第53話 【良カッタ】
私の振るう力は弱き者を守るためになくてはならない...
私が悪を打ち倒さなければならない...
これは...神が私に与えた使命...
だから......魔物も...PKも...そして、目の前にいるこの金髪の男も...全て.........
「滅ぼしてやる」
私はそう叫ぶと、フリゾンで杖を作り出す。
ノナはそんな私を警戒してか、様々な属性魔法で攻撃してくる。
しかし、それらはフリゾンウォールの目の前では無力。
私はそれを見ながら、杖を右手で掴み......左掌に突き刺す。
左手を貫いた杖に、私の血液が枝分かれするように張り巡らされていく。
「ひっ──⁉︎な...なんだよそれ⁉︎」
ノナが私の奇行を見てそう言う。
私は構わず、杖の刺さった左掌を奴に向ける。
「最強の術の前で潰えろ...」
「なっ...お前...何を言って──」
『神術:魔滅核閃』
そう私が言った次の瞬間、ノナの体が指先から徐々に崩れていく。
彼はすぐにそれに気づき、
「あれっ?なんだよ...これ?嘘だろ...嘘だよなぁ?」
と言いながら慌てる。
でも、もう遅い。
彼の体はもう、崩壊するしかない。
回復魔法も使えない。
彼の体には魔力が通っていないからだ。
「いやだ...‼︎こんなの...俺...死ぬの...?」
彼の胴体が完全に崩壊すると、彼はもう喋らなくなった。
そして静寂に包まれながら、彼の体は全て崩壊しきった...。
私は気配を感じて、入り口の方を見る。
そこには、常立君といきなり現れた双子がいた。
私は彼らに駆け寄ろうとするが、一歩目を踏み出した瞬間、私の体から力が抜ける。
私の体は、糸の切れた操り人形のように倒れる。
それと時を同じくして、私の意識は途絶える。
――――――――――
表彰式同日の23時...。
僕...常立一重は、城内の豊野の部屋にいる。
椅子に座っている僕のすぐ横のベッドで、彼女は眠っている。
僕は、あの時の状況を思い出す。
まず、豊野が神術でノナを倒した。
そして、彼女は僕たちの方を振り返って、こちらに走ってこようとした。
が、彼女はその場で倒れ、気絶した...と。
色々と疑問点があるが、とりあえず彼女が生きていてくれて良かった。
っと思った時、彼女の目が開く。
彼女の瞳がこちらに向く。
瞳の色はいつも通りの青色だ。
「ここは...一体......」
「安心しろ、ここは君の部屋だ。それより、体はどこか痛まないか?」
「えっ...うん...大丈夫......たぶん。」
「そうか...なら良かった。いきなり倒れたから、結構心配したんだ......」
僕がそこまで言うと、廊下の方から...
「誰だお前‼︎」
という富地の声と、それに答えるように...
「おっ...落ち着いて‼︎ぼ...僕は決して、怪しい者では......僕はただ、廃神様にお会いしたくて...」
という声が聞こえてくる。
この声は...。
僕は部屋と廊下を仕切るドアに近づき、おそるおそる開ける。
やっぱりか...。
「灯也...一体どこにいたんだ?地味に心配してたんだぞ...。」
「は...廃神様......申し訳ございません...。」
「んで...どこに行ってたんだ?」
「ラーメン」
「ん⁇」
聞き間違いだろうか...?
彼のことだから、きっと監禁されていて、そこからなんとか抜け出せた...と言うと思っていたんだけど...
「ラーメン.........食べてました。」
ラーメンかよ!
ラーメン食ってただけかよ‼︎
僕はため息をつきながら
「まあ、分かった。とりあえず、全員部屋に入ろう...。」
と言い、富地と乃々華と灯也を豊野の部屋に入れる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほど...じゃあ、灯也はノナとオクタを追っている途中にラーメン屋でラーメンを食べたところ、2人を見失ったんだな...。」
「はい...。」
「本当だったら何かしら罰を与えたいところだが、灯也がラーメンを食べたおかげで富地と乃々華にも会えて、豊野の神術を見ることもできた...と言っても過言ではないからな......」
「と...言うことは......」
「今後の行動次第...かな。」
「あ...ありがとうございます‼︎」
灯也は僕に向けて深く礼をする。
っていうか灯也ってラーメン好きなんだ...。
任務を放棄するほどって...。
なんか無性にラーメンが食べたくなってきた...。
今度、灯也に良い店教えてもらおう。
「っていうかさ...徳川家常の正体は常立君だったじゃん?」
話が一段落つき、ベッドに座っている豊野が聞いてくる。
「ああ、そうだな。」
「だったら、トーナメントに出場していた常立君はなんだったの?常立君の試合の時も徳川はいた気がするけど...。」
「ああ...あれね。フリゾンで僕の体を作って、それを遠隔操作したんだ。いやー...大変だったよ...。僕から離れすぎると動かせなくなっちゃうからね。」
「そっちも色々と大変だったんだね...。てか、そもそもなんで正体隠して武闘会を開催したの?」
「一番の理由は、かっこいいからだけど......もし僕が主催者だとノナとオクタが知れば、2人は姿を表さなかったかも...と考えると、結果的には良かったのかなぁ...って思ってる。」
「あー...かっこいい......。ふーん...そんな理由で...」
「なんか...ごめん...。」
僕は豊野に気圧されて、なんとなく謝る。
その後、豊野・富地・乃々華・灯也の4人は改めて自己紹介をし始める。
皆、楽しそうだ。
「良かった...。」
僕の中でそんなセリフが浮かんでくる。
たしかに...良かったな。
結果的には、ほぼ全てがうまくいった。
豊野は神術を会得し、富地と乃々華とは無事に再会できた...。
本当に...本当に......
「良かった。」
僕は4人が話している中で、誰にも聞こえないよう静かに呟く。
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