第1話 【憂鬱】
憂鬱。
これほど自分にピッタリな言葉はないだろう。
自分に合いすぎてそれ以外の言葉を認めたくなくなるほどピッタリだ。
そんなことを考えていると不思議と『憂鬱』という語に好意を持つようになった。
その行為も含めて僕...常立 一重は存在自体が『憂鬱』なのだ。
朝の通勤・通学の時間にしては恐ろしいほど静かな電車内で僕はこうやって自虐する。
それだけが通学中...いや、一日の唯一の楽しみだ。
「次は...天ヶ原...天ヶ原です」と、電車の案内が聞こえる。
「そろそろか...」と、電車のブレーキ音でかき消されるほどの小さな声量でつぶやく。
「憂鬱だ...。」
電車は完全に静止し、僕の声だけが響く。
国立天ヶ原高等学校
偏差値70越えのいわゆる進学校ってやつだ。
横浜の街中にあるこの高校の最寄駅である天ヶ原駅は横浜駅から国営地下鉄の天上線一本で行ける。
しかし、建設後にバスの方が早いということが発覚してからは生徒のほとんどが使わなくなった。
それでも僕がこの地下鉄を利用する理由...もちろん静かな方がいいというのもある。
だが、もう一つ...僕は自分の身を守らなければならない。
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