇摩......阿比留‼︎アンタ...‼︎」
「やあ、久しぶりだね...常立一重。あの病院以来...かな?」
僕はアイツの顔を睨む。
でも、今はそうすることしかできない...。
――――――――――
2042年6月10日22:24。
「...⁉︎あれは...。」
東京の城の中にいる俺...伊岐七斗がそう呟いた瞬間、部屋の中に何者かの魔力が流れ込んでくる。
僕はすぐに、その何者かの居場所を魔力を辿ることで特定しようとする...が、
「これは...なんだ?本当にこれは...魔力なのか??」
そのとてつもなく膨大な量の魔力に思考が停止する。
これは...もしかして、常立一重の神術か?
だとするとマズイな...。
この魔力は軽く、関東全域に広がっているだろう...。
そんな量の魔力をフルで使用する神術...。
「一体、どんなものなんだ...。」
そう心の中で興味を持ちつつも、その場にいなくて良かったと安心もしていた...。
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