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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
第三章 〜《失踪》〜
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第64話 【聖ト魔ノ宴】

 彼は...一重は指をパチンッと鳴らし、魔人の四肢を謎の黒い物体の鎖で封じる。

 一瞬だった...。

 私では絶対に勝てない相手を、一瞬で...。


 「やはり、お前は結界で吸収した魔力を自身の体に受け入れていたのだな...。」


 「くっ...貴様......何をした...?」


 「簡単な話だ。お前が受け入れられる魔力には当然、限界がある。それを超える魔力を放出したまでだ。丸一日分の魔力を...だ。」


 まさか...彼はずっと準備していたのか...?

 私たちと出会った時も...湖で寝ている時も...私の鍛錬を見た時も...ここまで歩いてきた時も...ずっと。


 「さて...そろそろ終わらせるか...。」


 「お、おい待て。少し待ってくれ!魔人についてもう少し教えてや...」


 「黙れ。我は魔人がくだらない存在だとわかっただけで十分だ。だが、ここで我が手を下すのはあまりにもつまらないな...。」


 そう言いながら、一重はこちらを見てくる。

 そして、彼は軽くにやけると、こちらに歩いてくる。

 私は彼の雰囲気に押されて、尻餅をついてしまう。

 彼は私の目の前に来ると、その場で屈み、私と目を合わせる。

 彼の瞳は黒い。

 でも、その黒からは誇りのようなものを感じられた。


 「貴様、我を置いて一体何を...」


 「黙れ」


 「...。」


 一重の言葉で魔人は黙り込んでしまう。

 一重は改めて私の目を見て、右手を私と彼の間で広げる。

 すると、彼の右(てのひら)の上に何かが現れる。

 その何かは形を整えて、球体になる。

 やがて、その球体は一滴の雫となる。

 彼は、その雫のついた人差し指を私の口に近づけ、こう言う。


 「力が欲しいか?」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 今から3年前、私は()()()に救われた。

 ゲーム内での話だ。

 でも、その()()()は私を大きく動かした。

 その頃、ゲーム内では五種(ゴシュ)越格(エッカク)を狙う者が増えていた。

 私もそのうちの1人で、五種の越格の一つである『魔界天王(マカイテンノウ)』を狙っていた。

 当時、もうすでに5人のプレイヤーが特別な条件を満たして五種の越格を手に入れていた。

 その時点で、五種の越格を手に入れる方法は一つ...すでに手に入れたプレイヤーから奪う...それだけとなった。

 私の狙っていた『魔界天王』の越格は始め、最も多くのプレイヤーを狩ったPK(プレイヤーキラー)に与えられた。

 つまり、私が『魔界天王』の越格を手に入れるには、ゲーム内最強のPKに勝利しなければならなかった...ということだ。

 私はろくに準備もしないまま、最強PKに挑みに行った。

 より強いプレイヤーが越格を奪うのを防ぐためだ。

 私は最強PKの前に立った。

 彼は私をつまらなそうに見つめながら、インベントリから剣を一本取り出して左手でそれを持った。

 そして、いきなりこちらに向かって走り出した...が、私はそれをなんとか目で捉えて彼の攻撃を防いだ。

 ギリギリだった...だが、私にとっては最強PKの攻撃を防げたことのが重要だった。

 勝てる......そう少しでも思った。

 私の繰り出す攻撃は彼に簡単にいなされてしまう。

 対して私は、奇跡的に彼の攻撃を全て避けていた。

 そしてそんな戦いの中、私はついに彼に攻撃を当てた......と同時に、私の体力ゲージはほぼ空っぽになった。

 体が動かせない...。

 束縛...毒...スキル封印...弱体化......

 気づけば私には数え切れないほどのデバフがかけられていた。

 私の目の前には、二本の剣を両手に持っている最強PKがいた。

 双剣士...二本の剣を使い、奇想天外な動きで敵を翻弄し、戦う職業(ジョブ)

 当時、ゲーム内ではその操作難易度の高さからわざわざ選ぶプレイヤーは少なかった。

 だが、彼はその少ないうちの1人だったのだ。

 私と戦っている時、彼は全力の10%...いや、1%も出していなかった。

 彼は、二本目の剣とスキル使用を縛って私と互角に戦っていたのだ。

 格が違う...。

 まさに、越格。

 私が挑んでいいような相手ではなかった。

 最強PKは私の目の前まで来て、右手に持った剣を大きく振り上げた。

 私は、キルされるのを覚悟した。

 しかし、その時


 「弱い者いじめは良くないよ...魔界天王さん。」


 と言う声と共に高い金属音が鳴った。

 私とPKの間にもう1人のプレイヤーがいた。

 PKは、


 「廃神......(きみ)か。」


 と言いながら、武器をしまう。

 廃神...これも五種の越格の一つだ。

 私の目の前に...五種の越格が二つも...⁉︎

 私の、プレイヤーを操作する体は恐怖で震えていた。


 「廃神...(きみ)と戦うのは、不本意だ。僕はここで失礼するよ。」


 「あれ...そう?じゃあ、またねー。」


 その場を逃げるように去って行く魔界天王を廃神は、手を振りながら見つめた。


 「さてと...災難だったね、君。彼に絡まれるなんて...。」


 「違う...。私が戦いを挑んだの。」


 私は必死に否定した。

 同情されるのが嫌だったからだ。


 「ほう...。つまり、君はわざわざ彼と戦ってキルされそうになった...と。」


 彼は私を面白そうに見つめながら右手を前に出し、そして...


 「力が欲しいか?」


 そう言ったのだ。

 その後、私は廃神によって鍛え上げられた。

 私は強くなった。

 だが、私はある時、そのゲームを辞めた。

 現実(リアル)で2人の友人ができたのだ。

 髙橋愛莉と田中恵理...彼女らに出会ってから、私はそのゲームを遊ばなくなった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 私は全てを思い出す...。

 PKから私を救ってくれた者を...。

 私を鍛え上げ、強くしてくれた者を...。

 私を...変えてくれた者を...。

 その名は、//廃神-Hitoe//...。

 本来、三種しか作られなかったはずの越格を、その桁違いの強さで五種に増やしたプレイヤー...。

 //廃神-Hitoe//と、常立一重の言葉が重なる...。

 「力が欲しいか?」...か。

 私は鎖で四肢を封じられた魔人を見ながら、愛莉と恵理を思い浮かべる。

 私の中で、何かが込み上げる...。

 2人を殺したこの魔人を、私は...


 「殺したい」


 私は口を開き、一重の人差し指をそこに収める...。



 ――――――――――



 花が僕の人差し指を咥える...。

 彼女は一滴に濃縮された僕の膨大な魔力を舐め、それを飲み込む。

 次の瞬間、彼女が金色に光りだす。

 彼女の黒い瞳も、黒いロングヘアも、金色に光り輝く。

 そして彼女は突然、僕の人差し指を噛みちぎる。


 「うわっ⁉︎お行儀悪いな...。」


 僕はそう言いながら上に上昇して避難し、落ち着いて人差し指を治す。

 人差し指を直し終わった僕は再び、彼女を見る。

 金色のロングヘアは、何かの力を受けるようにフワフワと上下している。


 「金色で何かの力......聖なる力...とかか?だとすると、彼女は聖人と呼ぶべきか...」


 僕は顎に手を当てながら考察した内容をブツブツと呟く。

 すると、


 「おい!助けてくれ‼︎このままじゃ、殺されてしまう!」


 と言う魔人の声が聞こえてくる。


 「なんだよもぅ...僕の考察を邪魔しないで......あ、そうだ‼︎せっかくだし、実験しようか。ちょうどいいくらいの実験動物もいるし!」


 「実験動物って...うおゎ⁉︎」


 僕が指を鳴らすと、魔人を拘束していた鎖が解け、聖人と魔人だけを囲むような結界ができる。


 「実験動物くん、君が勝てたら君を助けてあげるよ。だから、本気で戦ってみてね!」


 僕は結界内の魔人に向かってそう言う。

 魔人はそれを聞くと、すぐに聖人に魔術で攻撃を仕掛ける。

 そして、魔人の魔術が聖人に当たろうとした瞬間、視界がボヤける。

 次の瞬間、とてつもない痛みが身体中を貫く。

 僕の右目には、穴だらけで動かなくなった魔人と簡単に崩れる結界が映っている。

 僕の左目には、何も映らない。

 どうやら、左目を潰されたようだ。

 それ以外にも、体全体に穴の空いた箇所...か。

 僕はすぐにそれらの傷を回復する。

 僕はどうやら、彼女を...聖人を舐め過ぎていたようだ。

 僕は地面へと下降しながら、条件発動魔術を2つ使う。

 回復(リカバリー)蘇生(リ・バース)...条件はそれぞれ、僕の負傷と死亡だ。

 消費魔力量があまりにも多いが、それは以前のようにゼリー状の魔力を使ってどうにかしよう。

 幸い、試験管10本分の魔力は用意してある。

 僕は彼女を見つめる。


 「(せい)()(うたげ)...か。それも悪くないな...。」


 僕はそう呟きながら、笑みをこぼす。


 「さあ、戦おう...聖人‼︎我に...お前の本気を見せてみよ!」

もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎

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