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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
48/79

48.帰還、葦毛の雄王

失踪してしまってました。

待ってくれていた人達、申し訳ございませんでした。

「遂に来たか、この北海道を離れる日が……」


あれから、大きな出来事は起こらなかった。スプリングスターさんとの特訓以外、何もやることがなかったため、ずっと芝でゴロゴロしていた。もちろん、牧場見学者へのファンサービスは欠かさない。あくまで、俺が“元人間”だとバレない程度にだけどな。


例の出来事から、俺の担当はまったく別の厩務員になった。駆は自分の夢を叶えるために奔走している。俺といるときでも、難しそうな本を読んだり、ネットでいろんな事を検索したりなど、勉強している時が増えた。あいつは本気で夢を目指している―それは耀さんにもしっかり伝わっていたようだ。多少寂しくなったが、俺はあいつの夢を応援してやりたい。だから、しょうがなかった。


そんなこんなで時は過ぎ、遂に放牧最終日になった。これからまた長い時間乗り物に揺られ、再びあの場所に帰る。日の光を受け、光を放ちながら燃え続ける、あの決戦の地へ。俺はワクワクしていた。だが、それよりも先にお世話になった人々に感謝をしに行かなければ……


「いや〜シンジくん、歳を取ると1日が早くてね。つい昨日君が来たみたいだよ」


「はは……」


おいおい大丈夫かよ、耀さん。調教師もたまにはこっちに来ればいいのに……


「どうだった、ここ日高ホースパークは。君が十分に休むことが出来たのなら幸いだが……」


「ええ、そりゃあもう!ここでの体験は僕にとって最高の天国でしたよ。スプリングスターさんにも会えましたし、非常に大きな影響を与えてくれたと思います!」


それを聞いて、耀さんはまるで子供のように笑った。歳によって白く変わった髪―刻まれたシワ―それらを考えても、若々しい印象を持っている。


「なになに、いいってことよ!それによ、こっちもお前に感謝せんと行けないんだぜ」


「?」


はて、俺は何か耀さん達にしてあげられた事はあっただろうか……俺がそんな事を考えていると、耀さんは事務所の奥に手招きをした。


「あ、もしかして」


彼の手招きによって現れたのは、見覚えのある男だった。だが、その顔は俺の知っている時から幾分か変わっていた。そう、決意を固めた顔へと。


「お久しぶりッス、シンジさん!俺ッスよ、夢野駆です!」


「おーん……お前、でっかくなったなぁ……」


彼が変わったのは顔だけではない、体もでっかくなっていた。少し痩せ気味だった身体には筋肉がつき、タンクトップがはち切れんばかりに伸びている。あくまで無駄な脂肪はついていない。


「そうか、お前……本気の夢を見つけられたんだな。よかった」


気がつくと、俺は無意識のうちに言葉を出していた。あの時で、彼が覚悟を決めていたのは知っていた。だが、まさかここまでとは……いい意味で裏切られたね。だからこそ、称賛の声が漏れた。正真正銘、本心のね。


「ええ!もしシンジさんがピンチになったり、傷つきそうになった時は、俺が必ずそっちへ行きます!それまで、たっくさん勉強して、ぜったい試験に受かってみせます。そうして、俺はシンジさんと並んで、同じ舞台で戦うんです!仲間―戦友として!」


その言葉に、嘘偽りなんてなかった。俺は深く息を吸い込み、こう高らかに宣言した。


「ああ!俺は何時でも待ってるぜ。例え何年かかろうと、俺はお前が来るまで“最強”として立ち続ける!だから、心配すんな!」


俺達は再びニッと笑い、拳を重ね合った。そう、この瞬間、彼の新しい物語が幕を開けた。


今までの生活ではなく、本気の“夢”を賭けての挑戦。それはまだまだ始まったばかり。だが、彼の心の中にある“熱き思いの胎動”は止まることを知らない。彼が前を見続ける限り、永遠に。


――



「さてと、一通り準備は出来たな。」


俺は馬運車の中で耀さんの声を聞いた。そう、もうすぐ俺はここを旅立つ。しょうがねぇな、出会いがあれば、必ず別れの時は来ちまうんだぜ。


「しっかし、寂しくなるねぇ」 


この特徴的な穏やかな声は!目をそちらへ移すと、やはりあの方、スプリングスターさんがいた。


「こいつがどうしてもって聞かなくてな。飛び入り参加だ。」


耀さんが笑いながら答えた。こんな嬉しいサプライズはねぇぜ!


「シンジくん、君があそこで勝ってしまった以上、君は勝ち続けなければならない。君は、僕みたいになる器じゃない。もっと伝説を―星を手にするオトコだ!だから、頑張れ!負けるな!」


「「「負けるな!シンジスカイブルー!」」」


俺を世話してくれた奴らだけじゃねぇ。牧場メンバー総出で、俺のために集まってくれたんだ……まずいね、こういうのは涙腺に……


だけど、ここまで応援されちゃ、期待に応えるしかねぇよな!俺は決意を込めてこう言った。


「ああ、任せとけ!俺は、俺達は、誰にも止めらんねぇぞぉぉぉぉ!」

今回もご閲覧ありがとうございました。

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