第37話 【魔力戦闘適応試験(弐)】
私は北小型闘技場の観客席に座りながら、他の人の試験を眺める。
周囲にいる人は皆、私のことを化け物を見るような目で睨んでくる。
「なんだか居ずらいな...。」
私の試験では、運が良いのか悪いのかSランク魔物の「ケンタウロス」が現れた。
他の人の試験を見ている感じだと、試験で現れる魔物のランクは受験者の魔力量と関係しているらしい...。
ランクの上限はおそらくSだと思う。
そして、私以外でSランクの魔物を出してそれを討伐した者は、この北小型闘技場にはいない。
「この感じだったらトーナメント出場は確実かな...。」
そんなことを言いながら眺めていると、次の受験者が入ってくる。
あれ...?
あの人って...
「活田先生⁉︎」
私がおもわずそう叫ぶと、周囲の観客がビクッとする。
やっぱり皆、私のことを化け物だと思っているようだ。
私は構わず、闘技場の中央にいる女性...活田 佳奈四を見つめる。
彼女は国立天ヶ原高等学校で国語を教えていた元教師だ。
国家崩壊事件後、彼女は常立君と協力してフリゾンを用いた戦闘向けの服を発売した。
デザイン性にもこだわった戦闘服は瞬く間に売れた。
そこで得た資産から彼女は、新ブランド『フリクロ』を立ち上げた。
ちなみに、私が今着ている服もフリクロの物だ。
フリクロの服を着て闘技場の中央にいる彼女は、私の方を見ると手を振ってくる。
私は無意識に手を振り返してしまう。
彼女は水晶の前まで歩き、水晶に左手を当てる。
水晶が光り、魔物が現れる。
そこには、心臓のあたりに大きな刺し傷のあるオークがいた。
オークの横にパネルが現れる。
名前は「ゾンビオーク」で、属性は火属性...。
ランクは...
「S⁉︎」
私はまた、叫んでしまう。
当然、周囲の人はビクッとする。
それより、彼女が心配だ。
私は今まで、彼女が戦っているところを見たことがない。
っていうか武器すら持ってないのに、戦えるの?
私がそんなことを考えていると、彼女が左手を前に出す。
すると、そこに大剣が現れる。
大剣はわずかに水を帯びている。
「あれって...創造魔法...。」
なるほど、彼女が武器を持っていなかったのはこのためか。
創造の力を使えば、どんなタイプの相手に対峙してもその場で対応できるのか。
彼女はゾンビオークに向かって走る。
そして華麗に一回転し、大剣をオークに向かって投げる。
投げられた大剣はオークの胴体を上と下で真っ二つにした。
あまりにも美しすぎるその戦い方に誰もが驚き、沈黙が走る。
彼女は真っ二つになったゾンビオークを背に、闘技場を後にした。
彼女のことを心配した私が馬鹿だったようだ。
――――――――――
大型闘技場の特別観客室の席に座ってモニターを見ながら、僕...河谷灯也は呟く。
「北小型闘技場の方は激しいですね。Sランク討伐者がすでに2人も出ています。」
僕の隣の席にはこの魔力武闘会の主催者...徳川家常が座っている。
彼は僕の呟きに答えるように
「豊野二千花と活田佳奈四...。どちらも、これからもっと強くなる。そう、確信している...。」
と言う。
「徳川様はこの大会、誰が優勝すると思いますか?」
「私はあまり、賭け事が好きではなくてね......でも」
「でも?」
「豊野二千花...。私は彼女を信じているよ...。」
彼は、試験開始からずっとモニターを見つめている。
まるで受験者たちを見守るように...。
もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎




