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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
序章 〜《一変》〜
4/82

第4話 【秘密】

 2月16日。

 僕は天上線に乗り、珍しく電子新聞を読む。

 新聞を開くと見出しには、


 〔あの悲惨な事件から9年...横浜市立小学校全焼事件〕


 と書かれていた。

 9年前...僕がちょうど7歳...小学生の時だ。



 9年前の2月16日20時。

 とある横浜市立小学校にて火災が発生したと消防に連絡が入った。

 消防がついた頃には、火はすでに校舎全体を覆っていた。

 その頃校舎から逃げ出した2人の少年は、まだ中に人がいると口述。

 消防士たちによる決死の消化活動が行われたが、火が完全に鎮火したのは翌日の8時。

 その後、校舎内から2人の男女の子供を発見。

 直ちに病院へ搬送されたが、意識不明の重体。

 9年経った今もなお、2人の意識は回復していない。

 事件の数日後、警察による現場調査が行われたが、校舎は既に全焼していたため調査は打ち切り、真相は闇の中へと葬り去られた。



 僕は天ヶ原駅を過ぎ、その次の駅で降りる。

 そして、この辺では一番大きい大学病院へ向かう。

 受付に着くと、


 「506号室のお見舞いに来ました。」


 と言いながら、証明書を見せる。

 受付からカードキーをもらい、エレベーターで5階へ向かう。

 506号室の前まで行き、カードキーで中へ入る。

 2つのベッドの前まで行く。

 ベッドで寝ているのは、五藤(ゴトウ) 富地(トミジ)五藤(ゴトウ) 乃々華(ノノカ)である。

 2人とも僕の友人だった。

 9年前の今日、例の事件が起こるまでは。

 あの日、意識を失った2人は9年間ずっと意識不明だ。

 医者によると回復の兆しはもうないそうだ。

 意識を失い喋ることもできない友人に僕ができるのは、こうやって定期的に見舞いに来ることぐらいだ。

 たとえ2人が認識してくれなくても寄り添う。

 それが僕のできる唯一のことだ。



 何時間経っただろうか...。

 窓の外を見ると、日が沈みかけてる。


 「そろそろ帰るか...」


 と思い、帰る支度をしていると...

 ガラガラ

 と勢いよくドアが開けられた。

 ドアの前には1人の男が立っていた。


 「おまえは...」


 僕は、男を睨みながら言う。


 「ん?...なんだ。誰かと思えば一重じゃないか...。」


 ドアの前の男...宇摩(ウマ) 阿比留(アビル)は冷静な声でそう言った。

 阿比留は続けて、


 「一重が来ていたなら、俺はもういいか...。」


 と言い、部屋を出て行こうとする。

 僕は咄嗟に、


 「待てよ」


 と強い口調で言う。

 阿比留は頭だけ僕の方を向き、


 「なんだ?」


 と言う。

 僕は、


 「アンタは、2人を見て何も思わないのか?」


 と問う。

 阿比留は体をこちらに向けて、


 「何も...って何?」


 と聞き返す。


 「あの日、オレとアンタは2人を置いて逃げた。そしてそのことをずっと黙っている。...それについて何も思わないのかって聞いてるんだよ!」


 ...そう。

 9年前の2月16日、例の小学校にいたのは富地と乃々華と阿比留,そして僕の4人だった。

 僕たち4人は面白半分で夜の小学校へと侵入した。

 しかし、学校内で唯一鍵のかかっていなかった理科室にて、気分を上げるために僕がマッチで火を起こした後、誤ってマッチを落としてしまい、様々な物質に引火。

 火は瞬く間に広がり、校舎全体を包み込んだ。

 僕と阿比留は、富地と乃々華を置いてなんとか校舎外へと逃げられた。

 だが、校舎の外でいくら待っても富地と乃々華は出て来なかった。

 僕と阿比留は、自ら火を起こしたことと2人を置き去りにしたことを秘密にした。


 「僕はなんとも思わない。起こってしまったことはもう仕方がないだろ?」


 と阿比留が冷たく言い放つ。

 その瞬間、僕の中の何かが壊れた。

 もう...()()()()()()()()()()()

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