44.特訓の記録 一日目
連日投稿できずに本当に申し訳ないだす…
「さてと……今日は輸送とレースで疲れてるだれうから、明日からトレーニングは行おうか。それでいいかな?」
「そうですね……明日からよろしくおねがいします」
その日はそれだけでスプリングスターさんとの会話を終えた。それから夜までくつろいだ後、馬房で夜を迎えた。
「よし!今日もしっかりいるな!じゃ、早速行こうか」
朝、俺は起きて馬房から出た。すぐに俺の芝生へと向かうと、そこには既にスプリングスターさんが待ってくれていた。俺は遅れたことを謝り、スプリングスターさんの指示を聞いた。
「いいかい。君の馬主さんは絶対、ここで君には消耗してほしくないはずだ。だから、ここでは坂路をたった一本―これだけでおしまいだ!」
「えっ!」
俺は驚きのあまり声が出た。理由は簡単だ。今まで俺は調教師によって鬼のようなトレーニングを積まされていたから、ここまで緩いのは考えられなかった。それだけだ。スプリングスターさんの話に再度耳を傾ける。
「あったりまえさ。僕は君をボロボロにしたい訳じゃないからね。けど、一本だからこそ見えてくるものもあるんだよ。それは随時指示していくけどね」
「さ、耀に話はしてあるから、トレーニングコースに向かおうか。場所は……この芝を抜けて、仔馬たちの拠点を超えた先にあるんだが……見えるかな?」
俺は目を細めてスプリングスターさんが言う方向を見た。そこはかろうじて見ることができるような場所だったが、明らかに5キロはある。ま、まさかな。もっと近い所にもう一箇所あるんだろ……俺は声を震わせながらスプリングスターさんに尋ねた。
「え、すいません。まさか……あそこにある……コースなんて言わないですよ……ね?」
「ん?あそこだよ」
オイオイオイオイ。この馬はなにやばいことをさも当たり前のように言っているんだ。おかしいだろ……これは。
「なに、行きも帰りも練習になると考えれば屁でもないだろ。さ、行こーぜ!」
そう言うとスプリングスターさんは駆け出した。
「ちょ、チョットマッテクダサイヨォ〜」
おいおい、こんな調子で大丈夫か?
――
「お、着いたな」
「ひ、ひぃ〜。死ぬぅっ〜。ペースが速すぎですよスプリングスターさんー!」
俺は不満をあらわにしたが、どうやら彼には伝わっていないらしい。あっけらかんとした表情でこちらを見ている。これが菊花賞馬のスタミナ……
「じゃ、僕は君の後ろを通っていくから。いつでもスタートしていいよ〜」
いや早いてぇ!もうちょい休憩させてくれよぉ!思わずこんな声が出そうになったが、必死に抑えた。俺はあくまで教えてもらっている立場―文句を言うことは許されない。そんな事を胸に、坂路を進み始めた。
「おっ!速いねぇ!さすがダービー馬、といったところか。」
中盤に差し掛かった所で、俺はさらに本気を出した。だが、それに彼は食いついてくる。この馬、引退したんじゃなかったのか?
――
「……うん!これで終わりだね」
俺はなんとか坂路一本を終わらせた。思ったより早く終わって、少し拍子抜けした。俺はその事をスプリングスターさんに伝えると、彼は不敵な笑みを浮かべた。だが、その不敵な笑みは……
「君は……本当に……」
「?」
「素っっっっばぁぁぁるぅぅぅぅあぁぁぁすぅぃぃぃぃぃぃ!」
「!」
大笑いへと変わった。その時の彼の顔の喜び具合と来たら……天才は変わっているという言葉は本当だったんだな……
「本当はね!3日目ぐらいに伝えようと思っていたんだが……それを自力で気づくのは素晴らしい!このまま行けば……僕の伝えたい事もわかるんじゃないかな」
「さ!終わったらさっさと帰るぞ!僕も仕事があるんだ!」
彼は慌ただしく走り出した。スプリングスターさんに褒められたことは嬉しい。でも、なんで速くなったんだろう……俺は炎天下のロードをそんな事を考えながら走っていた。
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