表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/26

二十四話 お泊まり?

長くなっちゃいました!

「ちょっとスーパー寄っていい?」


和泉さんが信号待ちで止まっている時に振り返って聞いてくる。


和泉さんとは、園長と一緒についてきた2人のひとりだ。和泉 恵子さん。

もう1人の佐々木 由佳さんは助手席に座っている。


「僕はいいですよ」

「私も大丈夫」


車の後ろに座っている園長と俺は承諾する。

するとスーパーに着き、駐車を始める。


「すぐ済むから車で待っていいよ」

「あ、俺荷物持ちしますよ」


俺は和泉さんについて行こうとする。


「うんにゃ、大丈夫大丈夫!その代わり由佳を連れてくから春斗くんは真希さんと待っててね」


真希さんとは園長先生の名前で日常ではあんまり聞き慣れない。


和泉さんと佐々木さんは車から出て扉を閉めていってしまった。


俺と園長は二人きりになった。


「なんかすみません…家もお邪魔してしまうなんて」

「そ、そんなことないよ!悪いのはあの二人だからね!」


園長は首をブンブンと振る。園長の短い髪が揺れる。


「そそそれにしても!暑くない!この車!」

「そうですか?俺はそうでも無いですが」


園長の顔を見てみる。少し赤くなってるな。


「それじゃあ、1回外の空気でも吸いますか」

「大丈夫!!全然平気だったみたい!」


ホントかなぁ…?俺は園長の顔をじっと見つめる。さらに赤くなってないか!?


「園長!一度外に出ましょう!」

「こ、これは私がですね…!」


俺はどうしても外に出ようとしない園長の手を取って外に引っ張ろうとする。


「は、はひゃぁ…」


まずい…さらに赤くなってる…

はやく外に!



「春斗くん。合意の上なら何も言わないよぉ?むしろ真希さんなら喜ぶだろうけど」


「「えっ?」」


振り向くと運転席に和泉さんが、助っ席に佐々木さんが座っていた。


どうやら戻ってきていたのを、俺らは気づかなかったようだ。


「あぁあ…すみません。熱くなってしまって…大丈夫ですか?」

「い、いいえっ!こちらこそごめんなさい!暑かったのは気の所為でしたから!」


園長の顔はまだ少し赤い。

あれ…そう言えば和泉さんなんて言ったっけ…


「むしろ…真希さんなら……よろこ……ぶっふぉっ!」


隣に座っている園長からエルボーで脇腹を刺される。チョー痛い…


「な…何するんですか…」

「なんでもないよっ!」


園長は何食わぬ顔で真っ直ぐ前を向いている。


──あれ…何考えてたっけ?



──────



この後、車内での会話は極端に減り(園長が黙ってしまった)が恙無く車は進んで行った。


和泉さんと佐々木さんの2人はどうやら何度も園長の家にお邪魔しているらしい。

昨日も遊びに行ったそうだ。仲良しだなぁ…


園長の家に着いた。園長の家はマンションの5階、503号室。一応覚えとこう。


「ちょっと部屋が大丈夫な状態か見てくるから待ってて!」

「大丈夫じゃない?」

「いつも綺麗だし」

「あんたらが汚くしてんの!!」


先生達はワーキャー言いながらドアを開け入っていってしまった。


……え?俺だけまつの?


待つこと10分ほど、ドアが開いた。


「は、はるとくん…入っていいわよ」

「ありがとうございます。ではお邪魔します」


俺は園長の家にお邪魔する。

入った瞬間、何の花かは分からないけどいい香りがした。

強過ぎなくて、心地よい程度に抑えられてる。……なんか、女の人の家って感じで少しドキドキする。


「春斗くんいらっしゃーい!」

「ゆっくりしてってねー」

「あんたらくつろぎすぎっ!」


リビングに入ると出迎えていたのはソファに寝転ぶ佐々木さん、冷蔵庫を開けてる和泉さんだった。

……場慣れてるなぁ…


「ねーねー、本とか見る前にご飯食べなーい?そのためにスーパー寄ってきたし」

「おなかすいたー」


冷蔵庫を開きながら和泉さんが提案してくる。


「ちょっとっ!そんなの…!」


園長が止めようとした。


俺としても園長の家で夕飯をいただくのも気が引ける。ぜひ止めて欲しい…


するとソファにいた佐々木さんが園長の隣に移動し、耳打ちをした。


「春斗くん、すぐ帰っていいの?長く居た方が嬉しくない?」ボソッ

「うぅぅぅ…」


園長が俺をチラチラと見ながら唸り声を上げている。……なんだと言うんだ?


「わかったわ!春斗くん、一緒に夕飯食べましょ!」

「えぇぇ!?」


どうしていきなり!?さっきまで反対してたじゃん!?


「はい、けってーい♪」

「家主が言うんだもんね。これ絶対」


和泉さんと佐々木さんが生き生きとスーパーで買ってきたものをテーブルの上に並べていく。


「それじゃあ私は何か一品作ろうかな」

「何もしないのは悪いんで、お手伝いしますよ」


腕をまくって意気込んでいる園長にお手伝いをしようと申し出る。


するとまたササッと寄ってきた佐々木さんが園長に耳打ちする。


「真希ちゃん…ここはアピールチャンスだよ…」ボソッ


園長が俺をチラチラと見るのも忘れずに。

……なにしたいんだろ…


「そ、それじゃあお願いしようかな…!」

「ありがとうございます」


とりあえず手伝わせてくれるらしい。

よかった。


俺は園長について行ってキッチンに向かった。



──────


【園長side】



はぁー…

さっきからドキドキが止まらないっ!!


好きな人が自分の家にいると言うのはこんなにドキドキするものなのか…


大丈夫かな?変な匂いとかしないよね?汚いなんて思われてたりしないよね?


自分の家なのに落ち着かない…


いいや!私ならいける!

ちゃんと私がしっかりとした大人の女性だと春斗くんに思われるぞっ!



………春斗くん料理上手すぎない…?

下手したら私より……もっと勉強しないと!


こんなに料理が上手だったらきっといい夫に…はわわわ…私はなんて想像を…


「園長、ぼーっとしてると危ないですよ」

「は、はいっ!」


危ない危ない…包丁待ってたんだった。


ずっと思ってたことだけど…春斗くん、私を呼ぶ時「園長」としか言わない…


な、名前で呼んでくれたりしたら私、嬉しくて空でも飛べそう。まぁそんなことないだろうけど。


「盛り付けも終わったんであっちに持っていきますね」

「あ、うん」


気づいたらもう完成してたらしい。

春斗くんはお皿をもってリビングに行く。それに続いて私も残りのお皿をもって行った。


「待ちくたびれたよぉ」

「早くたべよー!」


テーブルにはスーパーで買ったお惣菜やジュース、お寿司まで置いてあった。

……お寿司の量が少ない…絶対つまみ食いしてたでしょ…


「まぁいいか、それじゃあ春斗くんもそこに座って。いただきましょう」


私は春斗くんを自分の隣に座るよう指示する。ていうかそこ以外空いてなかったから…

二人の意図してやった事で少し気に入らないけど甘受する。


「いただきます」

「「「いただきます」」」


私のいただきますに合わせてみんなも食材に感謝を込める。


「真希さんと春斗くんの料理を頂くっ!」


由佳は、はしたなく箸でズバッ私たちが作った料理をつついていく。


「うんまっ!んぐんぐ!」


由佳は目を見開きバクバクと食べていく。


私たちが作ったのは鶏肉と大根の煮物だ。

元々私が夕飯に作ろうとしてたので材料はあったし、すぐ出来るから結構作ったりしてる。


私も一口……え、「おいしぃ…」

あまりの美味しさに声に出して言ってしまった。私がいつも作っているのとは段違いだ。


口に入れた瞬間、鶏肉がホロホロと溶けていく。大根や人参もあんなに短時間で作ったのに味着染み込んでる。後でやり方教えてもらおう。


私たちが作った料理はあっという間になくなってしまった。


「真希ちゃんと春斗くんの料理うまかったなぁ」

「お惣菜がゴミのようだ…」

「僕じゃなくて園長が上手だったんですよ!あと惣菜をゴミなんて言っちゃいけません」


春斗くんは、笑いながら言う。


「ほんと、一家に一台春斗くんが欲しいね!」

「あ、それ買いまーす」


二人がおかしなことを言う。……ちょっといいかも…


「ていうか、私と付き合わない?そしたら楽なんだけど」

「おねーさんたちがいいこと教えてあげる♪」


「そ、そんなのだめっ!!!」


はっ…大きい声を出しすぎた。


隣の春斗くんもびっくりしている。


は、恥ずかしい…

私は恥ずかしさを隠すように目の前にあったジュースを飲んだ。


あ、あれ…なんか変な味が…こ、これ、…ジュースじゃなくて、ワイン…だ


あ…あたまがぼぉ…っとして…きた…


「園長??どうしたんですか?」


春斗くん?はるとくん…はるとくぅん…?



──────


【春斗side】


「園長??どうしたんですか?」


いきなりあんなに声を大きくするからびっくりした。二人がふざけていて告白まがいなことだと言うのは分かってるはずなのに…


園長が俺をじっと見てくる。こんなにじっと見られるとこちらが恥ずかしくなってくる。


あれ…顔が赤くなって目がとろんとしてきた。


「和泉さん、佐々木さん、園長はどうしたんですか?」


俺は園長からの返事がないので二人に聞いてみる。


「あーこれはー酔っちゃったねー(棒」

「まずいなー真希さんお酒弱いんだよなー(棒」


「お二人ともわざとやったんですか!?」


返事が棒読みの2人に俺は確信する。

でもワインたった一口で酔っちゃうのは流石に弱すぎるだろ…


「あ、私用事を思い出したー(棒」

「わたしもー(棒」


「ま、待ってください!それはさすがに…!」


二人は疾風のごとく自分の荷物を取ると風のように出てってしまった。


「……………どうしよう…」


この状態になっている園長をそのままにしておく訳には行かないし、第一ここがどこだか分からないから、どうやって帰るかも分からない。


「はるとく~ん♪」

「ちょっ…」


園長が立っていた俺の足にしがみついてくる。

ま、まずい!全然動けない!


園長はさらによじ登ってくる。

その瞬間、俺はバランスを崩し後ろに倒れてしまった。


「いてて…」


右手で受身を取ったけど完全には防げなかった。


そんな俺に関わらず園長はどんどんよじ登ってくる。

とうとう園長の顔が俺の目の前に来た。

園長の目は虚ろになっていて顔がほんのり赤い。それでいて、近い…鼻先が当たってしまう。


「園長…どいてください」

「はるとくんっ!わたしを…名前で呼んでっ!」


え!?なんでそうなるの!?


── むぎゅう…

む、むねが押し付けられる。

大きい……柔らかい……じゃないっ!

早くどかさないと!


「真希さん!どけてください…!」


俺は名前で再度お願いする。

すると園長の顔がにへらと緩んだ。


「えへへぇ…はるとくぅ~ん…」


──ドキッ…やばい、一瞬ドキリとしてしまった。


園長は俺の頬に合わせるように頬ずりしてくる。


こ、このままだと俺の理性が…


「はるとくん♪はるとく…ん…はるとくぅ……すぅ…すぅ…」

「え?」


寝ちゃった……?


俺は目だけ動かして園長の顔を見る。

…よだれを垂らして寝てる。


俺は今のうちに動こうと試みる。

……やっぱり動けない…


寝ているというのにがっちりホールドされてる。


「すぅ…すぅ…はるとくん…すきぃ…えへぇ…」


……寝言だろうか。


なんか、園長はちょっと抜けてたけど。大人の女性だ。ってイメージがあった。

だけど今日で案外女の子みたいな所もあるんだなと感じた。


寝顔を見てると子供みたいで微笑ましい。

あ、今俺の服でヨダレを拭いた。


俺は園長が起きるまで規則正しい寝息を聴きながら待つこととなった。



──────


【園長side】


身体中が暖かい…ぽかぽかする…

気持ちいい…ずっとこのままでいたい…


私は目をうっすらと開ける。こんなに気持ちいい朝を迎えたのは初めてだ。


「あ、園長…おはようございます」


だって朝から春斗くんがおはようを言ってくれる。幸せだ…


「そろそろどいてくれると嬉しいんですが…」


うんうん…どいてくれると嬉しい…よ……ね……?…………え?


目をしばしばさせる。


────春斗くんがいる。


しかも目の前に。

ああそうか。これは夢か。そうだ夢だ。春斗くんを思うあまり夢にまで出てきたのか…私…思った以上に乙女だな…


「あぁ…寝ないでください。もう朝ですよ!」


律儀にこの春斗くんは私を起こしてくれる。

でもまだ私は寝てこの夢を見ていたいのだ!


「もう…あ、動ける」

「ふぁ…?」


春斗くんが起き上がった。

それと一緒に私も春斗くんに支えられて起き上がらせられる。


あれ……感触がする?


春斗くんが私の肩を揺さぶる。


「朝ですよ!真希さん!」


目を擦ってみる。

───制服姿の春斗くんがいる。


私は自分の服を見てみる。

乱れててお腹とか丸見えだけど…これって昨日の服?


あ………思い出してきた。


春斗くんに育児本を見せるために呼んで、夕飯を食べることになって、私がジュースだと思って飲んだのがワインだった。


私は極度にお酒に弱く、酔っても記憶にあるタイプの酔いだ。


……………あ……私この後…春斗くんを押し倒して抱きついて名前を呼ばせてた……


私は顔から火が出た。多分春斗くんから見たら茹でダコ状態だろう。すごく熱い…


「は、はるとくん…昨日のは……」

「え……園長…覚えてるんですか?」


はっ…もしや春斗くんは私が酔っていた時の記憶が無いと思っている?


「い、いやぁ…あの時ジュースを飲んでから全く記憶がなくてねぇ…まいったー」

「そ、そうですか。あの後、園長そのまま寝ちゃったんですよ!」


こ、これはすごく恥ずかしいぃい!!

でも、上手く騙せた!


春斗くんかま気を利かせて嘘を言ってくれてる。これに乗っかるしかない!


「そうなんだーごめんね?迷惑かけたでしょ?」

「いいえ!そんなことは…」


春斗くんが少し顔を赤くしている。


こ、これはもしや…恥ずかしがってる?

いいえ!ここで調子に乗ってはいけない!春斗くんに失礼だ!


「本当に迷惑をかけたわ。ごめんなさい」


私は誠心誠意謝る。

本当はあんなに抱きついたし…頬ずりまで…し、しちゃったしぃ!?本当に悪いと思ってる!


「いいえ、大丈夫ですよ」


春斗くんが優しく微笑んでくれる。

そんな些細なことでわたしはドキリとさせられる。乙女かっ!


「すぐにタクシー呼ぶから、悪いけど朝ごはんとしてこのテーブルにあるの2人で食べない?」

「そうですね、あの二人すぐ帰っちゃったんで…すごく余ってますね」


あの二人、すぐ帰ったということは

私は2人にまんまとしてやられたということか…


私はタクシーを頼むと無言で黙々と冷めたお惣菜を食べる。


朝ごはんを誰かと一緒にするなんて久しぶりで落ち着かない…


今日は普通に平日なので春斗くんは学校があるし、私は保育園がある。

だけど幸い、私が起きたのが3時頃だったので多分間に合うだろう。


「そろそろタクシーが下に着くから行きましょう」

「分かりました」


私は財布を持って家を出る。

春斗くんはカバンを持ってきた。


エレベーターで下に降りて外に出ると駐車場に1台のタクシーがドアを開いて待っていた。

春斗くんはタクシーに乗り込んだ。


「春斗くん、今日はごめんなさい。また保育園でね」

「いいえ、迷惑だなんて思ってませんから。寝顔も可愛かったですし」


寝顔が…か、かかか可愛かったぁ!?


私は恥ずかしさのあまり何も言わず開いていたドアをバシンと閉めてしまった。


──ブウゥン……


タクシーが行ってもしばらくの間、放心状態で動けなかった。

抱きついたまま寝顔を見られていたと思うと恥ずかしくてたまらない…


しばらくして落ち着きを取り戻した私は自分の家に戻る。



……あ、お金渡し忘れた。



*この後タクシー代はしっかりと二人に払わせました

~寺坂家 あふたーすとーりー~

春「た、ただいま…」

琴「お母さぁぁあん!お兄ちゃんがグレたぁあ」

母「あら春斗…階段を登ったのね」

春「………」



読んでくださってありがとうございます。

よかったら評価、ブクマよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ