第32話 【廃神-Hitoe】
広い研究室、そこで僕は1人でビーカーを見比べていた。
どのビーカーにもフリゾンが入っている。
「なるほど...主から一定距離離れて、数時間経つと形状変化できなくなるのか...。あとは...他者の使用についてだが...」
僕がそこまで呟くと扉がコンコンと叩かれる。
扉を開くとそこには豊野がいた。
「やっぱりここにいた...。もしかして徹夜で研究してたの?」
「えっ...まあ...そうだけど...」
「たまには寝たら?記憶の整理にもなるし。」
「確かに...今日は寝れるように努力するよ...。」
とは言いつつも、僕の中には睡眠に対する恐怖があった。
未だに、イジメられる夢を見るのだ。
段々慣れてはきたが、やっぱり怖いものは怖い。
「あっ...そうだ...例のフリゾンのサンプル、完成したよ。」
「えっ...本当⁉︎」
「はい、これ...早速、訓練場で試してきてくれる?」
「オッケー‼︎よし、これで私もフリゾンマスターだー!」
僕がビーカーを渡すと彼女は訓練場の方へと走っていった。
僕もビーカーを軽く片付けて、研究室を後にする。
研究室を後にした僕が向かったのは、同じ建物の最上階。
最上階は他の階と比べると少し天井が高い。
そんな最上階にある大きな扉を僕は叩く。
そして扉を開き、
「失礼します。」
と言う。
中は校長室くらいの広さの部屋だ。
そして目の前の大きな机と椅子には1人の男が座っている。
僕と同じ高校生で黒髪の特に目立たないような男の名は、河谷 灯也。
先日の国家崩壊事件にて魂絶者のデカに乗っ取られた男だ。
これは、ちょうど今から1週間前の日出の時の出来事だ。
デカを倒した達成感で満たされていた僕はあることを思い出す。
「あっ...そういえば忘れるところだった...。」
そう言いながら僕は近くに落ちている右腕の方へと歩く。
「うえっ...何その腕...。なんか......気持ち悪い...。」
豊野が腕を見てそう言う。
まあ...そう言うのも無理はないが...僕にとってこれは、一つの貴重な実験体だ。
僕は腕のすぐそばまで近づき、右手をかざしながら優しく詠唱を唱える。
「蘇生」
僕がそう唱えると、床に落ちていた腕が白く光りながら浮き上がる。
右腕から胴体が生え、そこから頭部•左腕•両足が生える。
「あとは...裸のままじゃまずいから...」
僕は目の前の少年の身体にフリゾンボディスーツを纏わせる。
その時、少年が目を覚ます。
そして少年は僕を見つめながら口を開く。
「貴方は...貴方の名は...」
「我が名は常立一重......この世界の『廃神』になる男だ。」
「そうか...貴方が...例の『廃神』なのですね...。」
あれっ...?
正直『廃神』について質問してくるかと思ってたけど、もしかして既に知ってた感じ?
「噂で聞きました...全ダンジョンを制覇し、最強となった者がいると...。その名は...//廃神-Hitoe//。」
なるほど...どうやら彼はゲーム内で僕が操作していた『廃神』を思い浮かべているようだ。
ってことは...彼も僕と同じゲームを遊んでいたってことか。
「君の名も聞いてもいいかな?」
「僕の名前は...//人王-Toya//。リアルの名前は、河谷灯也です。」
「えっ⁉︎」
人王。
僕はその名を聞いて驚いた。
「『人王』って...あの最大ギルド『WORLD』のギルドマスターの...」
「一応、そうですけど...廃神さんには及びませんよ...。」
いや、及ぶだろ...。
僕もある程度、ゲームをやりこんだ頃にギルドマスターになってみたことがあるが...すぐギルド内で暴動が起こり、すぐやめた。
あれは相当な統率力がないとまともにできない。
僕はまさかの出会いに驚くと同時に安心もしていた。
ちょうどこのような人材が必要だったのだ。
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