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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
73/79

72.これまでの全てを、ありったけの執念に変えて


「今日という日を待ちわびていました。年末の大一番有馬記念!あなたの夢、私の夢は叶うのか。それでは出馬表を見てみましょう 」


1.ナイトオルフェンズ 夜風 29.6倍 (5人気)

2.フリードギア 田中 21.4倍 (4人気)

3.シンジスカイブルー 林13.1倍(2人気)

4.クイーン 勝又 39倍 (9人気)

5.ジエンド 中野 73.9倍 (10人気)

6.テサグリノイト 赤鬼 131.4倍 (12人気)

7.スカイフェロー 武下 209.9倍 (13人気)

8.マストオブウィン 山田 36.4倍 (8人気)

9.カイザーマウント ニヨン 35.4倍(7人気)

10.エースオブガリバー 川口 92倍 (11人気)

11.コガネスターロード渡辺 15.1倍 (3人気)

12.マケナイデ鹿場 73.9倍(10人気)

13.デストラクション 山本 30.1倍(6人気)

14.レイワカエサル 的山 1.2倍 (1人気)


「野村さん、やはりレイワカエサルの人気は絶大ですね!」


「もちろんです。彼は日本競馬界の殿堂ですからね。そして今日、1つの伝説に幕が降りる。そんな彼を1.2倍で抑えたシンジやコガネ、その他多数の英傑を褒めるべきでしょう」


「確かにそうですね。あの日本ダービー、スプリングスターを負かしてからと言うもの国内では無敗! GI9勝! まさにパーフェクトホース! そんな彼が引退するというのですから、既に会場は熱気の渦に包まれています! 最後の最後に、彼に土をつける猛者は現れるのでしょうか!」


――


「なぁ和義! 今日のレース、やばくねーか!」


競馬が趣味の若者、和義はドリンクを手に持ちながら叫んだ。しかし、隣にいる親友の翔太は動じない。彼は、ひたすらに落ち着いてパドックを眺めている。


「そうだな。今日は国内最高峰のレース、各部門のトップが集まる有馬記念。それに加えて……レイワカエサルの引退レースでもあるんだから」


翔太がそう言うと、和義は怪訝そうな顔を見せた。


「レイワカエサルか……あまりいいイメージはないな」


「ああ……全ての中長距離レースを荒らしに荒らしまくっているからな。それのせいで、競馬の多様性が消えちまってるって声も少なくねぇ。有力馬がマイルやダートに行ったりな」


「それに、馬主のエクリプスグループもいい噂を聞かんしな。そんな鬱屈とした状況の中、颯爽と現れたあの3頭は、まさに奇跡だな」


「光の三勇士……リュウオー、コガネ、そしてシンジ。あいつらに賭けるしか……ねぇよな」


「もちろんよ! 俺は今日1日、アイツらのことしか考えねぇ! リュウオーはやられちまったけど……その敵討ちを今日こそ頼むぞ!」


翔太の熱い声援は、大観衆の渦の中へと消えていった。


――


「これが……有馬記念」


暗い通路を抜け、パドックへと出た俺は驚愕した。怒号のように鳴り響く声援、叫び、発狂。いから日本ダービーと言えどもなし得ない光景。心が躍らされる。


「シンジ……久しぶりだな。俺だ、コガネだ」


俺の前を歩いていたコガネが振り返らず話しかけた。なるほど、俺らに対面は必要ないか。その通りだ。


「今日……どっちが勝っても恨みっこなしだ。だが1つ、これだけは約束してくれ」


コガネは覇気や熱気が混ざりあった、低く重くも熱かりし声でこう言った。


「レイワカエサル、ぶっ潰すぞ」


いいね。燃えてくる。さっきのがあったから、余計にね。だったら、返すのはこれだけっしょ。


「言われなくても、そうするさ」


それで会話は終わった。俺ら勝負師にはこれで十分だった。


「騎手、厩務員の方は誘導お願いしまーす!」


スタッフの合図で、競走馬たちがゾロゾロと動き出す。遂に、始まる。決戦が。


――


ターフに移動した俺は軽い準備運動を終え、ゲートに収まった。


「シンジさん、俺、ちょっとワクワクしてるんですよ。勝つか負けるかの瀬戸際、生きるか死ぬかの真っ向勝負。不謹慎かもしれませんが……笑いまで起きてきます」


鞍上、俺の相棒が笑いながら言った。もしこれを普通の奴が言ったら「おかしな事を言うなぁ」と思うかもしれない。でも、林――速く走る事への探求者が言えば、話は別だ。


「俺もだよ。まだ見ぬ俺に出会える気がしてな」


「ふふ……やっぱり俺ら、似ていますね。あ、ファンファーレですよ。せっかくなんで聴きましょう」


林の呼び掛けで、俺は楽隊の方を向く。


「.•♬」


金管や木管、様々な楽器のコントラストが熱気の戦場に響き渡った。特別なレースでしか演奏されないその音色は、ここにいる全ての生物たちの魂を熱くする。


「.•♬……」


ファンファーレが鳴り止んだ。それと同時に、スターターが台の上で、ゲートボタンの構えを取った。俺は瞬時に姿勢を低くし、スタートの一瞬に全集中する。


絶対勝つ。それだけを強く胸に刻んで――


バコッ


ゲートの開く音と同時に、運命の戦いの火蓋が遂に落とされた。

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