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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
第二章 〜《魔力武闘会》〜
47/82

第47話 【人王-Toya】

挿絵(By みてみん)

 魔力武闘会トーナメント3日目正午。

 私...豊野二千花はスライムミルクティーを飲みながら対戦表を眺める。

 このスライムミルクティーは活田先生が立ち上げたブランド、『フリ(FRE)クロ(QLO)』から発売されたドリンク。

 スライムから得られる弾力のある素材を、タピオカの代わりとして使っているミルクティーだ。

 初めは私も飲むのに抵抗があったが、一回飲んでみると意外とハマる。

 タピオカはもっちり食感だったが、スライムは口の中でとろけるように広がっていく。


 「やっぱり美味しいですね...スライムミルクティー。」


 「そうねー。こんなのも作れちゃうなんて、やっぱり常立君はすごいねー。」


 私の隣に座っている活田先生がスライム抹茶ティーを飲みながら言う。

 本当に彼はすごい。

 きっと、今回失踪したのも何か理由があるのだろう。

 今はそう信じよう...。


 「おっ!河谷君と香角さんだ。」


 活田先生のその言葉で私は2人の存在に気づく。

 香角先生の顔はいつになく真剣な表情で河谷君を見つめている。

 まあ、彼がそうなるのも仕方ない。

 なぜなら、河谷君はフリゾンの使い手だからだ。

 先生は横浜で一度、常立君と戦っている。

 先生は知っているはずだ...フリゾンがどれだけ強く、そしてどれだけ恐ろしいものか。

 2人が所定の位置につくと、香角先生が先に口を開く。


 「随分と余裕のある顔だな...。」


 「まあね。」


 「一つ聞きたいんだが、君は常立一重について何か知っているか?」


 「さあ...?わからないね。」


 「そうか、ならばこの試合は勝たせてもらう。僕が...いや、オレが彼から直接聞く。」


 香角先生の一人称が「僕」から「オレ」に変わる。

 なんか、一人称変わるだけで雰囲気もガラッと変わるな...。


 「へえ〜、随分なやる気だ。僕は強いよ?」


 「お前はオレに勝てると思うか?」


 「さあね。そう言う君は、僕に勝てる確証は?」


 河谷君は煽るように質問し返す。

 香角先生はそれに対して剣を創りながら答える。


 「あるわけないだろ──‼︎」


 先生が剣を構える。

 ついにやり合うか?

 そう思った時、


 「そうか、そうだよね。じゃあ...」


 と言いながら河谷灯也がフリゾンでナイフを作り、それを自身の心臓に刺す。


 「これで君の勝ちだ。」


 「は?おま...何をやって...」


 闘技場内にいる観客全員の気持ちを香角先生が代弁してくれる。

 いや、ほんとに何やってんの⁇⁇

 河谷灯也は心臓にナイフを刺したまま、控え室に戻っていく。

 追いかけて問い詰めよう。

 私の中で一瞬で答えが出る。

 私は席を立ち上がり、控え室に向かって走る。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「負けちゃったw」


 「負けちゃった...じゃないわよ!これも常立君の指示なの?」


 私は彼を追い詰めるように質問する。


 「指示...か。まあ、そんな感じかな。」


 「なんか、やけに曖昧ね。」


 「彼は、僕に判断を(ゆだ)ねた。きっと彼にとって僕と香角刻四は同じ立ち位置なのだろう。」


 少し悲しげな表情で彼はそう言う。

 彼は本当は、常立君に認めてほしいと思っているんだな...。


 「そういえば、あなたと彼ってどんな関係なの?」


 「ああ、そういえば昨日は君の話を聞くだけだったね...。次の試合まで1時間半くらいあるから、僕からも話そうか。これは、関係と言って良いのかは分からないが、彼とのある出来事だ。」



 ――――――――――



 あれは確か...そうだ、あれもちょうど3年前のことだ。

 僕と世間はその頃、異世界転生アニメにハマっていた。

 その頃はアニメ化からオリジナルゲーム化までがセットだった。

 僕が特に気に入っていたアニメもゲーム化した。

 それもオープンワールドという規格外のボリュームで‼︎

 僕はそのゲームをやり込んだ。

 平日は小学校の放課から4時間、休日は10時間、ひたすらやり込んだ。

 その年の夏休み、僕は小学校生活最後の夏休みをそのゲームに費やした。

 ただ、僕はその頃レベルに伸び悩んでいた。

 無課金スマホ勢だったので、機種の性能や装備も原因だったかもしれないが、僕はギルドに目をつけた。

 そう、僕はギルドに入っていなかったのだ。

 元から人と交流するのが苦手ってのもあったが、なにより僕は他人を信用できなかった。

 理由は簡単、僕が今まで見てきたアニメのほとんどが「追放&成り上がり&ざまぁ系」だったからだ。

 その結果、僕は疑心暗鬼な性格になってしまった。

 そんな時に僕に道を与えてくれたのが、当時の//戦王-Hitoe//...今では//廃神-Hitoe//、すなわち常立一重だった。

 彼は自身のギルドに僕を半ば強引に入れた。

 でも、そのおかげで僕は気づけた。

 ギルドの素晴らしさ、そしてその真価に。

 彼のギルドはすぐに解体されてしまったけれど、僕の気持ちは変わらなかった。

 世界最大ギルド...『WORLD』を作り、五種(ゴシュ)越格(エッカク)の一つ、『人王』を獲得すること。



 ――――――――――



 「こうして、僕は//人王-Toya//になったんだ。」


 「ふ〜ん...で?」


 「で?って...だから、僕は彼にとても大きな借りを作ったんだ。その借りを返すためにも僕は彼に仕えているんだ。」


 なるほど、途中から用語ばっかり出てきて頭がショートしてたけど、要は河谷君は常立君に恩返しがしたいんだ!


 「いいじゃん!」


 「えっ...?」


 「ゲームで交流の輪を広げたなんてすごいよ!私は逆に自分の世界を狭めていってたから...」


 「てっきり、ヲタクってキモがられるかと...」


 「そんなわけないじゃん!私は、ヲタクなんて理由でキモがったりしないよ。」


 「そうか...そうなんだ......そう...か......うん、ありがとう、豊野さん。」


 彼が笑顔で言う。

 その時、彼の頬を一筋の涙が伝う。

 彼の過去は一体、どんなものだったのだろう...。

 そう、疑問に思った。

もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎

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