第23話 【アナログ時計ノ秒針ノ音】
他に誰も乗っていない天上線に乗りながら僕らはMyパネルで情報収集を行う。
日本に隠された3冊の書物...それらに関する情報をひたすらネットで検索する。
Myパネルがネットに繋がると判明したのはついさっきだ。
それまで不安定な回線のスマホを使っていたから効率が悪かった。
「...にしても、こいつの通信速度めっちゃ速いな...。」
僕は検索しながらそう呟く。
「そもそもこれも魔力で動いてるのかな...?」
豊野がさらなる疑問をあげる。
そこで僕はふとあることを思い出す。
「...あれ?そういえば...豊野の弟って魔力に詳しいんじゃなかったっけ?弟に聞けば何かわかるんじゃない?」
「それが最近、弟と連絡取れなくなっちゃって...」
「それって大丈夫なのか...?」
「大丈夫...たぶん......前にもこういうことはよくあったし...きっと研究に没頭してるんだよ...。」
「そうか......まあ...そんなもんか...。」
そんなことを話しているともう目的地の横浜駅だ。
駅に着くと僕と豊野は電車を降り、改札を出て階段で地上まで上がる。
地上には誰もいなかった。
タクシーや車なども道に停まっているだけで乗客はいない。
「まるで全人類丸ごと神隠しにあったみたいだな...。」
「でもニュースを見る限りはこの世に人はいるよね?」
「そうだな...それを踏まえると、横浜にいた人々は自然とどこかに集まっていった...そしてその場所は......」
「東京...」
「やっぱりヒトって集団行動しないと落ち着かない生き物なんだな...。」
まあ、何かあった時に助け合えるのは良いかもしれない。
ただ問題は...
「争いが勃発しかねない...。」
僕の思考を見透かしたかのような豊野の言葉に僕は驚いた。
それでも僕はできるだけ平然を装って
「僕の家に寄った後は東京へ向かうか...。」
と言う。
そうやって歩き続けること5分、周りのビルとさほど高さの変わらない高層マンションの前に着く。
「えっ!?常立君ってここに住んでるの!?」
「えっ...そうだけど...そんなに驚く?」
「いや...なんだか家賃高そうだなって...。」
「ああ...まぁ...確かに......安くは...ない...かな?」
フロントのオートロックを通過した僕らはエレベーターで30階まで上がる。
部屋の扉の前まで行き、カードキーで扉のロックを解除する。
扉を引き、中へ入る。
「1ヶ月ぶりの帰宅だ...。」
僕はそう言いながら靴を脱いで中へと入っていく。
「豊野も遠慮なく入って良いぞ。」
と玄関で立っている豊野に声をかけると、彼女も僕の方に来る。
僕は指をパチンッと鳴らしてライトの代わりとして空中に炎を出現させる。
「そういえば常立君の親は?海外にいるの?」
彼女が思いついたように聞いてきた。
僕は静かに...でも心配をかけないように告げる。
「僕の親は.........ころされた」
「えっ......」
豊野は当然驚いた。
僕は構わず箪笥を漁りながら語り始める。
あれは3年くらい前のこと...僕がまだ中1の頃だった。
その日はちょうど僕の親の結婚記念日で2人は有給を取って昼間から出かけていた。
僕はその日は学校で、帰ってきてからも勉強をしていた。
2人は20時には帰ってくると言っていたので、僕はそれほど気にしていなかった。
20時になるまでは...。
20時10分くらいになってようやく僕は異変を感じ始めた。
あの元教員で真面目な2人がなんの連絡もなく時間を破るのはおかしい...と。
しかし、僕には2人を捜しにいける勇気と経験を持っていなかった。
結局、23時まで待ち続けていた。
そして突然、家電が鳴る。
僕が受話器を取ると、警察と思わしき人が出て僕に容赦なく現実を突きつける。
「君の両親が路地裏で遺体として見つかった...」...と。
しばらくその言葉の意味が理解できなかった。
というより、理解したくなかったのかもしれない...。
僕は無言で受話器を戻し、部屋の隅で泣き続けた。
翌日、家に警察が来て僕を保護してくれた。
警察によると2人は何者かによって殺害されたそうだ。
そういうこともあって、僕の引き取り人は見つからなかった。
常人は皆、殺人事件なんかに関わりたくないのである。
結局、僕は13歳という若さで独り暮らしをすることになった。
僕はそこまでの流れを淡々と語る。
豊野は終始ずっと無言だ。
それでも僕はまだ語り続ける。
「ただ、僕には法的な親がどうしても必要だった...たとえ僕がそれを望んでいなくともね...。」
そして、僕は真実を告げる。
「そこで名乗り出た男...それが豊野 重流...」
「それって...」
「そう...豊野二千花......君の実の父親だ。」
僕は豊野に真実を告げた。
部屋の中はアナログ時計の秒針の音のみで満たされた。
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