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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
はじまりのかぜ
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7.新しい舞台

夏が過ぎつつある今日この頃、以下がお過ごしでしょうか。私としては秋のGI戦線が楽しみで仕方ありません。個人的にはタイトルホルダーに菊花賞勝ってもらいたいなーと思っているんですが、どうなる事やら…。

「ここが、俺の憧れた土地……数々の名馬を産んできた地……」


トラックから降りると、そこは別世界だった。芝が広がるターフ、沢山の調教師。そして、これから多くの人の夢を乗せるだろう、競走馬たちが群雄割拠していた。そして、俺はようやく本当の競走馬としてのスタートラインを踏んだことを実感した。


「どうだ、なんか感じるものはあるか?」


懐かしい声がした。振り向くと、そこにはおっちゃんがいた。


「おいおい、心配になって来ちまったのかよ」


俺は笑いながら答えた。


「いやいや、んなわけねぇだろ。ちょいと親友に会いに来たんだけだよ。ま、俺も一応お前の馬主だしな」


以前聞いた話によると、俺の調教師はおっちゃんの親友らしい。今までの実績はかなりのものだと聞いた。これは楽しみだ。


おっちゃんと他愛のない会話をしていると、毛皮のコートに帽子とサングラスをした、ガタイのいい若い男がやってきた。


「久しいな、まこっちゃん。そちらが例のシンジ産駒かい?」


シブい声が耳に届いた。やはりこの男がおっちゃんの親友、そして俺の担当だろう。サングラスを取った顔は、歳を感じさせないほど若かった。


「ああ、剛ちゃん。これが今までの競馬を超えた、新世代のサラブレッドだ」


おっちゃんは自信満々に答えた。恥ずかしいからやめてくれ。


「なるほど、お前がそこまで言うなんて、よっぽどの馬なんだな」


「そうよ! うちでやった併せ馬を見てみろよ!」


そう言うとおっちゃんは自分のスマホを調教師に見せた。表情が2転3転した。調教師は唖然としながらレースを見る。綺麗な音を立てながら、手に持っていたサングラスを地に落とした。しかし、それを気にせずにレースを見る。見続ける。


レースが終わった時、そこに居たのは若々しい顔が10年くらい老けた調教師だった。だが、すぐに顔に血色が戻り、眉と口角が上がり、嬉しそうな兄ちゃんになった。


「間違いない、これは時代を変える馬だ」


短い声でそう呟いた。数行にも満たないこの言葉が、これがどれだけ大きな事かを物語っていた。


幾秒かの沈黙が続いた後、おっちゃんが話した。


「それによ! こいつにはさらに凄い能力があるんだぜ!」


おっちゃんの笑顔に溢れた顔と、調教師の化け物を見るような目が対比になっていて、少し笑ってしまった。それを調教師は見逃さなかった。


「なあ、こいつ、今笑って……」


調教師の声が震えていた。こうなればもう俺から言った方がいいな。


「ああ、自分青空慎二って言います。今日からお願いします」


その場のの時が止まった。おっちゃんが慌ててフォローに入る。


「まあ、最初はこんなもんよ。俺も驚いたからな。別に剛ちゃんだけじゃないわ」


調教師は数秒何か呟いた後、半ば諦めのような形で飲み込んだ。


「あ、あまりに驚いちまったもんだから、名前言ってなかったな。私の名前は東海剛(とうかいつよし)ていう者だ。よろしく」


俺は軽く頭を下げる。とりあえず、友好的な関係を築けそうで安心した。


「そうだ! こうしちゃ居られない! 今まで計画は全て白紙だ!こいつの個性を消しちゃいけねぇ! ここで最善を尽くさねぇのは、次世代の英雄を消すのと同じだ! 気張れよ俺!」


そういうと剛さんは屋内へと消えていった。俺たちは呆然と立ち尽くしていた。


「なぁ、剛さんって昔からあんなん?」


「ああ、熱い男ではあるんだけどな」


北風が体を巻いた。俺とおっちゃんは2人揃って体を震わせた。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。誤字脱字、感想等ありましたら、軽い気持ちでどうぞよろしくお願いします。

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