第47話 【人王-Toya】
魔力武闘会トーナメント3日目正午。
私...豊野二千花はスライムミルクティーを飲みながら対戦表を眺める。
このスライムミルクティーは活田先生が立ち上げたブランド、『フリクロ』から発売されたドリンク。
スライムから得られる弾力のある素材を、タピオカの代わりとして使っているミルクティーだ。
初めは私も飲むのに抵抗があったが、一回飲んでみると意外とハマる。
タピオカはもっちり食感だったが、スライムは口の中でとろけるように広がっていく。
「やっぱり美味しいですね...スライムミルクティー。」
「そうねー。こんなのも作れちゃうなんて、やっぱり常立君はすごいねー。」
私の隣に座っている活田先生がスライム抹茶ティーを飲みながら言う。
本当に彼はすごい。
きっと、今回失踪したのも何か理由があるのだろう。
今はそう信じよう...。
「おっ!河谷君と香角さんだ。」
活田先生のその言葉で私は2人の存在に気づく。
香角先生の顔はいつになく真剣な表情で河谷君を見つめている。
まあ、彼がそうなるのも仕方ない。
なぜなら、河谷君はフリゾンの使い手だからだ。
先生は横浜で一度、常立君と戦っている。
先生は知っているはずだ...フリゾンがどれだけ強く、そしてどれだけ恐ろしいものか。
2人が所定の位置につくと、香角先生が先に口を開く。
「随分と余裕のある顔だな...。」
「まあね。」
「一つ聞きたいんだが、君は常立一重について何か知っているか?」
「さあ...?わからないね。」
「そうか、ならばこの試合は勝たせてもらう。僕が...いや、オレが彼から直接聞く。」
香角先生の一人称が「僕」から「オレ」に変わる。
なんか、一人称変わるだけで雰囲気もガラッと変わるな...。
「へえ〜、随分なやる気だ。僕は強いよ?」
「お前はオレに勝てると思うか?」
「さあね。そう言う君は、僕に勝てる確証は?」
河谷君は煽るように質問し返す。
香角先生はそれに対して剣を創りながら答える。
「あるわけないだろ──‼︎」
先生が剣を構える。
ついにやり合うか?
そう思った時、
「そうか、そうだよね。じゃあ...」
と言いながら河谷灯也がフリゾンでナイフを作り、それを自身の心臓に刺す。
「これで君の勝ちだ。」
「は?おま...何をやって...」
闘技場内にいる観客全員の気持ちを香角先生が代弁してくれる。
いや、ほんとに何やってんの⁇⁇
河谷灯也は心臓にナイフを刺したまま、控え室に戻っていく。
追いかけて問い詰めよう。
私の中で一瞬で答えが出る。
私は席を立ち上がり、控え室に向かって走る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「負けちゃったw」
「負けちゃった...じゃないわよ!これも常立君の指示なの?」
私は彼を追い詰めるように質問する。
「指示...か。まあ、そんな感じかな。」
「なんか、やけに曖昧ね。」
「彼は、僕に判断を委ねた。きっと彼にとって僕と香角刻四は同じ立ち位置なのだろう。」
少し悲しげな表情で彼はそう言う。
彼は本当は、常立君に認めてほしいと思っているんだな...。
「そういえば、あなたと彼ってどんな関係なの?」
「ああ、そういえば昨日は君の話を聞くだけだったね...。次の試合まで1時間半くらいあるから、僕からも話そうか。これは、関係と言って良いのかは分からないが、彼とのある出来事だ。」
――――――――――
あれは確か...そうだ、あれもちょうど3年前のことだ。
僕と世間はその頃、異世界転生アニメにハマっていた。
その頃はアニメ化からオリジナルゲーム化までがセットだった。
僕が特に気に入っていたアニメもゲーム化した。
それもオープンワールドという規格外のボリュームで‼︎
僕はそのゲームをやり込んだ。
平日は小学校の放課から4時間、休日は10時間、ひたすらやり込んだ。
その年の夏休み、僕は小学校生活最後の夏休みをそのゲームに費やした。
ただ、僕はその頃レベルに伸び悩んでいた。
無課金スマホ勢だったので、機種の性能や装備も原因だったかもしれないが、僕はギルドに目をつけた。
そう、僕はギルドに入っていなかったのだ。
元から人と交流するのが苦手ってのもあったが、なにより僕は他人を信用できなかった。
理由は簡単、僕が今まで見てきたアニメのほとんどが「追放&成り上がり&ざまぁ系」だったからだ。
その結果、僕は疑心暗鬼な性格になってしまった。
そんな時に僕に道を与えてくれたのが、当時の//戦王-Hitoe//...今では//廃神-Hitoe//、すなわち常立一重だった。
彼は自身のギルドに僕を半ば強引に入れた。
でも、そのおかげで僕は気づけた。
ギルドの素晴らしさ、そしてその真価に。
彼のギルドはすぐに解体されてしまったけれど、僕の気持ちは変わらなかった。
世界最大ギルド...『WORLD』を作り、五種の越格の一つ、『人王』を獲得すること。
――――――――――
「こうして、僕は//人王-Toya//になったんだ。」
「ふ〜ん...で?」
「で?って...だから、僕は彼にとても大きな借りを作ったんだ。その借りを返すためにも僕は彼に仕えているんだ。」
なるほど、途中から用語ばっかり出てきて頭がショートしてたけど、要は河谷君は常立君に恩返しがしたいんだ!
「いいじゃん!」
「えっ...?」
「ゲームで交流の輪を広げたなんてすごいよ!私は逆に自分の世界を狭めていってたから...」
「てっきり、ヲタクってキモがられるかと...」
「そんなわけないじゃん!私は、ヲタクなんて理由でキモがったりしないよ。」
「そうか...そうなんだ......そう...か......うん、ありがとう、豊野さん。」
彼が笑顔で言う。
その時、彼の頬を一筋の涙が伝う。
彼の過去は一体、どんなものだったのだろう...。
そう、疑問に思った。
もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎




