第28話 【重大ナ事件】
鎧を着た女性は思い出すように喋る。
「常立って...あっ......もしかして...」
その時、けたたましい獣の鳴き声がまた聞こえてくる。
「あれ...おかしいな...。しっかり仕留めたと思ったんだけど...。」
僕は鳴き声のした方を見て納得する。
「ああ...なるほどね......だから二魂獣なのか。」
僕の視線の先には、さっきの半分くらいの大きさの獣が2匹いた。
おそらく、この二魂獣ってやつは一度死んだら2つに分裂して生き返るんだろう。
一撃で倒せない敵ほど面倒臭いものはない。
まあ...勝てないわけではないけどね...。
僕は先程と同じように、右手を前に出す。
すると2匹の獣がいきなり口を大きく開ける。
口の中ってそんなに見せびらかしたくなるものか?
「っていうか汚いな...口の中血まみれじゃん...。」
きっと多くの人間を食べてきたんだろう。
その人たちのためにもこいつらはここで仕留めよう...。
僕はフリゾンの斬撃を放つ準備をする。
そして一気に2つの斬撃を放つ。
それと同時に、獣の口からフリゾンとはまた違う黒色の物質が吐き出される。
「なっ──⁉︎」
僕は咄嗟に疾風で、自身と鎧の女性を吹き飛ばす。
しかし、それがいけなかったのか黒い物質は気化し、周囲がその気体に包まれた。
「う〜ん...魔力に包まれて何も見えない...。仮面は外すしかないか...。」
ここからは肉眼での情報に頼るしかない。
それにしても暗い...。
これ...きっと敵には全部見えてるやつだよね...。
この暗さが一番よく見える...そんな感じだろう...。
「なら...答えは簡単。光魔法で目眩しだ!」
僕は煌きで辺りを一瞬だけ明るくする。
背後からあの獣の声が聞こえる。
狙い通りだ!
僕は声のする方にフリゾンの斬撃を飛ばそうとする。
その時、前に出した右手に水が降ってくる。
「ん...?雨...かな......いや...これは...」
唾液だ!
僕はすぐに上を見る。
僕の頭上には僕を食べる気満々の獣が、口を大きく開けて重力に身を任せていた。
ダメだ...これはさっきのようには避けれない...。
僕の脳内で最悪の可能性が浮かぶ。
それは.........『死』...
「噴火──‼︎」
突然、遠くから聞こえてきたその詠唱の直後、大量の溶岩が獣を押し流す。
ついでに周りの黒い気体も無くなった。
僕は溶岩の噴射された方を見る。
そこには横浜でも見た、例の魔法陣が展開されていた。
「なるほど...それはそうか...。僕はまだ死ねない‼︎」
「常立君!」
そう言いながら、後ろから香角先生が走ってくる。
「大丈夫か?」
「はい...僕の心は奴への殺意で満ちています...。」
僕はそう言いながら溶岩に押し流された獣を一瞬だけ見る。
獣は無様に焼け焦げ、灰になっていた。
あとは目の前に立っているこの獣だけだ。
「先生、この獣の動きを封じてくれますか?」
「ああ!もちろんできるとも!見ていろ...感電──‼︎」
彼はそう唱えて、剣先から電気を放出し、敵を感電させる。
今度は僕の番だ。
僕は右手から生み出したフリゾンソードを獣に向ける。
「我が怒り...その身で感じるがいい......黄昏。」
そう僕が唱えた瞬間、感電でピクピク動いていた獣の身体が完全に静止する。
そして、獣は砂のような粒子になって風に飛ばされた。
それはまるで、赤く染まった黄昏時の空に吸い込まれるように...。
「それにしても常立君達も渋谷に来ていたなんて...もしいなかったら、今頃私どうなっていたか...。感謝しても仕切れないわ...。」
安心したように、鎧の女性...活田先生が言う。
「まあ...本当に何事もなくてよかったです...。」
しばらくして、先輩達と豊野が戻ってきた。
「色々ありましたけど...なんとか合流できましたね...。ここからの予定なんですけど......」
その時、僕の言葉を遮るように周りから大音量で男の声が発せられる。
『日本に生きる愚かな人間共に告ぐ──。我はこれより国家転覆を行う──。』
ビルのモニターには1人の男が話している姿が映っていた。
『まず手始めに、我は内閣総理大臣を殺害する。』
その言葉の直後、拘束された現内閣総理大臣がモニターに映される。
『実行は明日の日出、首相官邸で行う。もし防ぎたければ防いでみろ......まあ、全て無駄だがな...。』
男がそう言うと、モニターは真っ黒になった。
しばらく無言が続く。
一番に口を開いたのは香角先生だった。
「どうする...?行くか?」
僕は鍛錬で気絶した日、謎の空間で謎の男に話されたことを思い出す。
これから日本では全国を巻き込む重大な事件が起こる。まずはそれを解決するため行動するんだ。奴らを...奴をどうしても止めなければ...。
もし、あの男が言っていた『重大な事件』がこのことだったら...。
それに『奴』についても少し気になる...。
「行こう。」
僕は沈黙を破って言う。
「こんな事件、とてもじゃないけど放っておけない。それは人としても...『廃神』としても──!」
僕がそう言うと、皆は同意するように頷く。
どうやらみんな、気持ちは同じようだ。
「さあ...行こう.........首相官邸に──‼︎」
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