第35話 【神以下ノ存在】
「またか...」
辺り一面、全て真っ白な空間で僕...常立一重は呟く。
目の前には1人の赤髪に赤い装束を着た謎の男...。
彼の顔は「一」と書かれた布で隠されている。
「また会ったね...常立一重君...。」
謎の男がそう言う。
「なんだか今日は...フレンドリーな感じだな。」
「僕は普段はこんな感じさ。この前は少し時間がなかったからあれだけど...。」
彼はそう言いながら漆黒の物質で椅子を作り、それに腰をかける。
あれは...フリゾンだ。
フリゾンを使える者は現段階、僕と僕が蘇生で復活させた男...河谷 灯也だけだ。
「一つ聞きたいことがあるんだが...いいか?」
「うん。僕に答えられることならなんでも...。」
「その椅子を構成している漆黒の物質は僕以外の者でも扱えるのか?」
彼は僕の質問を聞くと驚いたように目を見開き、
「ほう...なるほど、いい質問だ。」
と、言う。
すると彼は立ち上がり、フリゾンの椅子を吸収する。
「そうだな...せっかくだから、魔力と...魔術についても説明しよう。」
「魔術...?」
「まず、魔力ってのは人間の体内にある『魔臓』ってところで作られる。魔臓で作られた魔力は『魔管』っていう管を通って全身に流れる。魔臓は体内の魔力量が一定に保たれるように魔力を作っているんだ。」
「その魔臓ってのは身体のどこにあるんだ?」
「またいい質問だね。魔臓のある位置は個体によって異なる。魔臓に近い部位ほど、魔力強化の影響を受けやすいから個体によって適正武器が異なるんだ。」
彼の口から出る情報は全て初耳だ。
一体彼はどこまで知っているのだろう...。
「それで、魔術とは一体なんなんだ?」
「魔術...あるいは魔法は、魔力を操作して魔力と異なるものにすることを言うんだ。魔術には名前の付いているものもあれば...ついてないものもある。この漆黒の物質はどちらかと言うと後者かな。」
「つまり、魔力を使った攻撃は全て魔術なんだな?」
「そゆこと。いやぁ、理解が早くて助かるわ〜。」
僕のことを馬鹿にしてないか?
そう言うのを我慢しながら、また質問する。
「それで結局、その漆黒の物質は僕以外も使えるのか?」
「ああ、そうだったね。結論から言うと、可能だ。ただ、その前に『魔力型』について話さなきゃね...。」
「魔力型...?」
まだ用語があるのか?
「そう。人間の血液に血液型があるように、魔力にも魔力型って言うのがあるんだよ。その魔力型が君と同じ者ならこの物質を使えるだろうね...。ただ、魔力型が同じ個体はほぼいないんだ。」
「えっ...それじゃあ不可能なんじゃ...」
「一回落ち着いて、まだ話は続いてるから...。いいかい?魔力型は一部、上書きすることができるんだ。だから、君の魔力を他者に少しでも与えれば、その者もこの物質を使えるようになるわけ。」
「そうか...魔力を付与すれば良かったのか...。」
フリゾンの研究だけをしていた僕にとってそれは盲点だった。
「ありがとう...おかげでなんとかなりそ...」
「あとは、神術について...だな。」
「なっ⁉︎神術のことまで知ってるのか?」
神術:万滅斬...。
僕が魂絶者のデカを倒すのに使った術だ。
あの時...僕が術を使った時、不思議と僕の脳に術名が浮かんだ。
まるで、遠い昔に聞いたかのように...。
「神術。それは神代の時代、神々が自身の身を守るために各々作った術だ。魔術が神術となる条件は...神以下の存在を殺せることだ。」
「神以下の存在ってことは...神を超える存在もいたってことか?」
「まあ、そういうことだね。」
彼はそう言いながらまた、フリゾンで作った椅子に座る。
「ふう...少し話しすぎちゃったかな...。僕、疲れちゃったよ。」
その時、僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
これは...豊野の声か。
「もうお別れの時間みたいだね。次会えるのは一体いつになるんだろう......あっ、そうだ...。」
赤い装束の男は椅子から立ち上がり、僕の真横まで来て耳元で囁く。
「君の友人...豊野二千花のことだけど...」
彼はそれに続けて言葉を発する。
その言葉は僕をひどく驚かせる。
それと同時にこの前のように、彼との距離が一気に離れる。
「おい、待て!今のは一体どういう意味だ?」
そう叫んでも彼は、僕に向かってニッコニコで手を振ってるだけだ。
「待て...待て...待てよ...」
そしてついに、彼の姿が見えなくなってしまう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目を覚まし、上半身だけ起き上がりながら前に手を伸ばす。
「待ってくれよ...」
そう呟く。
気づけば僕は自分の部屋のベッドの上だった。
確か、灯也への報告が終わって久しぶりに寝たんだっけか。
僕は寝るまでのことを思い出しながら、ベッドの左側に誰かがいるのに気づく。
「あっ...ごめん、常立君...。せっかく寝てたのに...。だけど今、どうしても伝えたいことがあって...」
僕は彼女の顔を見つめながら、赤い装束の男が言っていたことを思い出す。
いつか、このことは彼女に伝えなければならない...。
ただ、それは今じゃない。
彼女の焦っている顔を見るとそう思えてくる。
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