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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
第四章 〜《神代革命》〜
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第75話 【常立ト豊野(肆)】

 2038年9月1日。

 学校から帰宅した僕は、すぐに例のゲームを起動し、裏部屋へと向かう...。


 「Kaito、怒ってるだろうな...。」


 僕はそう呟きながら裏部屋に侵入する。

 するとそこには、もうすでにKaitoがいた。

 彼は僕のことを見るや否や、


 「遅い‼︎メール送ってから1時間も経ってるぞ...。」


 と言う。

 まあ、そりゃそうだ...。

 1時間も待たされてキレないやつなんていない。


 「ごめん...。少し、リアルの方が忙しくて...。」


 僕は素直に謝る。

 さすがに1時間は待たせ過ぎだったな...。


 「...なら、仕方ないな...。今日はメールに書いた通り、裏ダンジョンについての話だ。」


 「まだ、探し始めてから2日だろ?早すぎないか...?」


 「この裏部屋を探すのと同じ要領でやるだけで良かったからな...。正直、もっと早く終わらせられたと思う...。」


 Kaitoはそう言って、謙遜する。

 本当に...こいつは何者なんだか......。

 声だけ聞くと、僕より年下な感じがするけど...。

 いやいや、流石に小学生ではないだろ...。

 声だけで判断するのは難しいな...。

 とは言っても、彼に実年齢を聞くのもなんだか恥ずかしい...。


 「どうしたんだ...Hitoe。話進めるぞ。」


 「あっ、ごめん。それで、裏ダンジョンについてわかったことはあるか?」


 「裏ダンジョンの、場所...階数...あとは、敵の種類とかかな...。」


 「階数もわかったのか⁉︎」


 「ああ。裏ダンジョンの階数は99だ。」


 「キュウジュウキュウ⁉︎」


 僕は思わず裏声でそう叫んでしまう。


 「と言っても、所々に何もない階層もある。一応まだ、開発段階だからな...。」


 「ああ、そうか......。」


 「だが、油断は禁物...。敵の中にストーリーラスボスと同じ行動をするやつがあった。」


 「そいつは裏ダンジョンのラスボスではないのか?」


 「その通り......裏ダンジョンのラスボスは全く新しいものだ。唯一わかったのは、体力が922(922京)3372(3372兆)0368(368億)5477(5477万)5807(5807)だということだ。」


 「......ha?」


 「2の63乗から1引いた値だな。いわゆるカンストってやつだ。」


 「いやいや、僕の知ってるカンストは9がたくさん並んでるやつなんですけど...。」


 「ゲームは基本、2進数で動いている。だから、9がたくさん並んでるような値はカンストとして扱われない。」


 「ニシンスウ...?まあ、いいや。んで...なんだっけ、その......カンストの...」


 「922(922京)3372(3372兆)0368(368億)5477(5477万)5807(5807)だ。」


 「ああ、それ......。なんで言えるんだよ......ってか、922京⁉︎なんだよそのアホみたいな数字は‼︎」


 「アホみたい...というか、アホなんだがな...。普通にゲームをプレイしていて出会えるような数字じゃないから...。きっと、まだ動作確認などを行っている段階だろう...。」


 「そんな段階で戦っていいのかよ...。」


 「大丈夫だ、問題ない!」


 「問題しかねえよ‼︎」


 「実際、今の君ならどんな敵でも勝てるだろう?」


 「そういうことじゃなくて...」


 僕が心配しているのは、これが見つかって垢BANされるんじゃないかってことだ。

 まあ、そんなこと言うなら最初からやるなって話になるわけだが...。


 「ああ、もういいや。行ってやるよ、その裏ダンジョンに‼︎」


 「...わかった。実行は2038年9月4日の正午だ。目標は、裏ダンジョンの攻略による五種の越格『廃神』の獲得......これでいいな?」


 「ああ、もちろんだ。」


 「それでは実行日当日の11時にはこの裏部屋に来ること。」


 「了解‼︎」


 「それじゃ、今日はここで...。」


 Kaitoはそう言うと、静かに裏部屋を出ていく。

 明々後日(しあさって)......ついに、僕は.........‼︎



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2038年9月4日10:50。

 ゲーム機とテレビをつなぐコードを、専用ゴーグルに挿し替える。

 そして、ゲーム機を起動してゴーグルを装着。

 コントローラーを手にして、ゲームの世界へと潜り込んでゆく...。

 今日は本気(ガチ)モードだ。


 「ふぅ.........行こう。」


 ゲームに入った僕は、すぐに裏部屋へと向かう。

 裏部屋に入ると、もうすでにKaitoがいた。

 彼はその場でただ、突っ立っている...。

 リアルの方で何か準備をしているのだろうか...。

 今回の裏ダンジョン攻略には、彼の技術が不可欠だ。

 彼がいなければ僕は、裏ダンジョンにたどり着けない...。

 それ以前に、彼がいなければ裏ダンジョンの存在にすら気づけなかった...。


 「本当に...頭が上がらないな......。」


 僕がそう呟いた時、Kaitoが動き出す。

 彼はこちらを見ると、


 「おお、Hitoe。今日は珍しく遅刻しなかったんだな...。」


 「悪かったなぁ......遅刻が多くて.........」


 「それに今日はゴーグルか......本気(ガチ)なんだな。...まあ、時間まで少しゆっくりしていてくれ。僕は少し、リアルの方で準備をしてくる。」


 「わかった...。」


 僕はそう言いながら、一度ゴーグルを外して、リアルの世界で体を休めることにした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2038年9月4日11:50。


 「今回、僕はこのゲームから抜ける。そのかわり、僕はリアルの世界から君の補助を行う。...とは言っても、君の体力とか攻撃力とかいうステータスを変えられるわけではない。できて、敵の動きを数秒だけ止めるくらいだろう。」


 「...」


 「Hitoe、大丈夫か?」


 「えっ...あ、ああ。少し、ぼーっとしてた...。」


 「そうか...。Hitoe、一つ言っておくが君がこの裏ダンジョン攻略で失敗することなんて()()()()ぞ。」


 「そんなこと、自分でもわかってるさ...。でも、なぜだか不安が残り続けるんだ...。」


 僕は自分の実力には自信がある。

 実際、今までのダンジョン攻略でミスったのは最初の数回程度だ。

 にも関わらず、僕は今、恐怖している。

 僕が裏ダンジョン攻略に失敗するという()()()()未来に...。


 「...まあ、君はそれくらいがちょうどいいのかもな...。」


 Kaitoは突然、そんなことを言い出す。


 「どういうことだ?」


 「僕は正直、君が今回のダンジョン攻略も、いつも通りにやると思ってた...。だから、心配だったんだ...君が気を抜くことがね...。」


 「そ、そうか...。」


 「でも、今の君は違う。裏ダンジョンに本気でビビってる...。Hitoe、君は今、本気で攻略しようとしているんだよ。もちろん今までが手抜きだったっていうわけじゃない。でも、君はこのゲームで初めて、ビビるほど本気(ガチ)になったんだ。」


 彼はそう、熱く語る...。

 僕は今、ただビビってるんじゃない...。

 僕は今、ビビるほど本気(ガチ)になったんだ...!

 僕に残り続けていた不安が、別の何かに変わってゆくのを感じる...。

 自然と、笑みがこぼれる...。

 このリアルでの笑みは、ゲーム内には映らない...でも、きっと彼には...Kaitoには見えているはずだ...。


 「不安は...なくなったか?...//戦王-Hitoe//。」


 「ああ、助かった。...//策士-Kaito//。」


 「ではこれより、裏ダンジョンの攻略を開始する‼︎」


 彼はそう言うと共にゲームから抜ける...。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 2038年9月4日正午。

 僕は裏ダンジョンの存在する空間に飛ばされる。

 そこは、どこもかしこも真っ白の世界...。

 僕はダンジョンの入り口を見つめる...。

 ダンジョンの中は真っ暗だ。

 まるで、外の世界と(つい)をなすように...。

 その時、ゴーグルのスピーカーから


 『Hitoe、着いたか?』


 と言うKaitoの声が聞こえてくる。


 「ああ、無事着いたぞ。」


 『じゃあ、ダンジョン内に侵入してくれ。そこから僕は君の視点を見て指示を出す。』


 「りょーかい!」


 今回、彼は僕の視点を見ながら指示を出していく...。

 理由は、今回のダンジョンに盲目エリアがあることだ。

 通常のダンジョンで盲目時に戦う敵は、巨体で動きが鈍く、特殊な音を発する。

 だから、普通は盲目でやられることはない。

 でも、今回の裏ダンジョンでは盲目エリアにそんな甘い敵は現れない。

 そこで僕らは、盲目のかかった僕の視点をリアルのKaitoに送り、それを彼が分析して指示を出す......という作戦をとることにした。


 「さて...行くぞ‼︎」


 僕はそう言いながら、ダンジョンへと侵入していく...。

 ダンジョン内は外に比べると暗い......。

 だが、見えないほどではないのでここはKaitoに頼らないことにする。

 僕は地下深くへと伸びる階段をゆっくりと下りて行く...。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 第1階層。

 階段を下りきると、目の前に数体の小型魔物がいた。


 「なるほど...はじめは雑魚からか......。珍しい。」


 僕はそう呟きながら魔物たちに近づいていく。

 このゲームのダンジョンは基本、ダンジョン内で魔物の強さが一定だ。

 全てのダンジョンを攻略してきた僕でも、単一のダンジョン内で魔物の強さが変わった所は見たことがない。

 これは、珍しい......なんてレベルじゃないな...。

 僕が魔物たちに近づくと、魔物たちはすぐに死んでしまう。

 これは、僕の身につけている装備の効果。

 周囲にいる自身のレベルの5分の1以下のレベルの敵を即死させる......っていう効果だ。

 僕の今のレベルが356だから...71レベルの敵までは瞬殺だな......。

 今の奴らのレベルが10だったから......当分は大丈夫か。

 僕はそんなことを考えながら次の階層への階段を下りて行く......。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 第25階層。

 僕はまた、そこにいる魔物に近づき、瞬殺する。


 「なあ、Kaito。」


 『どうした、Hitoe。』


 「今の所、全ての階層に魔物がいるんだが......これ、99階層全部にいるんじゃないだろうな?」


 『それはもちろん。ここまでは、事前に調査した通りだ。ちょうどここから、魔物の出現頻度が下がるから安心しろ。』


 「本当か?...まあ、信じるよ。」


 『ああ、あと......次の階層から魔物のレベルが71を超える。』


 「えっ...そうなの⁉︎...もうそんなに高いレベルに......。やっぱりこのダンジョンは特殊だな...。」


 『だから、油断はするなよ...。』


 「ああ、任せろ!」


 そう言い僕はまた、次の階層へと下りて行く...。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 第34階層。


 「...?これは...⁉︎」


 『盲目エリアだな...。Hitoe、ここからは僕の指示だけに従え。』


 「言われなくてもわかってるよ!」


 『一応、今回の敵の情報を伝えておくと......心眼龍(しんがんりゅう)...胴体についた第3の()が弱点の敵だ。』


 「なるほど...あいつか...。なら、少しは倒しやすい...のか?」


 僕は過去に戦ったことを思い出しながらそう呟く。

 この魔物は弱点である第3の眼が大きくて狙いやすい。

 ただ、その弱点を出すためには他の2つの眼を弓矢で短時間で両方、射抜く必要がある...。


 『Hitoe...。君は、時止(ときと)めの魔石(ませき)...もってないんだっけ...?』


 「ああ、そうだ。」


 Kaitoが、通話越しでもわかるくらい大きなため息をつく。

 時止めの魔石...それは、使用した者の周囲にある、あらゆる物体の時を止める......というアイテムだ。

 大抵のプレイヤーは非常用に2,3個持っていると聞くが、僕はそんなもの持っていない。

 僕の所持アイテムは他の物でいっぱいだからだ。

 だったら、今までどうやって心眼龍(しんがんりゅう)と戦っていたのか...それは.........


 『分射(ぶんしゃ)...か。一気に、面倒くさくなったな。』


 Kaitoがそう言う。

 分射...それは、弓に付けることのできる効果の一つで、矢を一度放つと2つに分かれて飛んでいくものだ。

 僕は今まで、これで心眼龍との戦闘をこなしてきたのだ!


 「それでKaito、僕はどうすればいい?」


 『仕方ないから、弓で狙おう...。Hitoe、とりあえず弓を引き絞ってくれ。』


 「了解。」


 僕はそう言いながら、弓を引き絞る操作をする。

 すると、ゴーグルのスピーカーからギギギ...と弓を引く音が聞こえてくる...。


 『オーケー...。次は、照準を動かす。僕の言う向きに少しずつ視点を動かしてくれ。』


 「わかった。」


 『今、敵は君の真正面にいる...だから、左右に動かす必要はない。まずは...上に少し動かしてくれ。』


 「...こうか?」


 『少し行き過ぎたな...。もう少しだけ下げられないか......そう、そこ!!』


 僕は彼のその声と同時に、視点を操作するスティックから手を離す。


 「...これで、いいのか?」


 『ああ、そう......いや、待て‼︎Hitoe、弓に速射を付けているか?』


 「速射?...まあ、付けてるよ。武器効果はほとんど全て付けてるからな...。」


 『バカ‼︎それをもっと早く言え‼︎もし、()ってたらもっと面倒くさいことになってたぞ‼︎』


 「おお...悪かった...。」


 僕はKaitoが珍しく怒鳴るのを聞いて、素直に謝る。

 速射か...そういえば、そんな要素もあったな......。

 速射...これも、弓に付けることのできる効果の一つで、放った矢が一定の速度で真っ直ぐ......つまり、等速直線運動をするものだ。

 確かに、これを伝え忘れていた僕はかなりのバカかもしれない...。


 『だったら、もう少し下にずらしてくれ。』


 「これでどうだ?」


 『よし!完璧だ‼︎それじゃあ、次は...僕が射てと言ったら矢を放ち、すぐに正面に向かって走れ。そして...』


 「そこからダッシュ斬りで第3の眼を潰す...だろ?」


 『ああ、そうだ。じゃあ、行けるか?』


 「いつでもいいぜ!!」


 『では.........射て!!!!』


 僕はその合図と同時に、矢を放つ。

 そしてすぐに、走る動作へと切り替え、龍の息が聞こえるまで近づいたタイミングで...


 「斬る──ッ‼︎」


 その時、リアルの僕が持つコントローラーが震える。

 感触がある、ということは......


 「勝てる‼︎」


 僕はそう叫びながら、ある特殊な操作を行う...。

 このゲームにおける必殺技...それは僕の場合、文字通りの必殺技だ...。


 「喰らえ...我が.........漆那(セツナ)!!!!!!!」


 刹那、第34階層内の空気が大きく音を出しながら流れて行く...。

 ()れた...かな?


 「よし!それでKaito、次はどうすればいい?」


 『廃神になるプレイヤーによる必殺技の一つ、漆那(セツナ)...。一つのモーションで七つの切り口を......これこそ越格に...』


 「Ka・i・to‼︎大丈夫か?」


 『ああ、すまない...。つい、興奮してしまって...。じ...じゃあ、そのまま真っ直ぐ進んでくれ。』


 全く、彼は......。

 僕の技に見惚れてくれるのは嬉しいけど、こういう時はしっかりしてほしいな...。

 ......まあ、嬉しいけどね?

 僕は内心、照れながら移動スティックを前に倒す。

もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎

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