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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
63/79

62.朝日杯セントライト記念

「はぁ、はぁ、まさかこれ程シンジさんが強くなっていたなんて……!」


 俺からかなり遅れて、アースガルドはゴールした。その差は10馬身ほどだったろうか。とてつもない大差だったことは確実だった。


「シンジさん……これは、凄いですよ!凄すぎます!この調子なら菊花賞なんて楽勝じゃないですか!」


 林が俺の頭をバシバシ叩きながら言った。少し鬱陶しかったが、俺はスルーして喜んだ。林の喜びようも納得する、えげつない速さだったからな。


「うん...これは俺が見てきたどのシンジをも圧倒するスピードだ……まさに「伝説級」と言っても差し支えない」


 調教師もそう俺を称えた。長年馬を見てきた調教師が言うのだから間違いない。


「よぉーし、じゃあまずは、セントライト記念をチャチャッと勝っちゃいますか!」


「「おう!」」


 俺たち3人は拳を合わせた。全てはレースの勝利の為に。


――



「 さぁ、今年もこの季節がやって来ました。トライアルレース、朝日杯セントライト記念。菊花賞出場への切符を賭けて、若き優駿たちが走ります。ここで、出馬表を確認してみましょう」


 番 馬名 騎手

 1サカガミアトム 13.9倍(5人気)栄

 2ニホンスターマン 8.1倍(3人気)赤鬼

 3アースガルド6.8倍(2人気)葛林

 4シンジスカイブルー1.4倍(1人気)林

 5ファストトラベル12.5倍(4人気)川口

 6キボクラ60.6倍(9人気)芝家

 7レッドドラゲナイ130.9倍(11人気)野澤

 8ケンタヨミテロ215.3倍(12人気)竜島

 9セトウチナルト26.5倍(6人気)御手洗

 10ハオウノイチゲキ34.8倍(7人気)バッハ

 11ピースフルバスター98.8倍(10人気)小林

 12ブルーノート47.6倍(8人気)マーズ


「野村さん、これを見る限りだと、シンジスカイブルー1強のように見えるのですが……」


「ええ、その認識であっていますよ。唯一対抗出来そうだと思うのは、2、3番人気の2頭、アースガルドとニホンスターマンでしょう。アースガルドは夏の条件戦などを勝ち上がり、見事OP馬となった期待の新星です。ニホンスターマンはダービー6着とプリンシパルS勝利の実績があります。彼らが唯一、シンジに土をつけられる可能性がある馬です。まぁ、今回は素直にシンジの勝ちでしょう」


「いえいえ、まだ分かりませんよ!……おや、そろそろ出走時間のようです。各馬順番に、ゲートへ入ろうとしている所です。」


――


「ふぅ、いくらGIIと言えども、やっぱり観客は多いなぁ。」


 俺は観客席を見渡しながら言った。そう、今日は待ちに待ったセントライト記念の日だ。あの日から今日まで、凄まじいスピードで時間が進んでいった。それだけ、レースに出たい気持ちが強かったのだろう。まぁ、今回は楽勝だな。リュウオーは天皇賞路線に行ったし、パケットは神戸新聞杯の出走となっている。正直言って、相手がいない。


「シンジさん、今回はかるーく行きましょう。ラストとコーナーだけ本気で走って、後は普通に流す。このダメージが菊へいかないよう、ゆったりと」


「そりゃいいや。レースは賢くサボらないとな。乗ったぜ」


 林は小さく微笑んだ。そして、俺達は周りの馬と同じように、ゲートに入った。


「さぁ、各馬ゲート収まりました。もうすぐ、菊へと続く1戦が始まります」


 スターターが台に立ち、旗を振る。それと同時に、重厚感のあるファンファーレが流れ始めた。この瞬間は、いついかなる時でも緊張してしまう。




 ファンファーレが鳴り終わった。俺は閉ざされたゲートを睨む。スタートダッシュを完璧に行うため、その一点に意識を集中させていた。


「ゲートが開きました!」


 ガゴンという大きな音を立て、ゲートが開いた。俺は一目散に飛び出す。いつもの様に、大逃げを打つためだ。


「さぁシンジは今日も逃げる!早くも2番手ニホンスターマンから4馬身ほどのリードを取りました。その後ろをアースガルドが追走。かなり縦長の展開となりました」


 よし、いいぞ。第1コーナーへと入る前から、かなりのリードを取れた。この調子なら、楽勝だ。


 第1、第2コーナーを過ぎてからも、その展開は変わらない。後ろの足音はかなり遠くから聞こえているし、スタミナが減っている気配も、身体に要らない力が入っている感じもしない。実践でも、スプリングスターさんとの特訓が活きている。


「さぁ、第2コーナーも過ぎて、向正面に入ってきます。以前状況は変わらず。一体どの馬が先に仕掛けるのか」


 向正面に差し掛かる。ここは最後の追いに入る前の休憩地点。観客のスタンドからは遠いものの、落ち着いて歓声を聞けるいい所だ。だが、今日はあいにく外回り。これだけ離れてちゃ、声なんか聞こえねぇ。俺はレースに集中し直し、前を向いた。




「先頭シンジスカイブルー、第3コーナーを過ぎしました。ここから最終コーナーへと向かっていきます。既に後方の馬は仕掛け始めています。そして……ついに2番人気アースガルドが仕掛けました!2番手ニホンスターマンを追い越し、シンジスカイブルーへどんどん近づいていきます。ここから追いつくことはできるのか!」


「シンジさん!このコーナーが勝負どころですよ!ここを決められれば、圧勝は確実です!」


「へへ、わかってらぁ!」


 カーブの曲線が目に入る。俺はゆっくりと息を入れ、加速の準備をした。


「今だ!」


 俺は自分の身体を内によじらせ、半ば無理やりにインコースを取った。そして、最短距離を通りながら、俺は脚をフル回転させる。


「出ました!シンジお得意のイン攻め!これが出たこいつはもう止められない!後続を更に引き離して行くー!」


 加速した脚を保ちながら、俺は最後の直線へと向かう。いつもならキツい直線も、2号の力があれば――


「行くよ、1号!」


 楽勝だ!


「シンジスカイブルー、加速!ここからどれだけ差を伸ばせるか!、後続の馬はもはや2着争い!シンジの独走だ!」


 俺の脚は、自分でも信じられないスピードで回転していた。いつもなら、走っている途中に少しづつ減速していくはずだ。だが、この力は落ちない。逆に、「加速し続ける」


「シンジスカイブルー!全く脚色が衰えません!中山の坂もなんのその!速すぎる!この馬に勝てるやつが、どこにいるのだろうか!」


 後ろからはもう何も聞こえない。ただ、スタンドからの声援が、頭の中で響くだけだった。


「強すぎる!この夏を乗り越えて、更に力を増した!最強!シンジスカイブルー!菊花賞の第1候補だ!」


 俺は持ったまま、ゴールの先へとたどり着いた。


「圧勝!シンジスカイブルー!後続を12馬身離しての大圧勝!化け物だ!葦毛の怪物再臨!菊花賞が楽しみです!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] わかりやすい [気になる点] 馬の名前の癖が強い [一言] 次回も楽しみにしています
2022/10/05 08:23 森田まさのすけ
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