六話 冷姫side
私は自分で言うのもなんだが優秀な生徒だ。テストでは毎回学年一位を取っているし、運動も頑張っていい成績を残している。
だがその私が…登校初日から遅刻してしまった。
事情があったからだとはいえ、失敗してしまった。
まぁいいでしょう。私は教室の扉を開ける。
ガラガラガラッ
「すみません、遅れました」
私は遅れたとしても自分を変えたくない。
私は先生に平然とした態度をとる。
「私の席はどこですか?」
「あ、ああ…空いている席の廊下側だ」
私は先生に言われた通りその席に向かう。
「すごい綺麗」
「めっちゃ可愛い」
くだらない。
容姿だけで人を判断するなんて、無礼なものだ。
通り道に一人の男子生徒が立って私を見ている。
容姿は全体的に整ってはいる。
「ちょっと邪魔だからどいてくれるかしら」
「あ、ああ…ごめん」
その男子生徒は私の隣の席に座る。
どうやら彼が私の席の隣らしい。
私は席に座り姿勢を正す。
……その隣の席の男子生徒が私を見てくる。
イヤらしい…みんなその目で私を見てくるのだ。本当に嫌になる。
「なにか?こっち見ないでくれる?」
「あ、いや…すまん」
なんなんだこの人は、ヘコヘコしてて苦手だ。
私は気丈でいなければいけない。
一人でも…支えられるように。
ーーー
「これでホームルームは以上だ。寺坂、あと… 東雲さん、今から職員室に来なさい」
職員室に行くのはよいのだが
…てらさか……?
私は眉をひそめた。
…いいや寺坂だけでは判断できない。
私は先生の後についていく。
ーーー
「どうして今日は遅刻したんだ?」
職員室に着くと、先生はすぐに遅刻の理由を聞いてきた。
先生は目線で寺坂という生徒が言うように促した。
「俺は…ちょっと迷子になってた子がいまして、その子を送り届けてて遅れてしまいました」
「そうか…それはいいことをしたな。だが遅刻は遅刻だ、次からは気をつけなさい、もう行っていいぞ」
これは確定的だ…
この人がうちの妹を…
私は彼をじっと観察した。
ーーまぁ雰囲気から優しそうなのはわかりますが…
寺坂という生徒は私の視線に気づき、一瞬ビクッととして
サササッと出て行ってしまった。
あっ、お礼をしたかったのですが…
…また機会があるでしょう。
私は先生に身体を向き直した。
ーーーー
私は妹の未郁ちゃんを保育園に届けるために一緒に歩いていた。
「今日からみくちゃんは、野ばら保育園に行くんだよ」
「野ばら保育園ー?」
「ふふっ、そうよ〜」
……はぁぁああああ。未郁ちゃんマジ可愛いぃぃいい!!
私は未郁ちゃんが世界一可愛いと断言できる!
ミクちゃんまじ天使。
私は未郁ちゃんの頭を撫でる。
はぁ〜、髪サラサラー
みくちゃんは、はにかんだ笑みで私を見上げてくる。私を殺すつもりっ!?
…いかんいかん。私は緩んだ顔を引き締める。
「それじゃあ、いこっか!」
「うん!!」
ーーー
あっ、あれ!?
私は周りを見渡す。
み、みくちゃんがいない!!
私としたことが……不覚!
少し目を離した隙にどっかに行ってしまった。
「みくーー!みくーーー!!どこに行ったの〜」
みくちゃん…心配だ…
私はひたすらに人目も気にせず探し回った。
みくちゃんを見た人はいないか聞いたりもしたが、目撃者はいなかった。
ーーもうかなり探し回った。
このままでは高校にも遅れてしまう…
そうだ、一度保育所に電話してみよう。
ーーー
「未郁ちゃんなら、ついさっき来ましたよ」
「えっ!そうなんですか!?」
未郁ちゃんが無事で良かった…
でも…未郁ちゃんには野ばら保育園の場所も教えてないし、一人で行けるとも思えない。
どうやって……
「何故か春斗くんが連れてきましたよ」
「えっと…誰でしょうか?その春斗くんという人は…」
「あっ、すいません。寺坂 春斗くん…確か芦沢高校二年生になるのかしら」
私と同じ高校で同級生だ。そしたら運が良かったら会えるかもしれない
その時にはお礼を言わなければ…
「分かりました。ありがとうございます。では未郁のほうをよろしくお願いします」
「はいー。では失礼いたします」
私はスマホをバックにしまい、高校へ急いで走りだした。
ーーーー
「ーーーという理由です。」
「そうだったのか。東雲さんも今度から気をつけるように」
私は先生に軽く頭を下げ、職員室を出て行った。
未郁のことが心配なので、昼休みあたりにでも保育園に電話しようかな…
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