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葦毛の雄王〜転生の優駿達〜  作者: 大城 時雨
Gray Horse Ranaway
27/79

27.目標選定

これで…ラストォォォォォ!

「今日はすこぶる調子がいいですね! やはり記者から開放されたからですか!」


俺はダートコースを気持ちよく走っていた。リハビリも込めて、ということで始めたダートだが、そんな心配はいらなかった。逆に、以前よりも調子よく走れている。今までの出来事が全てなかったかのように、楽しくコースを駆けていた。



――



「本っ当に申し訳ない! もっと確認していればこんなことにはならなかったはずなのに!」


翌日、おっちゃんが大量の人参を乗せて謝りに来た。そんなおっちゃんを責める人は誰もいなかった。逆に俺は喜んだ。こんだけ沢山の人参が食べれるんだから。ストレスによって、ただでさえ小さい体がもっと弱々しくなっていた俺の体も、久しぶりの大量人参で、一気に以前の輝きを取り戻した。


「やっぱり、人気者も考えものだな。それは皆それぞれ味わっていることだろう」


俺が人参を食っている最中、気になる声が聞こえてきた。どうやらおっちゃん、林、調教師の3人で会話しているらしい。林と調教師が人気者ってのは分かるけど、おっちゃんは本当にそうなのか?俺は気になって少し食べる手を止めた。


「おお、どうしたんだ」


じっと3人を見ていた俺を不思議そうに思ったのか、おっちゃんが俺に声をかけてきた。もし本当に晴空牧場が人気だったら失礼だ。俺は適当に濁して返した。


「いや、何話してんのかなーって」


そう俺が言うと、おっちゃんはニヤリと笑う。また何か面白いこと考えてやがんな。


「今俺達は、お前がこれから1年間に出るレースの選定をしていたんだ。題して!"シンジスカイブルーのサクセスストーリー兼晴空牧場借金返済ルート"!」


なるほど、そういう事か。出るレースが予め分かってるなら、俺も調教で意識しやすい。てか、日程の名前長いな。もうちょいコンパクトに纏めりゃいいのに。


「とりあえず、今のシンジの獲得賞金が約1億。その中で、馬主に入るのは90%。つまり、シンジが今まで俺にくれた金は9000万円ってこった。そこから逆算して、皐月賞、日本ダービー、菊花賞、有馬記念。こんな感じの王道ローテでどうだ?」


「いいと思うぜ。これなら全然体に負担もかからないし、次のレースまでの調教時間は確保出来る。かなり理にかなったローテだな」


そういうと、3人は笑顔になった。いくらサポーターが話し合おうと、走る俺が了承しなければ、やはり後ろめたい気持ちがあったからだろう。


「じゃ、俺は忙しいからそろそろ行くな! 絶対勝てよー!」


おっちゃんは嵐のように去っていった。あの歳からは考えられないフットワークの軽さに、俺達若いヤツらは唖然としていた。だが、さすがに長い付き合いなだけあって、調教師は素直に笑っていた。これが慣れってやつか。


「さーてと。ここから約1ヶ月、何をするか気になるよな?」


朝っぱらから元気なことで。この爆音でいっつも目を覚まされる。林が発言する。


「ま、妥当な所でいけばスピードかパワー特訓ですよね。あいつらとの決戦は、競り合いが予想される。そこで少しでも有利に立つために、このふたつの強化が妥当かと」


この流れも慣れたもんだ。そういえば、俺がここに来てからもう1年経つんだもんな。時というものは本当に恐ろしい。


「ま、そこら辺だろうな。けど、もうただの坂路も併せも飽きただろう。そこで! 俺が特別に用意させてもらったのが、コレ!」


そういうと、深夜や早朝によくやってる通販のノリで、銀色にサビが混じった鉄の塊を取り出した。これは形的に蹄鉄か。


「これは普通の蹄鉄の約2倍の重さがありまーす。これをつけた状態で、パケットとナイトに坂路で勝利したら、晴れて芝のコースでの実践となります!」


そう調教師が言うと、その後ろから2頭が出てきた。


「い、いくらなんでも無茶苦茶ですよ! 普通の条件で2人に俺が無敗だからって、こりゃあんまりですよ!」


「そうですね。シンジさんの言う通りです。それはパケットさんとナイトさんの力を過小評価しすぎなのでは」


俺達2人が揃って反論すると、調教師は悲しそうな顔をし、2人に告げた。


「そうかー、せっかく"シンジストライプ"が特訓に使っていた蹄鉄を持ってきたのになー!」


「!!」


「し・か・も・林が目標としていて、寮にポスターまで貼ってあるぐらいの大騎手。G1勝利数トップの稲尾一志さんから裏ルートで聞き出した特訓法なのになー!」


「!!」


2人の目が星のようにキラリと光る。目標に少しでも近づけるなら……2人の思惑は同じだった。そして、2人は同時に


「「やらせてくだせい! 兄貴ィ!」」


といった。いくら頭が悪くても、目標を前にした男は冷静さを失う。そこを調教師に突かれたのだ。内心でほくそ笑む策士と裏腹に、猛ダッシュで駆けていく若者たち。そんな彼らを見て、調教師はこう思った。


「こいつら、チョロすぎね?」


今回もご閲覧ありがとうございます。

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