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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
クライマックス 勝利の鼓動
45/79

45.完成!コレが新たな走法だ!

よし!今日もオケだな

「う~ん。なんで体力が減っていたのに以前より速く走れたんだぁ?」 


牧場に戻ってきた俺は、芝生に寝転がりながらそんな事を考えていた。普通に考えて、スタミナがあればあるほど速度は速くできる。身体が温まっていたから?コースが違ったから?いや、それは違うだろう。いつものトレセンでも坂路は怪我をしないため、身体を温めてから走っている。あそこにあったコースも、トレセンとほぼ変わらない。つまり、「本質的な原因は自分にある」ということだ。


人によってはこれに苦悩する輩もいるだろう。自分に原因があるのに、それがわからない―このように、自分を責めてしまうこともある。だが、逆に考えるんだ。「自分に原因がある分、努力で直せる」と。その思いを胸に、身体を休めながら考え続ける。












ちゅんちゅん  ちゅんちゅん


「……朝か」


小鳥のさえずりで目を覚ます。どうやら疲れてそのまま眠っていたらしい。こういう時、人間とのコミュニケーションがとれてると便利なんだよなぁ。なぜかって?芝生で寝落ちできるからさ!朝のまとまらない頭を無理矢理動かし、俺は芝から身体を起こした。


「ふふ、よく眠れたかい?」


隣から声が聞こえる。目をやると、そこにはやはり彼―スプリングスターさんがいた。俺は軽く挨拶をして、昨日と同じくあの坂路目指して走り出した。


――



「ふんふん、やはり君は速いねぇ。それに、タイムも昨日より速くなっているよ」


今日もスタミナが減った状態での走りだったが、確実に速くなっていた。脚が急激にゴツくなったわけでもないし……俺はこの雲に隠れた答えを探すため、脳をフル回転させる。


それは何日も、何日も続いた。相変わらずタイムは高い水準で安定していた。それが、俺には不服だった。普通は、意味もなくタイムが速くなったら喜ぶはずだろう。だけど、俺は違う。そこに至る過程が大切だと信じているからだ。それに…………ここで原因を見つけられなきゃ、今まで俺の特訓に付き合ってくれたいろんな奴らに申し訳がたたない。別に、それが特段悪い事という事では無い。けど……何か……俺達の日々を裏切るような気がして……気持ちが悪いんだ。


いくつもの考えが頭をよぎり、消えていく。こんな時、一日に何回も走れたらいいのにと思う。だけど、あくまで俺の本分は休憩だ。度を超えたハードトレーニングは許されない。心にむず痒いものを抱えながら、3週間が過ぎた。


「よし、今日も行こうか」


きっかけはいつも突然に。俺は今日も脳を回転させながら林道を走っていた。スプリングスターさんは俺の事を気遣って、俺の後ろを無言で追いかけてくれている。ごくごく普通の、いつもの光景だった。


「やっぱりシンジくんの走りはいいねぇ。身体から無駄な力が抜けているみたいだよ」


「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あ!」


その瞬間、八木…………じゃなかった。俺に電流走る。本当に、ただの世間話だったのかもしれない。でも、それで十分だった。今までの状況が点と点で繋がっていく。体力がない―普段と違う、のほほんとした環境―それらが俺の中でタクティクスを構成させ、心の霧を吹き飛ばしていった。その時、俺の喉が無意識に震え、言葉を叫ばせた。


「そうかッ!脱力だ!力が抜けた事で筋肉の硬直が解かれ、身体がスムーズに動いたんだ!」


俺の心は完全に暴れ狂っていた。目もイッていたかもしれない。でも、それでよかった。原因が見つかった―その事実がたまらなく嬉しかったからだ。スプリングスターさんは前のように笑みを浮かべた。だが、あの発狂はしなかった。その顔は、弟子の成長への喜びが30%。叫びたい気持ち10%。残りの60は、驚き。これに一ヶ月足らずで気づけたセンス・経験・努力。これに驚いていた。





軽快なステップで坂路へとたどり着いた俺は、ウキウキしながらスタートの姿勢をとった。その目に、もう曇りはない。


「よし……脱力を意識して……力の入れるところのみに意識をして……」


走りはとても快適だった。スタミナをそこまで消費せずとも速く走れる。こんな経験初めてだった。そのままスキップでもするかの如く、あっという間にゴールした。


「あ……やっぱりそうか。そうだったのか!俺は遂に……スプリングスターさんの技能を手にしたんだ!うおっしゃぁぁぁぁ!」


俺は再び歓喜の雄叫びをあげる。俺と彼、二人しかいないこの山で、喜びを爆発させた。


「さすが、といったところか。やはり君は……シンジストライプさんに似ている……」


彼のそんな声は、風の中に消えていった。

今回もご閲覧ありがとうございました。

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