第27話 【迷イ子】
「ふう...やっと着いたな......」
僕と豊野は今、渋谷駅にいる。
ただ...
「迷ったな...」
「迷いましたね...」
僕らは迷子になった。
横浜で香角先生たちと一緒に電車に乗れたところまではよかった...いや、むしろそこからが全てダメだった。
電車は当然、横浜を出て渋谷駅の方へ向かった。
事の発端は一つ目の停車駅に停まった時だった。
扉が開いた瞬間、多くの人が車両の中に流れ込んできたのだ。
二つ目以降の駅でも人々は容赦なく入ってきた。
何気に僕の人生で初めての満員電車だった。
僕が心の隅で満員電車を楽しんでいると、電車は渋谷駅に着く。
その瞬間、人々は今までとは逆に一気にホームに流れ出る。
ここで僕らは見事、別れてしまう。
運良く豊野とは合流できたが、先生たちを探しているうちに僕らは道に迷った。
こうして僕は今、バッキバキに割れた地図板とにらめっこして唸っている。
「もう思い切って地上に出ちゃおうよ。」
「まあ...それも...ダメではないんだけど...。」
豊野に指摘されて近くの地上へ続く階段を見る。
そこから降りてくる人は皆、疲れているようにフラフラと歩いている。
きっと地上ではハロウィンの日みたいに人が詰まっているのだろう。
そんなところに行けば、僕と豊野が離れ離れになる確率は...ほぼ100%だ。
「やっぱり、もう少し駅の構内を周ろう。きっと香角先生たちも同じこと考えてるだろうし...」
その時
「逃げろおおおぉぉぉーーー‼︎‼︎」
という声と共に、夥しい数の人が階段から押し寄せるように降りてくる。
地上で何かあったのか...?
いや...今はそれより...
「避けるぞ...」
「えっ...?」
僕は人々がこちらに到達する前に、フリゾンで僕と豊野の体を包み、忍者のように天井に張りつかせる。
僕らの下を多くの人間が走り抜けていく。
数分するとやっと人がいなくなった。
「さて...」
僕は着地しながら言う。
「地上へ上がろう。今なら人もいないはずだ。」
「うん、そうだね。」
僕たちは急いで8番口の階段を駆け上がる。
地上に出るとその景色には見覚えがあった。
よくテレビや動画で見た景色だ。
いわゆるハチ公前ってやつだ。
「よしっ...!なんか偶然に偶然が重なったけど安全に地上に出ることはでき......」
僕がそこまで言ったところで、けたたましい獣の鳴き声がスクランブル交差点の方からした。
僕はすぐに交差点を見る。
そこには交差点を余裕で塞げるほどの巨体の獣と、鎧を着た女性がいた。
女性は剣を構えて、獣を鋭い目つきで睨んでいる。
見た感じだと、仲良しってわけではなさそうだ。
僕は豊野に
「ちょっと待ってて。」
と言い、交差点の中心に向かって歩き出す。
歩きながらフリゾンローブと仮面を身につけて、獣のステータスを確認する。
今回の相手の属性は......闇か...。
名前は「二魂獣」っていうらしい...。
...まあ、そんなの関係ないけど。
僕は獣の目の前に着くと、右手を前に出す。
「どんな獣も...我が前では無力──‼︎」
次の瞬間、僕の右手から放たれたフリゾンの斬撃が獣を縦に、真っ二つにした。
僕は何事もなかったかのように獣を背にして、その場を立ち去ろうとする。
すると、鎧を着た女性が
「あっ...あなたの名前は...。」
と、尋ねてくる。
ここまでは想定済みだ。
「我が名は、常立一重...この世界の『廃神』になる男だ。」
僕は事前に用意していた言葉で返答する。
空は夕日で真っ赤に染まっていた。
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