第31話 【神術】
なんだ...?
奴...常立一重から溢れ出るあれは一体何なんだ?
今まではあんなもの、微塵も感じなかった。
だが、奴が立ち上がった瞬間、我をも圧倒する何かが溢れ出した。
魔力とは違う...何か。
とにかく、今はなるべく平然を装わなければ...。
「貴様...死にたいのか?」
「フッ......それはこっちのセリフだ...。お前こそ、その程度の力で我に挑もうとするのか?...それは自殺行為だぞ。」
頭の中で何かが切れる。
「貴様‼︎我を挑発したこと、後悔させてやる‼︎」
そう言いながら奴との距離を一瞬で詰め、両手に持った剣で斬りまくる。
しかし、奴は謎の黒い物質を最低限動かして攻撃を全て防いだ。
「その程度か?魂絶者の力は?」
奴は見下すように呟く。
「まだまだあああぁぁぁ‼︎」
次はできるだけ距離を取り、奴に向かって無詠唱で魔法を撃ちまくる。
だが、その全てが奴に近づいた瞬間に消失した。
それはまるで氷が溶けるように。
「......やはり、お前の力はその程度か...。」
奴のその言葉と同時に、周囲が何かで満たされる。
これは...
「魔力──!?」
「おや...察しが良いではないか。そうだな...せっかくだから説明してやろう...。」
奴は偉そうに語る。
「まず大前提として我々は普段、魔力を体内で練ることで魔法を使っている。だが、その工程では少なからず魔力のロスというものが生まれていた。そこで我は気づいた...体外で魔力を練れば良い...と。そうすれば魔力をロスなく使うことができる。」
「つまり貴様は先程、魔力をそのまま体外に放出した。だから我の魔法が負けて消失した...ということか?」
「イグザクトリー‼︎まさにその通りだ‼︎...ただ、まだ終わりじゃない...。我はこれまでの1ヶ月間、あることを感じ続けていた。それは、魔力の無限の可能性...そして人間の限界...。」
奴は語り続ける。
「我は考え続けた...魔力の無限の可能性を手に入れ、人間の限界を克服する方法を...そして我が辿り着いたこたえは...」
奴の目が紅く光る。
「魔力化だ──。」
その瞬間、奴の姿が見えなくなる。
「自身を魔力化すれば、理論に反することができるようになる。例えば...身体を動かさずに移動したり...だ。」
奴の声があらゆる方向から聞こえてくる。
だが、奴の姿は見当たらない。
「しかし、移動した分のエネルギーは決してなくならない。エネルギー保存の法則によってな...。だから我はそのエネルギーを攻撃に用いようと考えた。」
そこまで言うと、奴が目の前に現れる。
逃げろ。
本能がそう言う。
だが、動けない。
体が、言うことを聞かない。
「それによって繰り出される攻撃の威力は通常の数京倍......時に、神をも殺す力となる...。これこそ、我が見つけた最強の術...」
奴はこちらを睨み、剣を振り上げる。
『神術:万滅斬』
奴が剣を振り下ろした瞬間、首から下の感覚がなくなる。
視界が激しく動く。
そうか...我は首を切られたのか...。
動きがおさまると、周囲が更地になっていた。
なんだ...何が起こった...?
これも奴の...常立一重の仕業なのか?
常立が近づき、見下ろしてくる。
頭部に残った魔力で最期に聞く。
「われ...が.........よわ...かった......の......か...?」
正直、否定して欲しかった...。
自分は...デカは弱くないと言って欲しかった。
それだけを望んでいた。
「安心しろ。お前が弱かったのではない......この世界が我を強くしすぎたのだ──。」
瞳から液体が流れる。
そうか...これが人間の言う『涙』と言うやつか...。
静かに目を閉じ、眠りにつく。
――――――――――
朝日が昇る......日出だ。
更地となった旧官邸で僕はため息をつく。
「成功だけど...やりすぎかな...?」
そう呟きながら、僕はあるものを見つける。
それは...腕だ。
さっき僕が切り落としたデカの右腕がそこには落ちていた。
「あっ...いいこと思いついた!」
僕がそう言うと後ろから
「常立君‼︎」
と呼ぶ声が聞こえる。
後ろを振り返ると、こちらへ走ってくる豊野がまず目に入った。
豊野はその勢いのまま、僕に抱きつく。
「ちょっ......」
「良かった...無事で......死んでなくて...。」
その時、先輩や先生たちも近づいてくる。
皆、笑顔だった。
そうだ...僕は勝ったんだ──!
総理大臣を救うことはできなかったが、デカを殺したことで少なくとも最悪の結末は避けられた。
僕は朝日を見ながら笑みを浮かべる。
「常立...君?どうしたの?」
豊野が、少し離れて僕の顔を見ながらそう聞く。
「えっ...まあ...達成感で喜んでた...ってところかな。」
「そうか...そうだよね...だって、常立君は日本を救ったんだから。」
豊野もそう言いながら朝日を見る。
僕はこの1ヶ月を思い出す。
今まで色んなことがあった。
でも、今日の僕は最も『廃神』に近づけた。
なぜだか、そんな気がする。
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