第57話 【白イ光ノ柱】
ゲートを潜る。
すると、地面が黒く平坦で周りの風景が真っ白な世界に出る。
僕に続いて豊野がゲートを潜り切ると、ゲートが閉じる。
「ふーん...確かに常立君が言ったとおりの景色だ。」
「僕はここを虚面世界...まあ、略して虚界って呼んでる。」
「意外と雑だな...」
「そう?あ、あと僕らが普段暮らしている方は実面世界...略して実界って呼ぼう!」
「呼ぼう!...って、今思いついた感じ?」
「そうだね。」
「まあ...そう呼び続ければいつか慣れるか...。」
「ちなみに、これまでの実験で分かったことが2つあるんだ。①虚界の中では光速を超えて動ける。②実界と虚界の座標はリンクしている。この2つが意味すること、それは......」
「実界の行きたい所にすぐ行けちゃう...ってコト⁉︎」
「そゆこと‼︎ただ...」
「ただ?」
「虚界と実界をつなぐゲートは、実界からしか開けられないんだ。」
僕がそう言った瞬間、豊野がさっきゲートのあった場所を見る。
「ゲゲゲ...ゲート消えてるじゃん⁉︎もしかして私たち、閉じ込められた⁉︎」
「豊野...一旦落ち着い...」
「落ち着けないよ‼︎こんなの、〇⚪︎〇〇しないと出られない部屋より酷いよ...。」
「あー...豊野、それはダメ。対象年齢あがっちゃうわ...。マジで一旦落ち着こ?閉じ込められてはないから...ね?」
「えっ⁉︎閉じ込められてないの?」
「確かに、ゲートは実界からしか開けられない...なら、実界の魔力を操作すれば良いだけだ。」
そう言いながら僕は、実界の訓練場に残した魔力でゲートを開こうとする。
口ではああ言ったが、正直これをやるのは初めてだ。
理論上は成功するはずだけど...。
「虚実融合...あ、できた。」
ゲートがすんなり開く。
できちゃった...。
やっぱりこの魔術で大事なのは、ノリと勢いのようだ。
豊野はすぐに、開いたゲートに飛び込んで実界に戻る。
僕もなるべく早めにゲートを潜り、実界に戻る。
本当に閉じ込められたら終わりだからね...。
「ってな感じで、虚界からでも実界の同じ座標に魔力があればゲートは開けるんだ。だから今の段階では、実界の行きたい場所にすぐ行くってのは難しいかな。全世界に僕の魔力を残せれば可能だけれども...。」
そう言いながら僕は豊野の方を見る。
あっ...気絶してる...。
豊野は訓練場の床に倒れ込みながら気絶していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
豊野を彼女の部屋のベッドで寝かせた僕は、自分の部屋に戻る。
しばらくすれば彼女は目を覚ますだろう。
「にしても、疲れたなぁ...。今日一日中ずっと訓練場で訓練してたからなぁ...。」
そう言いながら僕はMyパネルで自身の残り魔力量を確認する。
999999...やっぱりカンストだ。
これは、僕の魔力に制限はない...って捉えていいのかな?
「だとしたら...条件発動型魔術も可能なのか...?」
条件発動魔術...その名の通り、魔術の発動に条件をつけることだ。
僕の予想では、これをやるには膨大な量の魔力が必要だと考えている。
僕は時計を見る。
現在時刻は19時だ。
「今から試してみようかと思ったけど...時間が微妙だからなぁ......また今度にするか。それより、お腹空いたな...。」
そういえば、灯也はラーメン好きだったな...。
どこかおすすめの店、知ってるかも...。
「灯也を探すか...。っと、その前に...。」
僕は部屋の床に魔力を残しておく。
ラーメン食べた後、すぐに部屋に戻りたいからね...。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ある廊下を歩く。
この廊下の突き当たりに訓練場がある。
ちなみに、訓練場以外は全て探したが、灯也はどこにもいなかった。
よく見ると、訓練場の扉が開いており、中から光が漏れている。
「お、ビンゴか?」...と思ったのも束の間、僕は扉の近くに誰かがいることに気づく。
あの小柄な体は...乃々華だな。
僕は彼女のすぐ後ろに着くと、彼女の肩に手を置きながら
「よっ...何してんの?」
と聞く。
すると、彼女は
「うわあぁ⁉︎」
と言いながらこっちを見てくる。
僕は構わず、訓練場の中を覗く。
中には、こっちに背を向けて弓矢の構えの練習をしている富地がいた。
彼は乃々華の声に反応し、こっちを振り向こうとする。
「やばい来る...虚実融合。」
僕は咄嗟に足元にゲートを開く。
すると、僕と乃々華は虚界へと落ちていく...。
って言っても、2メートルくらいの落下だけどね...。
虚界の地面に着地すると、僕はすぐにゲートを閉じる。
「イテテ...ちょっと、一重兄ちゃん何するの⁉︎」
彼女は僕に問い詰める。
「ごめん‼︎まさかあそこに富地がいるとは思わなくて...。」
「まあ、確かに...怪しく覗きをしていたボクも悪かったかも...。」
「そういえば、なんで富地のことを覗き見していたの?見た感じ彼は、あんまり怪しいことしてなさそうだけど...。」
「やっぱり、気になる...?」
「そりゃあ、幼馴染のことだから...。」
「そっか......。実は最近、お兄ちゃんが神術を会得したくてずっと鍛錬しているんだよね...。」
「そうか...。」
なんだか気まずくなる...。
誰の影響かと言われれば、きっと僕か豊野のどちらかだろう。
「でも、富地が神術を会得すれば妹としては嬉しいものなんじゃないか...?」
「ボクも最初はそう思ってた......でも段々、お兄ちゃんが神術を会得したとき、お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなっちゃうんじゃないかと思うようになっちゃって...。」
僕はそのどこか寂しそうな言葉に思わず、言葉を詰まらせる。
「ごめん...やっぱりボク、少し変だよね...。お兄ちゃんが強くなるのを嫌がるなんて...」
「そんなことはない...と思う。」
僕はなんとか言葉を発する。
彼女は驚いたように僕を見つめる。
「僕も豊野が神術を使うと知ったときに少し...いや、結構悩んだ。」
「豊野...ってあのお姉ちゃんの?」
「そう...。あのとき僕は、彼女が何か遠い存在になってしまうのではないかと思ってた。今までの彼女とは違う何かに...。」
僕は自分の中で思ったことを素直に口に出す。
不思議と、もう言葉に詰まることはなくなった。
「きっと、今の乃々華もそんな感じだと思う...。富地が遠い存在になってしまわないかという不安......でも、それは乃々華が富地のことを大事に想っている証拠だ。」
「じゃあ...」
「乃々華が富地のことをそうやって想うのは全く変じゃない。むしろ、至極当たり前のことだよ。でも...いや、だからこそ信じることも大切だ。」
「信じる...」
「そう、富地のことを信じるんだ。僕が思うに、彼なら神術を会得しても道を踏み誤ることはないと思う。まあ、これは僕の少ない人生経験からの推測だけどね...。」
「もし......もし、お兄ちゃんが道を踏み誤まったら...?」
「そのときは、僕が全力で彼を止める...。もう、2度と見捨てたりはしない。」
僕は再び、例の事件を思い出す...。
今の僕は...あの頃とは違う。
「じゃあ、戻ろうか。」
僕はそう言いながら、部屋に残した魔力でゲートを開く。
そのとき後ろから、
「ありがとう、一重兄ちゃん。」
と乃々華が言う。
僕は優しく、
「どういたしまして。」
と言う。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚める。
と同時に、豊野の顔が目に入る。
僕は確か...そうだ、乃々華と部屋で別れてすぐにベッドに入って......寝落ちしたのか...。
そんなことより、豊野が何か焦っている。
様子が変だ。
僕はすぐに起き上がり、
「何があった?」
と問う。
「外に...白い光の柱が...」
豊野は僕の質問に対し、すぐにそう答える。
「白い光の柱...?」
僕はそう言いながら、部屋の窓をちらと見る。
しかし、白い光の柱は見えない...。
違う方角にあるのか...?
「とりあえず、最上階の部屋に...。そこからならよく見えるから!」
彼女はそう言うと、すぐに部屋を出てしまう。
今度は隣の香角先生の部屋から豊野の声が聞こえてくる。
全員起こすんだ...。
とりあえず、僕は彼女に言われたとおりに城の最上階の部屋に向かう。
最上階の部屋では灯也が窓に張り付くように外を見ている。
僕はすぐに彼の隣に行き、同じく外を見る。
「あれが...。ってか、なんだあれは?」
「あれは、今からちょうど10分前に突然現れました。」
窓に張り付きながら灯也が答える。
しばらくすると、部屋には例の9人が集まっていた。
僕は窓を背にして立ちながら、喋り出す。
「では、ここにいる全員に聞きます。あの光の柱について何か知っている人はいますか?」
僕の質問で部屋にいる全員が沈黙する。
「なるほど...じゃあ、あの光は......」
僕はそう言いながら、またあの光の柱を見る。
とその時、何かがこちらに迫ってくるのを感じる。
これは...来る⁉︎
「伏せろ!!!!!!!!」
僕は全員を見てそう叫びながら、条件発動魔術を使用する。
発動条件は...僕の魔臓の完全停止だ。
僕が叫んでから約2秒後、何かが僕らごと城を貫く。
それによって、僕の体に変化が現れる。
僕の体を流れていたものが完全に止まる。
魔力の流れが止まった。
それと同時に、僕は死ぬ。
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