第50話 【久シブリ】
黒髪の男と睨み合う。
「君...何者なんだい?」
大型円形闘技場の中心で、僕...常立一重は黒髪男に問う。
「俺は楽滅者のオクタ...んで、こいつが苦創者のノナだ。」
黒髪男...オクタが答える。
楽滅者に苦創者......この前戦った魂絶者の仲間か...?
「デカを殺したのはお前だろ...廃神。」
あ〜...ビンゴ。
「君、彼の仲間だったの?だったらさぁ.........死ねよ」
僕は右手の人差し指で彼の首の頸動脈を狙って、フリゾンの斬撃を飛ばす。
その斬撃は狙い通り、彼の頸動脈を切り、そこから大量の血液が噴き出す。
しかし、
「ほう...会ってまだ数分だというのに......ずいぶんと好戦的だな...。」
と、言う彼の首から傷跡が消えていく。
なんだ...?
回復...にしては回復速度が速い。
それに、回復だったら噴き出る血液の圧力に負けて、皮膚に歪みができるはずだ。
彼の首にあった傷は跡形もなく消えている。
「特殊な魔術でも使ったのか?」
「フッ...まあ、そういうところだな...。」
「原理を話すつもりはないんだね...。」
「それは、お前も同じだろ?廃神、なぜお前は神術を使わない?まるで何かを守っているようだ。」
僕は動揺する。
「さ...さあね......。」
「とぼけるか......まあいい。俺らの目的は廃神の殺害...。」
そう言いながら彼は、小さな瓶を取り出す。
瓶の中は真っ黒だ。
フリゾン...じゃないよな?
「だが、それはあくまで最終目的だ。それを達成できるなら過程はどうあろうと自由だ。」
彼は、瓶を投げる。
そして、その瓶が割れると、そこから噴水のように変な魔物が大量に湧き出てくる。
「これはッ──⁉︎」
「廃神、常立一重...俺たちを殺したければ、南北の闘技場に来い。まあ、来れればの話だがな...。」
そう言うと、オクタとノナが南北に飛んでいく。
どうする...?
正直、奴らを放っておきたくないけど...だからと言って、この大量の魔物を放っておくのもマズイ。
放っておくなら、せめて知性のある方だな。
「さてと...」
僕は、未だ湧き出続ける魔物たちを眺めながら呟く。
魔物はバランスボールのような形•大きさの胴体と、4本足、そして豆粒くらいの大きさの顔を持つ。
名前は...「バイン・マダニー」と言うらしい。
「どうしようか...。」
予定では、あの2人を追跡していた灯也と合流して3vs2でボコボコにする...はずだった。
だが、灯也が帰ってこない‼︎
その時、豊野が喋り出す。
「常立君!これは神術を使うべきだよ‼︎なんでためらっているの?」
「.........て...」
「えーっと...なんて?」
「......って......だって......だって...この円形闘技場を壊したくないんだもん‼︎」
「は?」
「ま...まあ、とりあえず神術はマジのピンチに陥るまでパスで...いまはどうするかを...」
僕が、そこまで言うと、後ろの方から詠唱が聞こえてくる。
「黄昏矢──‼︎‼︎」
その詠唱の直後、真上から何本かの矢が降ってくる。
僕はギリギリで頭上にフリゾンウォールを展開する。
降ってきた矢に当たった魔物は気付けば消えている。
僕が声のした後ろの観客席のほうを振り返って見ると...
「富地⁉︎それに...乃々華も⁉︎」
そこには、僕の幼馴染であり、9年前に意識不明の重体となった双子兄妹...兄、五藤 富地と妹、五藤 乃々華がいた。
そして、2人は観客席からこちらに華麗なジャンプを決め...
「ぐぇっっむぶふうお‼︎」
られなかった。
富地はきれいに着地したが、乃々華はなぜか空中で回転し、頭から落下していった。
彼女は...異次元のドジだ!
彼女は富地の手を借りてなんとか立ち上がる。
そして、2人でこちらに歩いてくる。
まず話し始めたのは、乃々華だった。
「久しぶり!一重兄ちゃん!!」
「ああ、本当に...久しぶりだ...。」
9年前のあの日から、僕は罪悪感と共に生きていた。
それから、僕は定期的にお見舞いに行っていた。
僕は(魔力獲得前まで)ずっと、彼らを心配していたが、見た感じ、幸せそうでよかった...。
本当に.........よかった......
...って、いまはそれどころじゃない!
目の前の魔物をどうにかするには...。
「2人とも、少し良いか?」
「いいよ!...何?」
「2人には、ここの魔物と戦い続けてほしいんだ。倒す必要はない、とりあえず僕が戻ってくるまで戦ってくれれば良い。」
「了解‼︎ここはボクらに任せて‼︎!!」
乃々華が自信満々に答える。
彼女はもう、攻略法を見つけたのだろうか...
少し不安だが、ここは信じよう...幼馴染の言葉を。
もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎




