第71話 【敵襲】
2042年6月10日19:48。
「いなく...なった...⁉︎」
僕...香角刻四とその隣の女性...活田佳奈四は突然の出来事に困惑する。
常立一重が消えた...。
どのように...?
覚えていない...というより、思い出せない。
確かに、彼が消える瞬間はこの目で捉えたはずだ。
でも、思い出そうとするとその部分だけにモヤがかかる。
彼がいきなり倒れそうになり、膝に手を置いて休憩して......だめだ。
やっぱり思い出せない...。
「活田さん...どうする?」
「どうするもこうするもないでしょう。彼を探しに行きますよ。」
「どこに...?」
「わからない...でも、たぶんこの結界内にはいるはずです。」
彼女は自信なさそうに言う。
でも、確かにせっかく閉じ込めた彼を結界外に出すのはおかしいな...。
術者の目的が僕たちだったら、話は別だが...。
「まあ、いいか。行こう...常立一重を探しに!」
「ええ、そうね。」
「とりあえず......どこ行こうか...。」
「まずは、善隣門に向かいましょう。あそこは確か、五つの道が交わるところだったはずです。それに...」
彼女は高く伸びている白い光の柱を見る。
そういえば、これが当初の目的だったな...。
「おそらく、白い光の柱も...そこに。」
「りょーかい!じゃあ、案内は任せるぞ。敵襲の警戒は僕に任せてくれ。」
こうして僕らは、白い光の柱の根元であろう善隣門へ向かうこととなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2042年6月10日19:48。
「なあ...」
「何?」
「活田さんってさ...なんでそんなにここに詳しいんだ?」
僕らは善隣門に向けて歩きながら会話を始める。
「小1になる直前に、家族で一緒に来たことがあるのよ。その時、興味を持って色々調べたの...。」
「小1の直前...ってことは、2025年...か。」
「そう、2025年よ...。」
僕らは黙り込んでしまう...。
2025年...僕らはその頃、まだ小1だったからあんまり記憶にはないが...大変だったことだけは覚えている。
そして、大人になってそのことの真の大変さを知った...。
2025年6月2日...その日起こったのは.........
「──⁉︎」
「あれは──ッ⁉︎」
僕らはただ、前方を見つめる...。
前方の赤い光の柱を...。
僕らは迷わず、走り出す。
すると、空中に浮いていた無数のブロックが僕らの前に降りてくる。
ブロックは僕らと同じ速度で前方へ進む。
「なんだ、こいつら......っうおぁ⁉︎」
するといきなり、僕の前を進んでいたいくつかのブロックがその場で止まる。
僕はそれをなんとか跳んで避ける。
危ない...フリゾンボディスーツがなければ衝突していた...。
「チッ...ゲームかよ...。」
僕は前方で進んでいるブロックを睨み、走りながら舌打ちをする。
こうやって前方からの弾幕を避けるゲーム...中学の頃よくやったな...。
そんなことを考えていると、僕らのかなり前の方で次々とブロックが停止する。
そして、今度はブロックがこちらに向かって動いてくる。
「来るぞ‼︎」
僕らはフリゾンボディスーツの質量操作を利用して次々と迫ってくるブロックを避ける。
そして、ある程度ブロックを避けると、前方でバラバラに動いていたブロックが一つにまとまって、壁となる。
僕は佳奈四と目を合わせる。
考えることは同じ...だな。
「佳奈四...いくぞ‼︎タイミングはお前に任せる‼︎」
僕らはそれぞれハンマーを創り、そしてそれを壁に向かって同時に振る。
「「はあああああぁぁぁぁ──‼︎」」
ブロックでできた壁はハンマーに触れ、砕ける。
次の瞬間、僕らの体が動かなくなる。
それも、ただ動かなくなっただけじゃない。
まるで、僕らの時間が止まったかのように、僕らは不安定な姿勢で停止する。
僕は、少し遅れて目の前の存在に気づく。
白い装束を身に纏い、「弐」と書かれた布で顔を覆い隠している存在...。
こいつが術者か...。
時を止める魔術...正直、勝てるビジョンが見えない...。
「お前は誰だ...?」
僕は問う。
どうやら、体は動かせなくても声を出すことはできるらしい。
男はその質問から十数秒ほど間を開けて、話しだす。
「我が名は...」
――――――――――
2042年6月10日19:48。
「あまりにも......静かすぎるな...。」
僕...河谷灯也は中華街の道を進みながらそう呟く。
空中で怪しく浮いているブロックは、動く気配はないし...。
不自然なほど、静かだ。
「ん...これは...。」
僕がしばらく歩くと、大きな壁に直面する。
よく見ると、空に浮いていたブロックが集まったもののようだ。
どうしようか...。
壊しても良いが、罠の可能性もある...。
「別の道通るか...。」
ちょうど交差点だったので、僕は別の道を通って白い光の柱へ向かうことにした。
遠回りだけど...死ぬよりはマシだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2042年6月10日19:48。
狭い道から大通りへと出る。
ここも、不自然なほど静かだ...。
と、思っていたが...
「「うわああああぁぁぁぁぁ⁉︎」」
遠くから叫び声が聞こえてくる...。
右の方を見ると、2人の人が走ってくる。
よく見ると2人は、旧国立天ヶ原高等学校の制服を着ている......ということは...
「灯也ぁぁぁ‼︎助けてーーー‼︎」
2人のうち1人...宇地原先輩がそう叫びながら迫ってくる。
彼らの後ろからは、全身真っ赤の巨大な鳥が追ってきている。
あれは...
「朱雀...なんでここにっ⁉︎」
2人と朱雀は僕のいる場所へ加速してくる。
やばい...撥ねられる...‼︎
僕は咄嗟に風属性魔術で2人と朱雀を操る。
「気絶しろ‼︎」
「「ゑ」」
僕がそう叫ぶのと同時に、2人は倒れ、朱雀は地面に突っ込む。
周囲が静かになる...。
「うっへぇ...危なかったぁ...」
僕はその場で座り込む。
危なかった...何か一つでもミスっていたら、僕らは...ああ、考えたくもない‼︎
そういえば、さっきは咄嗟に命令文を叫んだが、案外この方が素早く命令できる気がする...。
これはいいことを学べたな...。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2042年6月10日19:48。
「これ...時計止まってる...。結界の効果か...?」
僕はMyパネルの時計を見ながらそう呟く。
この時刻は...結界が張られた時間か...?
その時、宇地原三令と須田智三の2人が目を覚ます。
かなりの時間、気絶してたな...。
手加減の仕方も学ばなければ...。
「うぅ...ここはどこ......私は誰...?」
「ふざけてる場合じゃないですよ...。」
「ああそうか。すまない、灯也。」
宇地原先輩がそう言う。
まったく...彼はよくふざけるからな...。
彼には須田先輩のことも見習って欲し.........寝てる。
「起きてください。」
「うぅん......後もう少しだけ...。」
「今はそんな余裕ありませんよ...。白い光の柱の所へ行かないと...」
「あっ⁉︎そうだ......!」
ここでようやく須田先輩が起き上がる。
彼女もこんな感じなのか...。
これで僕より2つ年上というのだから驚きだ...。
2人は立ち上がると、辺りを見渡す。
「灯也、朱雀はどうした?」
「倒しましたよ。」
「ああ...そうか......。」
宇地原先輩はそう言いながら、僕を化け物を見るような目でながめる。
「それより、2人とももう着いていたんですね。安心しました...。」
「河谷君、今回の目的はアレ...なんでしょ?」
須田先輩が高く伸びる白い光の柱に視線を移しながらそう尋ねる。
まだ、白い光の柱に変化は見られない。
今回は、猶予の時間が長いな...。
もう、出現から2時間が経過している。
「はい。もう、2時間経っているので何が起こるかわかりま......」
その時、変わる。
白い光の柱が赤い光の柱へと...変わる。
「まずッ...⁉︎」
同時に、僕らの目の前に何かが現れる...。
白い装束に...顔には「参」と書かれた布...。
僕を含めた3人とも、それを敵と判断する。
僕はフリゾンソードを...先輩たちは魔法陣を...それぞれ準備し、攻撃の行動へと移る...。
――――――――――
2042年6月10日22:18。
東京にある目立った和風城の中で、俺...伊岐七斗は考え込む。
「常立一重...一体どこへ......」
「七斗、見つけた。」
俺が独り言を喋っていると、伊美七津木がそう言う。
俺たちの神術で倒れた少年の持つ情報の確認...彼女にはこれを任せていた。
「そうか...どうだった?」
「常立一重との通信は中華街跡地で途切れている...。」
「やはりか...。やはり、彼は...あそこに...。」
そう言いながら、俺は外の景色を眺める。
先程まで白かった光の柱は赤色に変わっている。
あそこに...常立が......。
「七津木、彼が戻ってくるまで、ここで待機だ。そして、その2人には目覚めない程度の蘇生を行う。」
「それはいいけど...なぜ、彼が戻ってくる前提なの?」
「彼が、そういうやつだからだ...。」
俺は、彼を...常立一重を思い出す。
常立一重...俺は、絶対に──ッ‼︎




