第52話 【魔滅仙神-Natao】
「見せてやる」
ボクらが大型円形闘技場のフィールドの入り口付近まで逃げると、一重がそう言う。
すると、フィールドの壁に沿って、ドーム状のバリアのようなものが張られる。
バリアに触れてみると、強い力で弾かれる。
そんな事をしている間に彼が闘技場の中央からいなくなっていた。
「あれっ...一重兄ちゃん...」
「上だ」
富地に言われて上を見ると、そこに浮いた一重がいた。
いつの間に...
「なるほど、自身の体を魔力化させて周囲の魔力ごと空中に移動したのか...。それなら、光よりも速く動くことができると...。」
富地の解説を聞いてみても、いまいち理解できない...。
まあ...とにかくすごいってこと?
でも、空に浮いたところで何が...
その時、一重が左手を高く掲げる。
彼の左手の指は何かを構えている。
あれは...指パッチンの構え⁉︎
「我が最強の術をとくと味わえ...」
彼はそう言い、続けて...
『神術:万滅波』
と言いながら、指をパチンとならす。
すると、下にいた魔物たちが上から押しつぶされるように倒れる。
結果、魔物たちは全て潰れてしまった。
「なるほど、光速を超えた移動で生まれたエネルギーを攻撃に利用したのか...。」
また富地が解説するも、ボクはさっぱり理解できない。
一重が地面に着地すると同時に、バリアが解かれる。
ボクたちは彼に駆け寄る。
「一重兄ちゃん...あれ、何?」
「ああ、あれって『神術』のこと?あれは...まあ、必殺技みたいなもんだよ。」
説明雑すぎ...。
まあボク、説明が複雑だと理解できないからな...。
「それより一重、金髪の男を追った女性は大丈夫なのか?」
「あー...そうだったな。よし、急ごう‼︎」
富地の質問に一重がそう答える。
一重、彼女のこと心配しなさすぎじゃない?
いや、逆に彼女を信頼しているのか...。
ボクたちは彼女のいる北小型闘技場へと向かう。
――――――――――
北小型闘技場の中央で、私...豊野二千花は金髪男に問う。
「あなた...苦創者のノナっていうんだっけ?」
「うん!そうだよ。」
ノナはそう明るく答える。
苦創者という割にはやけに明るい性格だな。
「ちなみに、今まで殺してきた人の数は...っていうかあなた、人を殺してる?」
「そりゃあ苦創者だからねぇ...ざっと500万くらいは殺ったかな...」
「──ッ⁉︎」
私はその厖大な数字に思わず驚いてしまう。
「た...たとえば、どんな殺し方...?」
「う〜ん...やっぱりぃ、不意打ちがほとんどかなぁ。こんな感じで...ねぇっ‼︎」
彼がそういうのと同時に正面からナイフが飛んでくる。
私は咄嗟に杖を手で......杖を...杖...あれ?
杖が.........ない。
あっ...表彰式で控え室に置いてきたわ。
詰んだ!
私がそんな事を考えている間に、もうナイフが目の前まで到達している。
「死ぬ...」
そう思った時、突然目の前に漆黒の壁が現れる。
「えっ...あれっ...?こ...これはフリゾン...ってことは常立君⁉︎っていない...?」
私はフリゾンを見て反射的に彼を探す...が、周囲に彼はいなかった。
ということは...
私は思わずニヤニヤしてしまう。
きっと、今の私の顔を見れば誰もが気色悪いと思うだろう。
でも...
「いい...これでいい‼︎私は今、最も最強に近づいた!!!!これが私の望んだ力!これが私の望んだ未来!」
「なんだ...それは......あの赤髪野郎しか使えないんじゃ...」
私の力にノナは恐れる。
私はフリゾンボディスーツとフリゾンローブを身に纏う。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
常立一重に救ってもらったあの日から、私...豊野二千花は彼に興味を持つようになった。
彼の日課...彼の趣味...彼の家...そして、彼の好きな女性のタイプ。
彼との日常での会話で、それらの情報を少しずつ集めようとした。
その結果、彼の遊んでいるゲーム及びプレイヤー名を知ることができた。
当然、私はすぐにそのゲームをやり始めた。
初めはひたすらレベル上げをして、十分レベルが上がってから彼を探そうとしていた。
が、レベル上げがあまりにも楽しくて、気づけばレベルカンストしていた。
思えばこれまで、真面目にゲームというものを遊んだことがなかったのだ。
そうしてレベルカンストした私は、本格的にゲーム内の常立一重、すなわち//廃神-Hitoe//を探し始めた。
しかし、私が情報収集しているとPKがハエのようにたかってきた。
ということで、私はその鬱陶しいPKを狩るPKKとなって、そのついでに彼にまつわる情報を集めるようになった。
そう、気づけば私の目的は常立一重探しから、PK狩りになっていたのだ。
それから1ヶ月後、私は最も多くのPKを狩ったPKKとして、五種の越格の一つである『魔滅仙神』を与えられた。
こうして私は//魔滅仙神-Natao//となった。(「なたお」は、あいうえお表で「にちか」の一文字上)
私が自分のために使った力は誰かのための力になっていた。
私は気づいた。
力を持つ者は持たない者を守る義務があり、力を持たない者は持つ者に守られる権利がある。
私の振るう力は弱き者を守るためになくてはならない...
――――――――――
僕と富地と乃々華は北小型闘技場に着く。
闘技場の中央にはフリゾンローブを纏った豊野二千花がいた。
彼女は金髪男...ノナに向かって何か話している。
富地と乃々華が彼女に加勢しようとするが、
「2人とも、待て。」
と、僕が2人を止める。
彼女の...豊野二千花の青色の瞳がより強い青色に光っている。
あれは...
僕は赤い装束の男が言っていたことを思い出す。
僕をひどく驚かせたあの言葉を...
君の友人...豊野二千花のことだけど...彼女もまもなく、君と同じように神術を会得するだろうね。
僕は彼女をまっすぐ見据える。
豊野が...神術を...?
僕がそれを口に出そうとした時、彼女が
「滅ぼしてやる」
と言う。
次の瞬間、それが始まる。
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