第20話 【命ノ恩人】
静寂と闇に包まれた横浜の街を歩きながら考える。
なぜこんなに街が廃れたのか...生徒たちは無事なのだろうか...。
...あと、春アニメはもう始まってしまったのだろうか...。
どこかで嫌な予感を感じつつも、僕はただひたすら歩き続ける。
特にこれと言った目的地は...ない。
でも、日の出で周囲が明るくなるまでは、歩き続けないと心が落ち着かない。
「とにかく、今は光源を探そう......うげっ...」
何かにつまづき派手に転ぶ。
僕はつまづいた場所あたりに目を凝らす。
何かが動く。
「来る――!」
僕は、いつの間にか左腰につけられていた鞘から剣を抜く。
両手で剣を持ち、それを前に構える。
剣がわずかな白い光を帯びる。
相手の顔が見える。
目の前に立っている相手はミイラのような魔物だった。
そいつからは何本もの触角が激しく伸びている。
どうやら、いきなり起こされて不機嫌なようだ。
「また眠らせてあげるから...じっとしていろよ......」
僕はそう言い、剣に意識を集中させる。
すると、剣が帯びる光が白から赤に変わった。
あれ...これってもしかして...。
そう思った僕は、剣に力を込めるようにさらに意識を集中させる。
剣の帯びる赤い光がより強くなる。
「いいぞ......もっと...もっともっと...もっとだ...!」
僕は半分ふざけながら剣に力を込める。
剣から溢れる光は周囲の建物だけでなく、遥か上空の雲まで照らしている。
「さあ...喰らうがいい!」
そう言いながら剣を振りかぶった瞬間、僕の視界が歪んだ。
僕は思わずしゃがみ込んでしまう。
貧血と近い症状が僕を襲う。
原因は...調子に乗って剣に力を込めすぎたことだろう...。
視線を上げると、目の前のミイラがここぞとばかりに触角を伸ばし、こちらに近寄ってくる。
ヤバイ...殺される...。
「こんなんで...終わりかよ......。」
僕は目を瞑る......。
その瞬間...
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一筋の斬撃がミイラを縦に一刀両断する。
真っ二つになったミイラは綺麗に左右に倒れ、灰のようになって消えた。
視線をミイラから奥に移すと西洋風の鎧を着た女性が立っていた。
女性はこちらに来ると、
「大丈夫ですか?今照らしますからね......光」
と言う。
すると周囲が昼間のように明るくなる。
その明るさに思わず目を瞑ってしまう。
明るさに目が慣れ、閉じていた目を開けると...
「...あれ?活田さん?」
「えっ!?...香角さん?」
僕を救ってくれた女性は僕と同期の教師...活田 佳奈四だった。
そしてこの瞬間を見計らっていたかのように2人の高校生が歩いてくる。
どちらも天ヶ原高校の制服を着ている。
一目で彼らが2年次生であることもわかる。
天ヶ原高校の制服は白を基調としているが、識別部の色は学年によって異なる。
彼らの着ている制服の識別部は2年次生を示す青色だった。
僕はついに2人の顔を見る。
驚いた...と言うのは失礼だが、実際僕は言葉が出なくなるほど驚いた。
というよりも安堵感と表現した方が良いかもしれない。
僕が抱いた不安が一つ解消された。
「生きていたんだな...」
「当たり前じゃないですか...。」
1人の少年...宇地原 三令が応える。
「香角先生を見つけるまでは絶対に死なないって決めたんですから...。」
1人の少女...須田 智三がそう付け加える。
「そうか...本当に......よかった...。」
僕がそう言いしばらく沈黙が続いた後、活田が
「ここに居座り続けるのは危険です。とりあえず、近くの駅に向かいましょう!」
と提案する。
誰も反対しなかった。
なぜならここにいる人にとって彼女は命の恩人なのだから...。
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