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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
53/79

53.次の景色を見よ

更新が遅れました…すいません…

学生に休みなどない…

ぴよぴよ


「うう……おはよう、世界」


 俺は東海厩舎名物、小鳥のさえずりで目を覚ました。脚が重い。やはり、身体に少しの疲労が見られる。そりゃそうだろう。自分の限界を超えるための調教を、2週間ぶっ続けでやっていたのだから。


 俺はふと自分の肉体に目をやった。ボロボロの蹄鉄、傷んだ毛、傷だらけの脚。それは本当に酷いものだった。ありきたりなヤンキー漫画でもあり得ないほどのボロ雑巾のような身体。普通ならこれをみっともないと思うだろう。だが、俺はそれが逆に誇らしかった。この傷の量が俺の努力の証のような感じがした。


「おはようございます、シンジさん。そしておめでとう」


 前から林の声がした。俺は無意識に顔を上げる。その顔は少しばかりにやけていた。その少しの加減が普段のクールさと絶妙なバランスで混じり合い、なんとも言えないような滑稽さを出していた。これがあの「イケメンエリートジョッキー」の顔だとは思えない。ファンにはみせられねぇな……


「さて……これで取りあえず超絶大特訓が終了したわけですが、シンジさんの理論だとこれで声の主に会うことができるんですよね?」


 林はスッといつもの顔に戻っていった。俺はそれに頷く。


「そうですか、それは良かったです。では、早速試してみるとしましょう。それはそうと……もしもこの前のような事が起きてしまったら大変ですからね……」


 林はそう言って、後ろに手招きした。すると、白衣を着た男女の集団が林の後ろへやってきた。


「おいおい、こいつら、誰だよ!」


俺は困惑した。決してトレセン所属の獣医では無さそうだし、会ったこともない。本当に謎の存在だ。


「彼らは日本最高レベルの獣医です。どんな不足の事態が起きようとも、彼らなら何とかしてくれるでしょう」


 林は淡々と語った。なるほど、そういうことか。そりゃあありがてぇ。俺は一瞬そう思った。だが、この作戦には少し欠陥があった。


「でもよぉ、こいつら俺が喋れるって知らなかった訳だろ?知ったら、研究目的で拉致られそうじゃね?」


「安心してください。そのような事はありえません」


「なんで?」


「札束ビンタしましたから」


 えぇ……そういや、林は名家の生まれで、親の総資産がとんでもないエリートだって言ってたな。おっそろし……金持ちって。



――



「じゃあ、早速やってみましょうか。シンジさん、お願いします」


 林の問いかけに、俺は頷いた。そして、ゆっくりと目を閉じた。本当は、やり方なんてわからない。でも、なんとなくできる気がする。だって、俺はあの特訓を乗り越えたんだから。


 目を閉じていると、様々な情景が浮かんできた。俺が牧場にいたときから、今に至るまで。様々な場面が目に浮かんだ。俺はそれをゆっくりと噛みしめる。……こう考えてみると、俺もたくさんの死闘を戦ってきたんだな。今の俺は、自分の脚でたって、歩くことができる。はじめは仲間の手助けもあったかもしれないけど、今こうやって生きているのは、間違いなく俺の力だ。


 でも、この力は決して俺だけじゃ辿り着けなかった境地。みんながいたからこれた場所。俺の人生、とんでもない方向に行っちまったけど、これでいいのかもしれないなぁ……


 みんな、ありがとう


 「くっ!」


 突然、風のようなものが吹き始め、俺のたてがみをたなびかせた。そして、一瞬気を失った。気を取り戻した時、俺は知らない場所にいた。困惑していると、一筋の光が俺の目に届いた。俺は辺りを見回す。薄暗く、天井は曲線を描き、俺の前には光源と思われる光の塊が待ち構えている。どうやら、ここはトンネルのような所だった。俺は光源―出口を求めて駆け出した。




「やけに早い再開だねぇ。もう一人のボク。」


「あぁ、予定よりも1ヶ月はぇぇぜ。もう一人の俺。」


光の先には、目に雲がかかっていること以外はなにも変わらない、もう一人のシンジスカイブルーがいた。

今日もう一本行きます

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