第48話 【勝トウ】
魔力武闘会トーナメント4日目午前。
私...豊野二千花は控え室で杖の最終調整を行なっている。
今回の相手は活田佳奈四...創造の力の持ち主だ。
彼女は様々な種類の武器を創ることができる。
ただ、その創れる武器の量には限りがある...と思う。
て言うか、無限に武器創れたら彼女の魔力が無限ってことだからね...。
「そしたら終わりだな...。」
そんなことを考えていると、もう試合の時間だ。
「行くか...」
そう言い、私は控え室を出ていく。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私は、北側の入り口から入場していく。
正面には、活田先生...。
彼女も私も所定の位置につく。
私の心臓の拍動が体全体に伝わる。
ああ、久々の緊張だ...。
そういえば、魔力を手に入れてから今までの2ヶ月間、こんな正式な場所で、こんな強者と戦ったことなかったな...。
心の中のわずかな興奮を私は楽しむ。
「やっと、本気で戦えるわね。」
彼女は創った双剣を両手に逆手で持ちながら、そう言う。
私は杖の端を彼女に向けながら、
「ほんっと...待ちくたびれましたよ!...早くやりましょ‼︎」
と返す。
彼女はそれに対して頷くだけだった。
彼女が一歩、踏み出す。
すると、彼女の姿が消える。
私は嫌な予感がして、体を反らす。
次の瞬間、私の頬に傷ができる。
そして、背後には彼女が...。
どうやら私の嫌な予感が的中したようだ。
私はすぐに彼女に杖を向け、魔法を発動しようとするが、
「させないわ──疾風‼︎」
と、彼女に杖を飛ばされてしまう。
私の杖は私の背後にある。
杖を拾おうとすれば攻撃されて終わる。
だったら...
「杖なんていらないや!」
「はぁ⁉︎」
私は、彼女に向かってまっすぐ走っていく。
そして私は、彼女の顔にグーパンをヒット...はせず、勝手に避けてくれた彼女の背後に回る。
彼女は当然、私の首目掛けて双剣を振ろうとするが...
「遅い...」
私がそう言った瞬間、彼女の双剣の動きが止まる。
私の左手には杖が、彼女の腹部には大きな風穴がある。
「少し離れている武器は、自身の魔力が少しでも付着していれば自由に動かせる...まさか、暇つぶしの鍛錬中に見つけた法則がこんなとこで使えるなんてね...。」
私は彼女にだけ聞こえるくらいの声でそう呟く。
彼女は下を向き、立ち尽くしている。
あれ...生きてるよね?
私は彼女の顔を覗き込む。
すると、彼女はいきなり顔をあげて笑い出す。
「いや〜...強いね、豊野さんも。これなら、常立君の件も安心して任せられる...!」
私は元気に喋る活田先生を見て安心する。
彼女は続けて、
「きっと決勝に進んであなたと戦うのは常立君よ。彼の目的が何なのかはわからないけど、あなたが優勝を目指すということに変わりはないわ。豊野さん...頑張ってね‼︎」
と言いながら、拳を前に出す。
私は自身の拳をそれに合わせながら、
「もちろん‼︎」
と返す。
勝とう、と本気で思った。
――――――――――
魔力武闘会トーナメント4日目午後。
控え室で僕...香角刻四は、タバコを吸う。
初めてタバコを吸った時は微妙だと思った...っていうか今もそう思っているが、吸うと落ち着くから、疲れた時や緊張している時はよく吸うようになった。
体に害があることは分かっているが、それは回復魔法で補えるわけで...。
もしかして、これからの時代はタバコが流行るのでは?
ちょっと今度、常立に相談してみよっかな...
「ってそうじゃん...僕、今からそいつと戦うんじゃん...。」
そう、僕がこれから戦う相手は常立一重。
廃神...すなわち最強を目指す最強だ。
彼は今の状態でも十分強い。
なんか、かみわざ(?)ってので周囲の物を全て消せるらしい...。
うん、勝てるわけないじゃん!
「どうしよう、どうしよう...。こう無駄なことを考えてる間にも試合が迫ってる...。とりあえず試合開始までに3つは策を考えなきゃ...。えっと、試合開始まであと...5分⁉︎じゃあ、1つの策を考えるのに使える時間は...ってこんなことしてる場合じゃないってば‼︎」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
闘技場の真ん中で常立一重と向き合う。
彼の目に光はない。
僕の戦いに策はない。
5分はあっという間だった...。
「常立君、君の目的は一体何なんだ?」
僕は剣を創りながら彼に問う。
しかし彼は何も答えず、フリゾンで剣を作る。
そして、こちらに向かって走ってくる。
攻撃される!
僕はそう思い、咄嗟に剣を彼との間に構える。
彼の剣と僕の剣が交わる。
「お......重い...。」
彼の剣は重かった。
まるでダンプカーを時速100kmで突っ込ませたかのように...。
これはやばい...腕と剣、共に折れそうだ。
そんなことを考えた瞬間、彼の剣が僕の剣と右腕をまとめて切る。
「い゛っっっ──⁉︎」
僕は猛烈な痛みに思わずしゃがみ込む。
僕のすぐ近くに右腕が落ちている。
彼は僕と距離を取りその場で立ち止まる。
まだ僕を警戒しているのか......説得は不可能だな。
「そうか...お前の答えはそれなんだな?」
オレは右腕を拾って、回復で繋げる。
「だったら、こっちも容赦なく叩き潰してやるよ‼︎」
オレは左手を地面につける。
すると、地面から数多の槍が生えてくる。
槍は3mくらい上昇すると、常立に先端を向ける。
そして、
「殺れ‼︎」
と、オレが言うと、常立に向かって数多の槍が高速で飛んでいく。
だが、それらの槍は全て、フリゾンの壁によって防がれる。
そんなこと分かってた。
だからオレは槍の質にこだわってはいない。
オレは槍の量で戦う。
質より量ってやつだ‼︎
壁の強度や修復を槍の量で超える。
これがオレの創った攻略法だ。
フリゾンの壁に僅かだが、穴ができ始める。
できる穴の数は次第に多くなり、遂に一本の槍が常立の体を貫く。
来た‼︎‼︎
いいぞ...殺れるぞ......常立一重に勝てる‼︎‼︎
「あれ?」
何だ...これは...?
全身の感覚が...途切れた...?
「......ッハ...グラッッギィィァァ.........」
全身からの激烈な痛みに思わず声を吐き出す。
オレは自身の両手を見る。
すると、両手に限らず全身から太く長い針のようなものが突き出ていた。
これは...フリゾン...右腕を切られた時に侵入したのか...?
「なんだよこれ...嘘だろ......」
ずっとオレの負けは決まってたのかよ...。
オレは...常立一重に勝てなかったのかよ...。
「嘘...だと......言って...くれ.........よ...」
――――――――――
「終わったか...」
特別観客室の席に深く腰をかけた德川家常がそう言う。
彼の目には安堵感と寂しさがあった。
彼は続けて、
「ついに、盤面が完成した。もうまもなく、奴らが...ホトトギスが動き出すだろう...。そろそろ、奴らを尾行してくれるか?」
と言う。
僕...河谷灯也はそれに対し、
「承知いたしました。」
とだけ言い、部屋を出ていく。
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