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鳥のいる風景 11

 獣道は少しばかり間の抜けたように一際大きな倒木の周りで細い支線に分かれている。一体なぜこのような場所が生まれたのか、理解に苦しみながらその倒木に近づいていった。煙草に火をつけようと腰を上げた俺の目の前に動くものが映ったように感じた。ゆっくりとゆっくりとその丸いものは藪の下を移動していく。俺は思わず胸のポケットから小型のカメラを取り出してその物体が出てくるのを待った。

 奴だ。心臓の鼓動が早くなってシャッターの上に載せた指が汗ですぺるのがわかる。突然自分の概念が破壊されたようだ、頭の中まで少しづつ曇ってきた。しかし、そんなことはお構い無しに鳥は静かに藪の中で地面を穿り返している。俺は息を殺してできるだけ物音を消すために細い獣道を足場を選びながら進んだ。そして、笹を掻き分けて大きな木の根元の少し開けたところまで来て観察を続けた。こいつをどうにかしなければならない、すべての不安や憤りが急に人差し指に凝縮されたように感じた。俺の指はシャッターを切っていた。

 ストロボの光が草叢を黄色く染める。

 急に鳥は走り出した。決して早くない。大またで歩けばすぐにだって追いつくことができる。しかし、俺はあえて捕まえようともせずにその鳥の走っていく方向についていった。茶色い羽はこの土地ではかなり役に立つ。うっかりすると木の根や泥と勘違いして見失ってしまうこともたびたびあった。しかし慌てているのか、ばたばたと打ち鳴らす羽の音で俺は自分の間違いに気づきすぐ追跡を再開することができた。

 森はだんだん暗く、深くなっていく。鳥は相変わらず無様な逃避行を続けている。それはまるで逃げるというよりも俺をどこかに案内しているようにも見える。もし、彼に急に立ち止まってじっとしているという能があれば、とうに俺は彼を見失っていただろう。

 鳥の逃げる速度が遅くなってきた。俺は時々立ち止まっては逃げていく鳥の姿をカメラに収める余裕が出てきた。鳥のほうは相変わらず必死になって疲れてきた体に鞭打ちながら森の奥に向かって走り続ける。



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