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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
65/79

64.third crown

テストとかで投稿遅れました。すまんで……

「おいおい……どうしてそんな事が分かるんだ?」


俺は疑問符を立てながら言った。パケットはそれをスパッと答える。


「俺とコガネスターロードが並んだ時あるじゃん? その時、声が聞こえたんだよ。でも、俺とシンジとで話す時のような言葉は発していなかった。……そうだな、シンジと東海さんが話している時のような発音だったかな」


「なるほど、ありがとう」


俺は固い顔で感謝を言った。それに呼応したパケットの笑顔を見た後、急いで林と調教師へ報告に行った。




「そうか……それは大変な事になったな……」


「それならあのおかしな挙動も説明がつきますね。シンジさんと同じ「力の解放」が出来ているのなら、あの動きが出来てもおかしくありません」


2人は頭を抱えた。今まで楽勝だと思われていた勝負に、いきなり暗雲が立ち込めてきたからだ。


この勝負に負けることは許されない。クラシックレースの最終戦「菊花賞」。これに勝つことが出来れば、9頭目の三冠馬として歴史に名を刻むことが出来る。そして、俺の父にして伝説のダービー馬「シンジストライプ」が成し遂げられなかった悲願の達成にもなる。そして……


おっちゃんを助けるためには、落とすことの出来ないレースだ。


「黄色信号が点滅しようと、突っ込むだけだぜ。ここまで来て路線変更なんて、もってのほかだ」


俺の言葉に2人は頷く。心持ちは、皆同じだった。


「当たり前じゃないですか! いくらスターロードが優れた力を持っていようと、最後に勝つのはシンジさん以外いませんよ!」


「能力的なところでシンジが負ける心配はほとんどしなくていいだろう。今までの特訓、そして力の解放。これらがある今、シンジの敵はほとんどない。自信を持って、自分の走りをしてこい! それで負けたら、誰も勝てねぇよ」


2人はニカッと笑って俺の方を向いた。その笑顔は明るく、暖かく、そして、優しかった。


「2人とも……ありがとうな」


俺たちは拳を交わす。全ては勝利の為――






「どんよりとした雲の下、ここに18頭の優駿達が集まりました。果たして、誰が栄光を手にするのか。ラインナップを見てみましょう」


1 セトウチナルト109.9倍(12人気)御手洗

2ディアマンテ 82.5倍(10人気)川口

3シンジスカイブルー1.1倍(1人気)林

4ニホンスターマン116倍(13人気)赤鬼

5スペシャルインパクト96.9倍(11人気)竹内

6コガネスターロード10.1倍(2人気)渡辺

7ラストオブアイ64.2倍(8人気)竹

8ダストストライク51.6倍(7人気)ターン

9アースガルド23.0倍(4人気)葛林

10サンドオブドライ34.9倍(5人気)赤坂

11スーパーパケット12.5倍(3人気)

12アナタガスキナノ140.6倍(15人気)ニヨン

13サンキューロバート76.6倍(9人気)ロバート

14アイシテルノヒビキ42.2倍(6人気)

15ブラッドマン125倍(14人気)白戸

16パレスナンジャ204倍(16人気)岡田


「野村さん、ついにこの時がやって来ましたね。「三冠馬」という偉大な記録に王手をかけたシンジスカイブルー! この馬はやはり外せないでしょう」


「もちろんですとも。この会場にいる誰しもが、シンジの勝利を祈っていると言っても過言ではありません。前走でも、あわや10何馬身つけようかというくらいのぶっちぎりで勝利していますし、シンジが負けるビジョンが見えないんですよね」


「なるほど。ですが、そんな1強状態に水を差すかのように参戦してきた期待の名馬、コガネスターロードがいますよ」


「彼も凄い馬ですよ。神戸新聞杯での差し切りは見事でした。ですが、やはりシンジの大逃げには届かないはずです。あの走りは、次元が違うという一言でしか表せませんからね」


「そうですね、やはりシンジスカイブルーは強いです。しかし、まだレースは始まっていません。どんな馬でも勝ち筋は絶対にあります。期待して出走を待ちましょう!」




「うんうん、問題は無さそうですね」


上で林が嬉しそうに言った。脚は軽く、心持ちも穏やか。至って平常で、体調は良好だ。


「ただ1つ気になるのが……」


「コガネスターロードですか」


その言葉に頷く。このレースにおいて、最も恐れるべきなのは間違いなくコガネだ。あの追い込み……決して普通の馬が出していいスピードじゃなかった。やはりパケットが言ったように「俺と同じ存在」なのか?


「……目立った動きは無し、か」


数十秒間眺めていたが、怪しい動きは見られなかった。ふつーにアップをしている。


「安心して下さいよ」


林が穏やかな声で言った。俺は注意をそちらに向ける。


「3000mのペース配分をミスらず、シンジさんの本当の力を出せれば、負けるはずはありません。俺が言うんだから、安心してくださいよ」


「そうだよ2号!」


林との会話に、2号が割り込んできた。今の俺とは違い、随分と能天気だ。


「今までの特訓の成果が出れば、勝てないレースなんてない! 明るく行こうよ、明るく!」


2号は清々しいほどの笑顔を向けた。……そうだな、こんぐらい楽な気持ちでもいいのかもな。少し力が入りすぎていたかもしれない。反省だ。


「さ、そろそろゲートへ行きますよ!」


林にそう言われ、ゲートの方へ脚を進める。


「……これでよしっと」


俺達はゲートの中に収まった。このレース前の緊張感は、いつになっても慣れない。でも、それは緊張感だけでなくて――ワクワクでもある。


このレース、負ける訳にはいかないんだ。


「さぁ、2025菊花賞、今ゲートが――」


「開かれました!」

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