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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
第四章 〜《神代革命》〜
78/82

第77話 【神術ノ真価】

 2042年6月10日19:48。


 「お前は誰だ」


 僕は、目の前にいる豊野二千花の姿形をした()()に向けてそう問う。

 その()()は不敵な笑みを浮かべると、語りだす...。


 「なるほど...困ったな......。私には名乗る名がないんだが.........まあ、いいや。では、私のことは統徒(トウト)...って呼んでくれ...。統一の(トウ)に、徒歩の()ね...。」


 「身体を乗っ取っていることは隠さないんだな。」


 「だって、君はもうすでに気づいているだろう?デカ(deca)の時だって、そうだったし...。」


 「...何⁉︎」


 なぜ奴が...統徒がデカの名を...⁉︎

 いや、それより...奴は僕とデカのやりとりを見ていたのか...?

 もしかして、奴が...


 「お前が、そのデカの言っていた()()()()ってやつなのか...?」


 「おお、早いね...。まあ、そうなんだけどね......。話には順序ってものがあるから、そのことは後で...。」


 「何...?」


 「3冊の書物は見つかったかい?少年...常立一重。」


 「それは...⁉︎あのメールの...⁉︎」


 僕はあの日...豊野の家に泊まった3月11日を思い出す...。

 僕は豊野の家であるメールを読んだ。

 内容は、『廃神』になるために3冊の書物を探せ...というものだった。

 結局、僕はこの3ヶ月の間、その内容に従わなかった。

 でもその頃から僕は、この世界の廃神になることを第一の目標として行動してきた。

 渋谷に行ったのも、魔力武闘会を開催したのも、沖縄へ調査に向かったのも、全ては廃神になるためのもの...。

 そんな、今の僕を形作ったと言っても過言ではないメール...。

 あのメールは奴が...


 「どうやら、あのメールに書いた私の指示には従ってくれなかったらしいけど......まあ、それも想定内。」


 「ところで、お前は3冊の書物の在処(ありか)を知っているのか...?」


 「知っている......と言うより、その3冊の書物は私が作ったものだからね...。元は存在しなかったものだったんだよ。」


 「それじゃあお前は、偽物の書物を餌にして僕を捕えようとしたのか?」


 「御名答‼︎...本当は、今より早い段階で君を捕まえられていたはずだったんだけど...君が指示に従わなかったり、他から邪魔が入っちゃったおかげで少し手こずった...。」


 「もう、勝った気分か?少し、早いと思うぞ。」


 「そう言われても...実際、勝っているからなぁ...。」


 「なぜ、そう言い切れる?」


 「()()...か。クク......ククククク...」


 「何を笑っているんだ?」


 「いいや...少し、思い出し笑いを...」


 奴はそこまで言うと、また静かに笑いだす。

 そして、笑いが収まると...


 「じゃあ、ちょうどいい。齢解(レイカイ)の歴史...『天皇』。その真相を、君に教えよう。」


 と奴が言う。


 「齢解の歴史⁉︎」


 「その様子だと、『天皇』については、既にご存じのようだね...。」


 僕は、豊野のイジメを解決した後に重流さんから聞いた内容を思い出す...。

 皇居襲撃と天皇殺害......その事件に...僕のまだ知らない真実が...⁉︎

 僕がそんなことを考えていると、奴は静かに語る。


 「2025年6月...当時、皇居襲撃と天皇殺害を主導した者......それが、私だ。」


 「何ッ⁉︎」


 「ついでに言うと、実際に皇居へ侵入したのは私の手下のうちのたった3人だ。それでも、警備は3人に勝てなかった...。なぜだと思う?」


 奴はいきなり、質問を投げかけてくる。

 きっと、あの頃の...重流さんに話を聞いた頃の僕だったら答えられなかっただろう...。

 そんなもの、存在しないと思い込んでいたからだ。

 でも、今は違う。

 今は...僕も、()()を持っている。


 「魔力......か。」


 「その通りだ。侵入した3人はいずれも、魔力による戦闘を行っていた。何もない空間から何かを生み出し、それを攻撃にも回復にも応用できる技術は、当時の日本には存在しなかった...。無論、今も魔術なしでそのような技術を実現をするのは極めて難しい。」


 「魔術...いや、魔力がこの世界に与えたものは今となってはもう、人々の当たり前となっている...。」


 「魔力とは儚いものさ...。初めは誰もが魅力的に感じるもの......でも、時が過ぎれば皆がそれを道具として扱い始める...。」


 「...結局、お前は何が言いたかったんだ?」


 「魔力は儚く...人は醜い。...それだけだ。」


 「何だと...?」


 「...私はね、人間が嫌いなのだよ...。」


 次の瞬間、僕の左腕が消し飛ぶ。

 これは......奴の攻撃か⁉︎

 僕はそれを理解するや否や、右手を奴に向けながら左腕の回復を一瞬で行う。

 そして、右手から火の球を撃つ。

 攻撃されてからここまで、約2秒...。


 「...でも、君は違う。常立一重......そう、常立一重‼︎」


 片手で僕の攻撃を防いだ奴は、いきなり僕の名前を連呼しだす...。

 なんだこいつ......なんでこいつは僕の名前を...?


 「常立(トコダチ)一重(ヒトエ)......。君の名が、常立一重であること......それは、とてつもなく大きな意味を持つ...。」


 「大きな...意味...?」


 「そうだ......今こそ話そう‼︎君の真実を!」


 「僕の......真実...」


 僕は奴の言葉を繰り返す。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2042年6月10日19:48。


 「君は、日本神話を知っているかい?」


 「日本神話......って、アマテラス...とか、スサノオ...とかのやつか?」


 「そうだ......でも、今から私が語るのはその二柱(ふたはしら)の活躍する少し前の神の話......別天津神(ことあまつかみ)神世七代(かみのよななよ)についてだ。」


 「別天津神...神世七代...」


 初めて聞くその2つの単語に、なぜか僕は強く興味を惹かれる...。

 そして、奴は続けて語り出す...。


 「別天津神...それは五柱から成る最初の神々だ。ただ、その神々は全員、身を隠した...とされている。そして、その次に現れたのが神世七代...七組十二柱から成る神々だ。そして、その神世七代のうちの一代目の神の名は...」


 奴は無駄に間をあけてから、その名を言う。


 「国之常立神(クニノトコタチのかみ)...だ。」


 「常立(トコタチ)......」


 「気づいたか...常立一重。そう、君は特別なんだ。君は神に選ばれ、その名を与えられた。」


 「選ばれたって......何に...?」


 僕は混乱しながら、奴にそう問う。

 今はただ、そうすることしかできないのだ...。

 でも、そんな僕にも容赦なく奴は真実を押し付ける...。


 「君は、クニノトコタチの身体・力・魂を受け継ぐ人間として選ばれたんだ。」


 「そんな......じゃあ、僕の中に...神が...?」


 「そうさ......実際、君は何度か見てきただろう?赤い装束を見に(まと)った者を、夢の中で...。」


 「──あっ...ぁぁ......」


 その時、僕は思い出してしまう...。

 何度か夢の中で出会った、その者を...。

 豊野との鍛錬中に気絶した時...そして、魔力武闘会の少し前...。

 僕は2度も、クニノトコタチに会っていた...。

 あいつは......僕に助言を与えてくれたあれは、神だったのだ。

 だから初めて会った時、言葉では表せないような強さを感じたのか...。

 僕の中で全てがつながってしまう...。


 「常立一重君......。私はね、この時をずっと待っていた...。君が...真に完成する時を‼︎神をも殺す『神術(カミワザ)』...それは力の源を知覚した時、初めて真価を発揮するもの...‼︎」


 奴がそう言った時、僕の脳内にある言葉が再生される...。


 〜「少年...常立一重よ......神術を.........万滅斬(バンメツザン)を使うんだ...」〜


 あいつの...クニノトコタチの声だ...。

 その言葉は何度も僕の脳内で繰り返し再生される...。

 それに重ねて、奴の...統徒の


 「さあ!...常立一重、今こそ神術を使うのだ‼︎真に完成した君の神術を...私に‼︎」


 という声が耳に入る。

 どうする...?

 もう、今の僕はまともな判断ができない......そう、自分でも分かる。


 「僕は......我は──ッ‼︎」


 その時、すぐ後ろから何かが衝突する音が響く。

 僕はすぐに後ろを見て、驚愕する。



 ――――――――――



 2042年6月10日19:48。


 「我が名は...モノ(mono)別天津神(ことあまつかみ)がひとつ、高御産巣日神(タカミムスビのかみ)だ。」


 「コトアマツカミ...?タカミムス...なんとか......?」


 時を止められた僕...香角刻四は目の前の白い装束の男を睨みながら、そう呟く。

 奴の顔は「弐」と書かれた布で隠されている。

 こいつはモノ(mono)と名乗った......ということは、常立や豊野たちが戦ってきたデカ(deca)とかノナ(nona)とかオクタ(octa)とかの仲間か...?

 だが、常立たちから聞いていた情報とはまるで違う...。

 こいつは......今までの奴らとは違う‼︎

 見た目も...威圧感も...そして、内に秘めている力も...。

 僕は隣で同じく時を止められている女性...活田佳奈四をちらと見る。

 彼女も、モノを見つめている...。

 この時を止める術は攻略できないのか...?

 僕がそんなことを考えていると、モノが再び語り出す。


 「その魔力...なるほど。一部、彼のものが混じっているようだ...。」


 「彼」...って、常立のことか⁉︎

 確かに魔力武闘会の後、僕らは彼の魔力を少しだけもらった。

 そのおかげで僕らは今、フリゾンでの戦闘を行えている。

 こいつは...この短時間でそこまで僕らを分析したのか......⁉︎


 「モノ...と言ったか...。お前、目的は何なんだ?」


 「目的......か。...私はあのお方より命を受けて、貴様らの足止めに来た。...ただ、案外すんなり行けてしまったな...。」


 「...ずいぶんと......」


 「...?」


 「オレらも...ずいぶんと......舐められたものだなぁ‼︎今だ!...佳奈四‼︎」


 僕が彼女にそう呼びかけると、彼女は


 「了解‼︎はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 と叫ぶ。

 するとモノの周囲に突然、無数のナイフが出現する...。

 そのナイフは現れた瞬間、モノに向かって加速する。

 そして、モノの身体に深々と刺さってゆく...。


 「見つけた...‼︎この時を止める魔術の攻略法...‼︎」


 この時を止める術は僕らの魔力の流れまでは止められない...。

 佳奈四はそれに気づいた瞬間からずっと、攻撃の準備をしていた。

 そして、それに気づいた僕は会話で時間稼ぎ...。


 「なるほど...双神術(フタガミワザ)の意思共有による連携...か。確かに、舐めるような相手ではなかったな...。すまない...。」


 奴は無数のナイフに刺されながら、そう詫びる。

 こいつ......まだこんな余裕があるのか...⁉︎

 それに、時を止める術はまだ発動したまま...。


 「...だから、遊びはここまでだ。」


 そう言いながら奴は...モノは右手を前に出し、


 「時を(つかさど)る魔術...時操(クロノス)。それは過去・現在・未来だけでなく、空想の時点の再現も行うことができる優れもの...」


 指を鳴らす。


 「「────ッ!?」」


 その瞬間、僕らの体はある方向に向けて急加速する...。

 速すぎて、どの方向に飛んでいるかすらわからない...。

 そう思った次の瞬間、僕らは何かに衝突する...。

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