第21話 【『廃神』マデノ道ノリ】
校庭の中心へと着く。
目の前にはすでに杖を構えた豊野が立っている。
彼女は僕の方へ杖を向け、
「爆発」
と唱える。
それと同時に僕は彼女を囲むように回りながら、螺旋状のリボンのようにフリゾンを縦に展開する。
僕が元いた場所では小規模な爆発が起こっていた。
僕は展開したフリゾンで壁走りし、高さを稼ぐ。
この1ヶ月の鍛練で戦闘において高さを稼ぐことのメリットを多く学んだ。
特に撃ち合いでは高度差が生死を大きく分ける。
僕はフリゾンの上端に辿り着くとその勢いを殺さず、豊野のいる方向へ跳ぶ。
僕は当然、ローブで空中に浮く。
それでも...上を取られたとしても、彼女は絶望することなくこちらに杖を向ける。
「氷柱......雷閃光...」
彼女は淡々と詠唱する。
なるほど...氷柱で雷閃光の威力を上げるのか。
彼女からは色々学ぶこともある。
ただ、こんな大胆な発想は久々だ。
「まあ、その方が面白いからいいんだけど...」
僕は先ほど螺旋状のリボンのように展開したフリゾンを回収する。
そして次にフリゾンで弾を作る。
出来るだけ小さく、高密度に...。
まだ最小の弾丸とは言えないが出来るだけ縮めることはできた。
むしろこの高度差なら、これくらいの大きさの方が適しているだろう。
豊野が撃ってきた属性攻撃に僕はこの弾を衝突させる。
弾は衝突した属性を帯びて、豊野の方へとまっすぐ向かう。
勝った。
そう確信した。
だが...
「乱気流」
豊野がそう唱えた瞬間、僕は地面に向かって加速し出す。
「なるほどね...魔力に直接干渉...か。」
厄介だ。
フリゾンの質量操作を潰された...。
まあ、ローブを維持できてるのは不幸中の幸い...かな。
僕は地面に着地する。
「やっぱり豊野はすごいな...たった1ヶ月でこんなに伸びるなんて...。」
「常立のおかげだよ...。ここまで強くなれたのも...全部。」
「そうかな...でもやっぱり負けたくないな...男として......いや...『廃神』になる者として...」
「つまり、ここからは常立の本気が見れるってこと?」
「そういうことだ...」
「なら私も全力をぶつける!」
彼女のその言葉と共に、彼女の体内の魔力の流れが倍以上の速さになったのを感じた。
やはり彼女は急激に成長した。
...ただ......それは僕も同じ...。
僕は仮面を外す。
そして体内に流れている魔力を何の手も加えずに一気に体外に放出する。
豊野が僕に向けて様々な属性の攻撃を撃つ。
だが、その攻撃はどれも僕に近づいた瞬間に消滅してしまう...。
ヒトは魔力で魔法を使う時にどうしてもロスが生まれる。
その原因はヒトが体内で魔力を練るという工程にある。
その工程とロスは切っても切れなかった。
だから魔力ロスは仕方のないものだと思っていた...。
ちょうど1週間前までの僕はね...。
だが、僕は気づいてしまった。
体内で魔力を練る必要などない...と。
体外で魔力を練れば良い...と。
僕が体外に何の手も加えず放出した魔力の質は、豊野が魔法として放出した魔力の質を遥かに上回る。
だから彼女の攻撃は僕の周囲で消滅する。
完璧だ...。
だがこれではまだ終わらない。
むしろここからが本番だ。
僕は周囲に放出した魔力を操り、自身の体に溶け込ませる。
なるべく丁寧に...かつ自然に...。
魔力は僕に溶け、僕は魔力に溶ける...。
僕と魔力との境界が薄れていく...。
僕と魔力は一体となる。
僕は.........魔力に成る。
あの日...魔力を手に入れた3月10日から絶えず感じていた魔力の無限の可能性...。
それと同時に僕は人間の限界も感じていた。
人間の限界を克服し、魔力の無限の可能性を手に入れる...僕にとってそれが魔力世界の極地であり、それを求め続けた。
そしてその末に僕が得た『こたえ』...。
僕自身が魔力に成る!
なんともアホらしい発想だ。
...だが、不可能ではない......少なくとも僕には...。
僕は魔力に成る。
豊野は驚いた顔をしている。
思考が追いついていないようだ。
それでも僕は構わず、トドメのフェーズに移る。
僕は一切の工程を飛ばして彼女の背後を取る。
背後を取った僕は魔力化を解除する。
そして僕はフリゾンで剣を作り、左手でそれを持つ。
剣を振り上げる。
僕が生み出した最強の術。
それは...魔力化して飛ばした工程の分のエネルギーを後の攻撃で放出する...というもの。
この時放出されるエネルギーは通常の攻撃の数京倍...。
まさに最強と呼ぶのに相応しい術である。
「チェックメイトだ...。」
僕はそう言い勝ち誇った顔で剣を振り下ろす......がその瞬間、僕の意識がプツンッと途切れる。
どうやら僕の体力が持たなかったようだ...。
そりゃぁずっと魔力を放出し続けていたらこうなるのは当然だ...。
『廃神』までの道のりはまだまだ長そうだ......。
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