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この世界の廃神様 第一神実  作者: ZAB
序章 〜《一変》〜
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第2話 【陰】

 学校に着き、席に座る。

 教室を一周、見渡す。

 

 「まだ来てないか...」


 と、息を吐くように声に出す。

 

 「誰が来てないって?」

 

 一瞬背筋が凍る。

 だが後ろを振り向くと気が抜けた。

 後ろには不思議そうな顔をした女...豊野(トヨノ) 二千花(ニチカ)がいた。

 

 「どうしたの?そんな驚いた顔して...」

 「いや...なんでもない...。」

 

 僕はそっけなく応える。

 豊野は

 

 「そっか...なんか...ごめんね」

 

 と言って、自分の席へ向かおうとする。

 僕は豊野には聞こえない程度のため息をつく。

 

 「あっ...そうだ」


 と何かを思い出したように豊野が言う。

 

 「部長が今日も部活やるってさ...。」

 「......分かった...今日も講堂でやるだろ?」


 と一応聞く。

 

 「うんそうだよ...じゃあまたあとでね!」


 と手を振りながら離れていく。

 僕の心の中が少しだけ温まる。

 表ではそっけない態度をとりながら僕は彼女との会話を自身の心を癒すために利用している。

 ただ...それで心の中の傷が完全に癒えることはない。

 これはあくまで、()()()()だ。

 

 「原因を絶たなければ...」


 と小声で呟く。

 

 「「原因...ねぇ...。」」

 

 また背筋が凍る...だが今度はさっきとは比べ物にならないほどの悪寒を感じる。

 後ろを振り向くと悪い意味で僕の予感が的中した。

 僕の背後には気持ち悪いほど不敵な笑みを浮かべた2人の男女がいた...。

 

 「よぉ久しぶり...()()()()w」

 

 気味の悪い声で男...伊岐(イキ) 七斗(ナナト)が言う。

 

 「ちょっと顔暗くなってない?まあ陰立だから当たり前かw」

 嘲るような声で女...伊美(イミ) 七津木(ナツキ)が言う。

 彼女は続けて


 「宿題はちゃんとしてきてくれたんだろうね?陰立クン」

 

 僕は「......これ...」と言いながらカバンから2人分の宿題を取り出す。

 伊岐は「やるじゃねぇかw」と言いながら僕の手から宿題を奪い取るように受け取る。

 

 「よかったなぁ。これで無能だった陰立クンにも一つ取り柄ができた。」と伊岐が、

 

 「感謝しなさいよ!」と伊美が言う。

 

 その後、2人は満足したようにそれぞれの席につく。

 まもなく朝のSHR(ショートホームルーム)が始まる...。



 朝のSHR後、僕は真っ先にトイレに向かい洋式トイレに向かって胃の中のものを全部吐き出した。

 今朝、朝食を抜いてきたからか()()()あまり吐かずに済んだ。

 進学校といってもイジメはごく稀に起こる。

 その典型例が僕だ。

 普通の学校であればイジメを止めようと教師が動く。

 だが、この学校は普通じゃない。

 偏差値がそこそこ高く、しかも国が多くの税金を使って建てた進学校でイジメなんかが起こっていると世間が知ればどうなるか。

 当然、世間から国への信頼はズタボロだ。

 それを避けるため教師はおろか国でさえ僕へのイジメを隠蔽している。

 教師という公務員を含め国は、国民の信頼のためなら1人の犠牲を(いと)わないクソの集まりだ。

 法律という兵器がなければ僕はイジメっ子を含め皆殺しにしていたであろう。

 それくらい僕の心はズタズタに切り刻まれ、頭の中は『憂鬱』という言葉で埋め尽くされているのだ。

 僕は吐き出した吐瀉物(としゃぶつ)を流し、水道で口をゆすいだ。


 「もうすぐ一限目か...」


 僕はもう、イジメっ子らがつけたあだ名通り『陰』のように生きていくしかない...。

 たとえその選択が、自分を余計に追い詰めるとしても...。

もし、「面白い!」と感じて頂けたら『いいね』や『⭐︎』などで応援してもらえるとありがたいです‼︎

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