魔王の世界
暴力と争いにまみれた世界。
生き物はたやすく死にゆき、裏切りが満ちていた。
そんな世界を支配するのは魔王だった。
かつては平和だったが、魔王が支配してからは混沌と化していた。
立ち向かう者達は、いた。
平和を守ろうとしたもの。
平和をとりもどそうとしたもの達が。
しかしそのことごとく、勇者や救世主達はやぶれさり、正義が死んでしまった。
だから毎日、多くの生命たちは互いを虐げ虐げられ、傷つけ気付付けられ、嘆きの声を発していた。
魔王は、それらを戯れに踏みにじっては、気ままに不幸をばらまいていた。
しかし、どんな事でも永遠には続かない。
別の世界から、勇者や救世主なるものがやってきたからだ。
魔王は、何度も討伐されかけた。
反抗する者達の存在に辟易した魔王は、別の世界も支配していった。
しかし、世界は多い。
まだ見ぬ世界、知らない世界から、理不尽な環境に憤った正義の使者が、魔王に反抗してきたのだった。
他の世界を攻めれば留守の間に、魔王の世界が奪われそうとする。
魔王の世界にこもって守れば、他の世界からの正義の使者たちが準備し、団結して襲い掛かる。
そのうちに魔王は悟り、支配の頂点から退いた。
思い知ったからだ。
どうやっても、絶対に、全てを、完璧に、世界を支配する事などできないのだと。