第42話 【効率ト美シサ】
大型円形闘技場の観客席で、私...豊野二千花は試合が始まるのを待ちながらトーナメント表を眺めている。
今回は活田先生と、田中 恵理という女が戦うらしい。
活田先生は魔力戦闘適応試験にてSランクの魔物を余裕で葬り去っていたので大丈夫だと思うが...
「田中恵理って女は死なずに帰って来られるかな...?」
彼女はどうやらAランクの魔物をなんとか討伐できるくらいの実力だったらしい。
真の実力を隠してるとかなら大丈夫だろうけど、もしこれが彼女の全力だとしたら......。
「活田先生は容赦ないからな...」
ふと、視線を感じる。
私の正面上方にある特別観客室からだ。
そこではバーコードデブの明らかに怪しい主催者...徳川家常がずっしりと席に座っている。
そして、彼の隣には常立君になぜか認められた男...河谷灯也が立っている。
私はなんとなく彼が気に入らない。
バーコードデブの側近でありながら、このトーナメントにも参加することから、彼が何かを企んでいることはほぼほぼ確定だ。
「まあ、私が無駄にするだけだけどね。」
そんなことを考えていると、選手2人が入場する。
私から見て左側(南)からは活田先生が、右側(北)からは田中恵理が出てくる。
ついに......ついに魔力武闘会トーナメントが始まる‼︎
私の心情は9割の好奇心と1割の不安で埋め尽くされていた。
――――――――――
大型円形闘技場に入場した私...活田佳奈四は、目の前の対戦相手の女子高生...田中恵理を見つめる。
様子を見る限り彼女は、このような人々の前に出る場面が苦手なようだ。
「大丈夫...。すぐに終わらせてあげるから。」
私のその言葉に彼女はビクッとする。
そう、今回の私の目標は鍛錬ではなく勝利だ。
どれだけショボくても、勝てればそれでいい...なら、
「凍結...」
そう言いながら私は創造魔法で木刀を作る。
そして、足元が凍って動けない彼女の首を狙って刀を振り抜く。
と、ちょうど彼女に刀が触れようとしたタイミングで刀が輪切りになる。
「え?」
当然、彼女に木刀は当たらず、私の隙が生まれる。
「マズッ...」
そう発するのとほぼ同時に、少しだけ意識が飛ぶ。
気づいた頃には私は壁に叩きつけられた後だった。
風属性の魔法で飛ばされたんだろう...。
田中恵理がこちらに歩いてくる。
そして...
「バッカじゃないの?対戦相手に手加減なんかしちゃダメでしょ?おばさんwww」
と、見下すように煽る。
私の中の何かが壊れる。
それと同時に私はあることを確信する。
手加減など必要ない...と。
別に今まで手加減をしていたわけではない。
ただ、美しさ...あるいは効率のいずれかを重視していただけだ。
むしろ、私は手加減が嫌いだ。
やるなら徹底的に...私は今までそう生きてきた。
でも、私は今確かに彼女の経歴や様子を見て、無意識に手加減してしまっていた。
そう、無意識に...だ。
「やっと分かった...」
「はぁ?なんだよいきなりおばさ...」
「『完璧』...だよ。」
私は彼女を睨みながら言う。
彼女は言葉を失う。
「私が真に求めていたのは美しさでも効率でもない。それはズバリ...『完璧』だ!その中に美しさも効率も含まれている。」
「な...何をふざけたこと言ってるんだ!そんな単純なこと...」
「大は小を兼ねる...これが私の答えだ...」
私はゆっくり立ち上がり、左手で彼女を指差す。
「狙うは『完璧』...なら、これしかない...。」
すると私の背後で無数のナイフが創られる。
全てのナイフは彼女に切先を向けている。
私が左手を開くと、無数のナイフは彼女の周囲をドーム状に覆う。
もう彼女に逃げ場は無い。
「安心しな、クソガキ!おばさん、今度こそ手加減はしないから‼︎」
そう言って私は勢いよく左手の拳を握る。
するとドーム状に彼女を覆っていた無数のナイフが彼女の体に容赦なく刺さる。
そしてついに彼女は動かなくなる。
観客席が静まる。
少し過激すぎたか...?
「いや、これでいい。」
そう、これでいいのだ。
この...『完璧』な私で...。
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