第14話 【魔力ノ正シイ使イ方】
何かが降ってくる。
それひとつでの力はとても小さい。
だがそれは集まることで、時に大きな力となる。
僕は火に包まれながらニヤける。
「まだ見捨てられてなかったんだな...」
空からは無数の雨が降り注ぎ、僕を包んでいる火を抑え込んだ。
僕は即座に魔力で回復しようとする。
だが、それを阻止するようにオークがまた火の矢を僕に向けて放つ。
僕の脳はその速さに追いつけなかった。
脳はね...。
矢が僕に近づいた瞬間、僕の目の前に漆黒の壁が現れ、矢を止めた。
「なるほど...全て...理解した...。」
そう言いながら僕は目の前の壁を右手から吸収し、代わりに右手から生み出した漆黒のローブを見に纏う。
「魔力のコントロールは脳ではなく体で行うんだ。」
それはそうだ。
手や足から魔力を出すのに脳で魔力操作を行なっていてはロスが大きすぎる。
気づけば僕の身体の火傷はすっかり治っている。
きっと回復魔法を無意識に使ったのだろう。
「いいぞ...そうだ...これでいい!」
僕は悪役のように笑いながらローブのフードを脱ぐ。
それから340分の1秒後、僕はオークの背後を取っていた。
僕は音速でオークとの距離を詰めた。
オークは咄嗟に背中に携えている斧を右手で持ち、僕の首に目掛けてその斧を振り切ろうとする。
だが...
「無駄だ...」
オークが振った斧は先ほどの火の矢と同じように、漆黒の壁によってあっさり止められる。
オークは僕に恐れて、後ろへ一歩一歩、退いていく。
僕は右手から漆黒の剣を生み出し、左手でそれを持つ。
その瞬間、オークは僕に背を向けて逃げ出す。
「させないよ...」
僕はオークの足を凍らせる。
当然オークは転び、動けなくなる。
僕はオークに近づき
「ありがとう。君は...いい練習台になったよ...。」
と言う。
僕は持っている剣を逆手に持ち、倒れているオークの心臓を突き刺す。
そして、オークに刺さっている剣を右手に持ち替えた次の瞬間、オークの体から無数の水の柱が突き出る。
これももちろん僕の魔法だ。
オークは動かなくなり、やがて砂のような粒子になった。
僕はオークに刺さっていた剣を吸収する。
空を見上げる。
僕を救った雨はもう止んでいる。
「さてと...次は何しようかな...」
高校の裏手にある公園のブランコの手すりに寄りかかりながら僕は次にすることを考えていた。
「あっ、そうだ」
と言いながら、僕は右手から漆黒の物質を生み出す。
「こいつについて色々調べよう...っとその前に名前決めるか...。」
ずっとこの漆黒の物質を「こいつ」と言い続けるのは面倒くさい。
その単語のみでこれとわかるものを...
「そうだな...自由自在のFreeからとってフリゾンにでもするか。」
名前を決めた僕は、その漆黒の物質...フリゾンの性質を調べた。
形を色々変えてみたり、地面や空に発射してみたり、いろんな属性魔法をぶつけてみたり、舐めてみたり...と調べられることはできるだけ調べた。
その結果フリゾンには主に...
1.硬度操作
2.質量操作
3.体積操作
4.電気抵抗操作
5.魔力伝導
...の5つが行えると判明した。
特に質量操作に関しては負の質量にも変化させられるというバケモノ性能らしい...。
ちなみに舐めた結果、味はメチャクチャ苦かった。
「ふう...色々調べてたらすっかり夕方だ...。」
僕はそう言いながらフードを被る。
行くあてもなく公園から出ようとすると、魔力獲得後初めての人間を見つける。
それにあれは...天ヶ原高等学校の制服だ。
それも女子生徒!
「第一村人はっけ〜〜〜ん」
僕はそう言いながら女子生徒に近づく。
街灯の下で彼女の顔が照らされる。
僕と彼女の目が合う。
あれ...この顔...このフォルム...どこかでみたことあるような...。
次の瞬間、彼女は突然逃げるように走り出す。
変質者だと思われたのだろうか...?
せっかくの第一村人なので僕は彼女を追いかけることにした。
もちろん魔力は使わずにね...
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