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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
はじまりのかぜ
6/79

6.決意

またまた解説……

GI

数あるレースの中でも、最も格の高いレース。賞金は多くで1億を超え、世間的な知名度も高い。

マイラー

1400〜1800といった、比較的短い距離を得意とする馬。有名どころだと、タイキシャトル、モーリス、アグネスデジタルなどが挙げられる。なお、マイラーだからといって他の距離が一切走れないということも無い(タイキシャトルは1200、モーリスやデジタルは2000のGIを勝っている)


差し

レース序盤では後ろから始まり、最後にペースアップをして抜かす作戦


逃げ

最初から先頭に立つ作戦

「よ、よっしゃぁぁぁ!」


俺は歓喜に湧いた。パケットに勝てた事もそうだが、何より努力の成果が出たことがほんとに嬉しかった。こんな体験、人生で2度あるかないかだ。だけど、これからこんな体験を沢山できるはずだ!楽しみだぜ。


「驚いた……大逃げしてから差すなんて。なかなかこんな馬いねぇぜ」


おっちゃんは満面の笑みを浮かべて俺に言った。そんな顔されると、こっちまで嬉しくなる。


「ああ、何しろ俺は、唯一無二の馬だからな!」


おっちゃんと笑いあっていると、厩務員が肝を抜かれたような顔をして来た。


「ま、誠さん。このタイム見てくださいよ……」


「ん、このレースのタイムか?……ってなんじゃこりゃあ!?」


俺はおっちゃんの声に引き込まれるようにストップウォッチを覗き込んでみた。そこには




1:35:31




の数字が刻まれていた。


「おかしい、慎二が幾ら唯一無二の存在だとしても、この歳でGIレベルのタイムはやりすぎだろ……」


まるで幽霊でも見たかのような顔に、思わず笑ってしまった。だが、俺も流石にこのタイムには驚いた。これは最強マイラーも狙えるか……?


「さぁ、またトレーニングの再開だ!」


「おう!」


俺はいつものようにトレーニングコースに向かった。だが、皆俺に近寄らなかった。そりゃそうだろう。慕っているパケットが負けたのだから。唯一、ナイトが近づいてきた。


「やっぱり勝ってくれたね。僕はずっっっと信じてたけど」


優しい笑顔だ。もっと闘志を燃やさないと、お前は勝てないぞ。


「ご気遣い結構。だが、俺はお前にも期待しているんだ。俺はお前とG1で一緒に1位争いしてるレースがしたい。それなりゃこんなんで燻ってらんないだろ」


ナイトは一瞬困惑した顔を見せたが、その後、すぐにいつもはみせない鋭い目へと変わった。


「うん、そうだな。俺も――頑張らないとな」


ん、いつものナイトっぽくないな。けど、いつもより覇気が感じられる。


「おい、口調が変わって……」


「あ、いや、なんでもないよ。それよりそろそろトレセンに行くんでしょ。鍛えた方がいいんじゃない?」


「あ、そうだった。じゃあな」


俺はナイトの元を去ってトレーニングに向かった。だけど、今日のナイト、何かが違ったような……


「俺はもう、絶対に負けない」



そんなこんなで時は過ぎ、トレセンに行く時が来た。パケットはあれから1度も合わなかった。ナイトも全く話さなくなった。あれからも、トレーニングはいつも通り行った。かなり体が絞れた気がする。出発の日、おっちゃんが来てくれた。


「なぁ、俺はもう近くにはいてやれない。けど、俺は絶対毎回レースを見に行く!頻繁に連絡も取る!だから、だから……」


おっちゃんの目からは涙がこぼれた。そんな関わってねぇだろ。けど、おれまでなきそうになっちまうじゃねえか。


「おいおい、忘れるわけねぇだろ。お前は、顔が濃いからな」


俺は笑いながら言った。


「はは、それなら大丈夫だ。じゃ!楽しんでこいよ!」


おっちゃんも心配だろうに。これからの生活のこと、色々なこと。それでも、俺のために涙を流さないように、心配させないようにしたかったんだな。けどもうバレバレだよ。けどさ、お前の思い、伝わったぜ。俺は、お前を救う。絶対に負けねぇからな!


「じゃ、行ってくるわ!」


涙流れる、暖かい春のうらら感じられる昼過ぎのことだった。

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