第46話 【私ト彼】
河谷灯也と一緒に、私は特別観客室に入る。
「こんなところに私を入れても大丈夫なの?」
「大丈夫だ...今は徳川様がいないからね...。」
「ねぇ、あなたの目的って一体...」
「立って話すのも何だし...これに座って。」
彼は私の言葉に被せるようにそう言いながら、フリゾンで椅子を作る。
私は仕方なく言われた通り、椅子に座る。
彼はまもなく喋り出す。
「それで...君、なんでさっき彼と話してたの?」
「えっ...」
「とぼけなくても大丈夫!一部始終は見させてもらったから‼︎彼に無視されてたところもね。」
よし、今度こいつと戦う時は半殺しにしよう。
「そこまで見てて分からないの?彼が心配だったのよ。いきなり音信不通になるから...。」
私は怒りを堪えながらそう言う。
「ふ〜ん...じゃあさ、もう一つ質問いいかな?」
「いいわよ。」
「君は...豊野さんは彼...常立一重のことを信じているかい?」
「もちろん、信じてるわ。それでも...なぜか彼のことは放っておけないの...。」
「なるほどね...。」
彼は顎に手を当てながら、そう言う。
そして、
「そういえばずっと気になってたんだけど、君と彼ってどんな関係?」
と質問してくる。
私はその問いに即答できなかった。
意外にも私と彼の関係は曖昧で複雑だった。
「少し長くなるけど...良い?」
「ああ、もちろんだとも。」
「じゃあ......あれは、3年前の夏休み明けのこと...」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
3年前...私が中1の頃の夏休み明け、常立一重が私の中学校に転校してきた。
私の所属していた1-3では、転校生というイベントで盛り上がっていた。
でも、そんな1-3の裏では悪質なイジメが行われていた。
そのイジメは、クラスの一部の女子から私へのもの。
理由は、私が地味だから...ただそれだけ。
イジメにはバリエーションがあった。
一方的な暴力,私物の破壊,裸体の撮影 等々...。
あの日...3年前の8月31日のイジメは、学校の裏庭での裸体の撮影だった。
イジメが始まってから4ヶ月...正直、もう慣れていた。
逆らえば殴られる。
我慢して受け入れるしかない。
そう思っていた。
彼が現れるまでは。
彼はイジメっ子たちに「教師をここに呼んだ」と、嘘をついて彼女らを追い払ってくれた。
イジメっ子を追い払った彼は、私の顔をつまらなそうに見つめながら、ある提案をする。
「契約をしよう...。内容は、僕らが中学に在学している間、僕が君をイジメに遭わせないこと。条件は、君の親にこのイジメのことを話さないこと。」
私はその提案を聞いて、頭の上に「?」が浮かんだ。
ただ、聞いた感じでは私にデメリットがなかったので、私はその契約をすんなり受け入れた。
それからたった1週間で、私へのイジメが嘘のようになくなった。
私は、彼がイジメをなくした方法、そして彼という存在にも興味が湧いた。
そして中学を卒業する頃には、彼とはすっかり仲良くなっていた。
そう、中学を卒業するまでは...。
高校での彼へのイジメは突拍子もなく始まった。
彼は約一年もの間、イジメられ続けていた。
私は彼を助けたいと思った...
けど、中学の頃の記憶が私の脳内で蘇った。
あの地獄のような日々が鮮明に...。
その結果、私は彼と少し距離を取るようになった。
私は、彼のように人をイジメから救うことができなかった。
私はただ、彼の目から光がなくなっていくのを見ることしか出来なかった...。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「...だから魔力を手に入れた私は、今度こそ彼に寄り添って、彼を助けようとしたの。」
私は、これまで常立君との間で起こった出来事を話し終える。
「そうか...。だったら尚更、君は彼を放っておくべきじゃないか?」
「それってどういう意味?」
「彼を放っておくことも彼を助けるということにつながるんじゃないのか...ってことだ。」
「それは...」
「君は彼を心配しているようだけれど、君が君のままでいる間は、彼は死なないよ。」
「なんで...そんなことが...」
「君の話す彼がそう見えたからだよ。」
私は思い出す。
確かに、常立君が私の目の前で苦しい顔を見せたことはなかった。
彼は私の目の前ではいつも平然としていた。
加えて、現に彼は生きている。
彼は...常立君は、私を...
「そっか」
私は微笑みながら椅子から立ち上がる。
そして、河谷君の顔をまっすぐ見ながら、
「ありがとう、気持ちの整理がついた気がする。」
と言う。
彼は一瞬、驚いた顔でこちらを見るが、すぐに笑顔で
「それは良かった」
と返す。
そして、私が部屋を出ようとすると、
「豊野二千花、常立一重は君が優勝することを望んでいる。彼のためにも、絶対に負けるなよ。」
と言う。
私は彼の方は見ずに
「当たり前でしょ?私は絶対に負けない。廃神...常立一重のために──。」
と言い、部屋を出ていく。
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